■■■「ザ・ボーイ 鹿になった少年」■■■
(55点/サスペンス)
父の経営する郊外の寂れたモーテルで暮らす9歳の少年テッドは、母親に浮気されて逃げられた父と二人きりでモーテルの手伝いをしながら、学校にも通わずに孤独な生活を送っていた。
ある日、車に轢かれた動物の死骸を処理して小遣いを稼いでいた彼は、ふとした切っ掛けから『死』そのものに強い興味を抱くようになっていく。
そんな矢先に、車の事故でモーテルに暫く逗留することとなったゴードンという男性から『死の臭い』を嗅ぎ取った彼は、その男性に興味を惹かれるが…
9歳の少年が『死』の魅力に取りつかれて、やがてその興味がエスカレートして狂気へと駆られていく…という、サスペンススリラー映画。
パッケージから、最近この界隈で妙に流行っている『ウエンディゴ』を題材にしたような映画なのかと思ったのですが、特にそういう訳でも無く、「ザ・ボーイ」といっても人形少年ともアンチヒーローのドラマとも関係の無い、割と正統派のサスペンススリラー映画ですね。
いわゆる『子供特有の残酷さ』を題材にした、サイコホラー系の雰囲気映画っぽいテイストの強い作品です。
お話としては『9歳の幼い少年が、道路で轢かれて死んだ動物の死骸を処理するうちに『死』そのものに興味を抱くようになり、わざと動物を車に轢かせて殺したりしていくうちに『人間の死』へも強く惹かれるようになっていく…』みたいな感じの展開。
少年が『子供に教育も受けさせないロクでもない父親』や、母や友達も居ない孤独な環境からいびつな性格になっていき、また、モーテルに逗留した『どこか犯罪臭を漂わせる男性』の影響もあって、やがて狂気に導かれていくような感じの流れで、ストーリー的にもプロット的にも人間ドラマが中心のお話と言う印象。
少年の心理描写やら家庭環境の描写、キャラクターの掘り下げがどこか淡々としたテイストで描かれており、じわじわと浸食していく『ドライな怖さ』が感じられるような内容で、雰囲気映画としてはなかなかに良い感じ。
ただ雰囲気映画だけに、どうにもお話の展開が非常に遅くて、テンポの悪い部分があるのは辛いところ。
尺が120分近くと長めなうえに、特に中盤辺りは大きな事件も起こらないまま淡々と少年の心理やキャラの掘り下げのシーンが続くため、どうしても冗長に感じてしまいます。
こういう独特の空気感やらも嫌いではないのですが、家庭環境にしても怪しい宿泊客にしても、どちらも妙にアッサリ薄味に描かれていて物足りなさがあったので、個人的にはもうちょっとピリピリとした緊張感の強い内容でも良かったかも?
ラストの展開やオチは割と好きな感じだったので、もう少し雰囲気映画としての『濃さ』が欲しい作品という印象でしたよ。
総評としましては、そこそこ普通に観れるレベルの『雰囲気映画テイストのサイコサスペンス映画』って感じですね。
『子供特有の残酷さ』とか『死への憧れ』というプロットに興味があるならば、とりあえすチェックしてみても損は無い一本かもしれません。
強く推す程では無いですが、雰囲気やらテイストやらは悪くない作品ですので、好みに合いそうであればどうぞ…という感じですかね。