NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ボーンズ・アンド・オール」(55点/サスペンス)

■■■「ボーンズ・アンド・オール」■■■
(55点/サスペンス)


 1990年頃のアメリカ。
 18歳の少女マレンは、何故か生まれながらにして『人肉を食べる衝動』を抑えられずに、事件を起こしては父親と共に各地を転々としていた。


 しかし18歳になってまたトラブルを起こした事を契機に父親に見捨てられた彼女は、頼るべき先と自分の謎の性癖のルーツを探るべく、彼女の幼い頃に父と別れた母の住所を頼りに旅に出る事となる。


 道中で知り合った、自分と同じような性質を持つサリーと名乗る中年男性から、自分たちの同じような『人喰い』の人種は少なからず世の中に隠れており、お互いに『臭い』で察知しあえると知らされた彼女は、旅の途中で『人喰い』の同族であるリーという青年と遭遇。


 成り行きから一緒に旅をする事となった彼らは、お互いの秘密を打ち明けあえる仲間と出会った事を契機に、やがて惹かれあうようになっていくのだった…

 


 生まれつき『人間の肉』を食べる衝動を抑えられない『人喰い』の性質をもった少女が、自分の過去のルーツを探って幼い頃に分かれた母親の元へと旅を続けるうちに一人の同族の青年と出会って恋に落ちていく…という、恋愛映画&ロードムービー風味のサスペンススリラー映画。


 なんとなくパッケージやらの雰囲気から分かるかもしれませんが、いわゆる雰囲気映画風なテイストのあるロードムービー系の作品ですね。


 お話としては『「人喰い」の宿命を背負って生まれた少女が、「人喰い」としての自分のルーツを探る旅に出るんだけど、道中で同族の青年と出会った事を契機に、唯一の「理解しあえる存在」としてお互いに惹かれるようになっていく』みたいな感じの展開。


 作中では『人喰いの性質を持った人々』という特殊な人種が描かれ、『彼らはお互いに「臭い」で相手の存在を察知する事が出来る』みたいな特徴が語られるのですが…


 『人喰い』というのがちょっと『独特な設定』ではあるものの、この部分を『吸血鬼』にしてしまえば特に目新しい要素でも無いですし、『殺人鬼のカップルがお互いに価値観を認め合って惹かれあっていく』みたいな要素もロードムービーとしてはそこまで斬新でもないので、意外とオーソドックス作りの『アンモラル系の破滅型カップルのロードムービー風ラブストーリー』って感じの作品です。


 ただ、オーソドックスな内容だからといって本作がツマんないかと言われるとそういう訳でも無く、映画としては普通に良く出来たロードムービー風のサスペンススリラー映画という印象。


 『人喰い』という種族を題材としてとして、『世間から理解されない若者たち』の恋愛ドラマをパンチの効いたテイストで表現していますし、しっかりと二人のキャラを掘り下げる事でお互いが『唯一の分かり合える仲間』として惹かれあうようになっていくという展開も非常に丁寧に描かれています。


 旅の途中で出会う、他の『人食い』種族の面々もどこか不気味で良い味を出していますし、母親の秘密に関する謎解き部分もやや消化不良ながらもビジュアル的なインパクトもあってなかなか面白いです。


 そういった、サスペンスや恋愛ドラマの要素がロードムービーとして無理なく組み込まれており、なかなかに良く出来た作品に仕上がっているという印象です。


 ただ、割とキャラの掘り下げ要素が濃い目で尺も長めなため、どうしてもちょっとだけテンポの悪さを感じてしまう部分があるのは残念なところ。


 もう少しサスペンス要素も濃い目に絡めて、中盤辺りでも盛り上がる展開があっても良かったかも?(殺人シーンとか特に緊張感が無いし…)


 あと、ラストの『血みどろで美しくも物悲しい感じのオチ』は良い感じではあったのですが、終盤の展開が矢鱈と駆け足で唐突感があったので、その辺はもうちょっとシッカリと伏線とかあっても良かったかなぁ…という気はしましたよ。

 


 総評としましては、普通に良く出来た『ロードムービー風の恋愛サスペンススリラー映画』って感じですね。


 強く推すにはやや弱いですが、ロードムービーというジャンルが好きで独特の世界観とか設定に興味があるのであれば、とりあえずチェックしておいても損は無い一本かも?


 逆に設定に興味があっても、雰囲気映画的なテイストやらロードムービーというジャンルが苦手な人にはちょっと刺さり難い作品だと思うので、その辺はお好みでといったところでしょうか…