NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「1.0【ワン・ポイント・オー】」(55点/SF風サスペンス)

イメージ 1

■■■「1.0【ワン・ポイント・オー】」■■■
(SF風サスペンス/55点)

 コンピュータープログラマーであるサイモンは、ある日外出から帰って来ると、施錠していた筈の部屋に差出人不明の奇妙な『箱』が届けられている事に気付く。
 彼は不審に思いつつも箱を開封してみるが、箱の中身は空っぽで何も入っておらず、彼は気にもせずにその箱をアパートのダストシュートへと捨てるが、しかし翌日、彼がコンビニから買い物をして帰ってきた一瞬の隙に、再び同様の「箱」が届けられる。
 そして同じ時間に彼のアパートの住人が、原因不明の病気で死亡している事を知る。

 サイモンは『自分が大手企業から請け負った開発中のプログラムを、何者かが盗もうとしているのではないか?』と疑い、部屋に防犯装置を設置しセキュリティを強化するが、にも関わらず一瞬の隙をついて「箱」は届け続けられる。

 その「箱」の神出鬼没さから、彼の部屋と通風孔で繋がっている隣の住人が犯人では無いかと疑ったサイモンは、隣人の元を訪れるが、隣人はそんな彼の目の前で『自分も「箱」を受け取った』と告げ、全身から出血しながら死亡してしまう。

 果たして、彼らの元に届けられ続ける「箱」には一体どんな秘密が隠されていると言うのだろうか?


 えーと…本作に関しましては、感想を書くに当たってネタバレせずに書く事がおよそ不可能(そもそも、パッケージや予告編ですらネタバレをしてる)ですので、若干ネタバレを含みつつ感想を書く事とします。(一応、致命的なネタバレは避けますが…)

 ホントに予備知識なしでこの作品を観たい方は、ここから先の感想は読まないようにご注意下さい。

***** ネタバレ注意 *****
***** ネタバレ注意 *****
***** ネタバレ注意 *****
***** ネタバレ注意 *****
***** ネタバレ注意 *****
***** ネタバレ注意 *****

 先鋭的なアイデアの作品が多く取り上げられる事で知られるサンダンス映画祭にて公開されたという、ナノテクを題材としたSF風サスペンススリラー。

 『何も入ってない箱』『エボラ熱のように全身から出血して死亡する犠牲者』という設定から、生物兵器をモチーフとしてるのか?』と思わせておいて、その実はナノ・マシンを題材にしたサスペンスとなっているのは、なかなか意外性を突いてて面白いと思います。

 主人公の元に届けられ続ける謎の空き箱に、怪しげなアパートの住人達の行動不気味な感染症のような変死を遂げる人々…といった謎の提示部分も面白く…

 また、妙にジメジメとした感じの不気味なアパートの雰囲気や、ハイテクのはずなのに妙に古臭く不思議な印象を与えるコンピューターとか、美術センスやデザインもなかなか秀逸で、序盤から中盤にかけての展開は『コレはなかなか凄い映画かも!?』と思わせるんですが、中盤以降の展開が『極めてサンダンス映画祭的』というか何と言うか…

 序盤の割と現実的なサスペンスっぽい展開に対して、中盤以降が妙に抽象的というか概念的というかそんな感じの表現や会話がやたらと多くなって、『???』と思っているうちにストーリーが進んで行き、キツネに摘まれたような気分になってる内に『ああ、やっぱりそういうオチか…』的なラストへ…

 まあそこまで理解不能な話ではなく、一応お話を最後まで観れば大まかな話の流れはキチンと分かる作りにはなっているんですが、中盤の隣人の行う『ゲーム』の部分とかが妙に芸術家肌の監督みたいなノリで、ストーリーを単純に分かりづらくしているだけな気がします。

 アイデアや作品の雰囲気自体は悪くなかったのに、もうちょっと明快で判りやすい展開にならなかったものなんでしょうか?


 また、『ナノ・マシン』という設定も、最先端技術やSFに興味のある人間には聞きなれた言葉かもしれませんが、普通の生活を送っている人にとっては『そんな言葉、聞いたことも無い』って人も多いと思うのですが…
 『ナノ・マシンが何なのか?(※)』に関しての、それらしい説明は映画の中では余り語られていないので、『ナノ・マシンそのものの事が分からなかった人も多いんじゃないか?』と、ちょっと心配になってしまいました。

※ 顕微鏡サイズで作られた自律行動を行う極小の自動機械。
※ 体の中へと送り込む事で患者の病巣に直接投薬をしたり、手術で取り除くのが難しい内部の奥底にある腫瘍を治療したり…といった具合に、主に医療分野での実用化が検討されている。
※ サイズが極小であり『ナノ(100万分の1)サイズの機械』であるという意味から「ナノ・マシン」と呼ばれている。

 総評としましては、映画そのものの雰囲気とかノリや作品のアイデアは非常に秀逸で、なかなかに良く出来たサスペンス映画だと思います。

 中盤の展開が分かりづらくてで少々ダレるきらいもありますが、それさえ乗り越えれば全体的に普通に面白い映画と言えるでしょう。

 退廃的な未来を描いたノリや、ちょっとニューウェーブ系のSF的なテイストが嫌いじゃなければ結構楽しめる作品だと思いますので、ウェットな感じのSF作品が好きならば、とりあえず観ておいても損は無いでしょう。

 内容的には全然違うのですが、個人的に未来世紀ブラジルとかを思い出す映画でしたよ…
 そういった感じのノリが好きな人なら、ひとまずチェックしてみても良いかも?