■■■「ディープブルー・ライジング」■■■
(50点/パニック)
北極海の氷の上に建造された海洋調査基地『オアシス』のクルーたちは、ある日、海中に流れる異常な暖流を観測。
原因の調査を続けるうちに、北極海に存在しない筈の巨大な人食いザメの襲撃を受ける。
このサメたちが『北極海の極限環境で独自進化を遂げた古代ザメが暖流の影響で氷が溶けた事によって解き放たれたもの』である事を知った彼らは、ただちに周辺地域に警告を発して観測を続けるが、サメの群れは彼らの氷上の基地を襲撃。
サメによって足場を破壊された彼らの基地は、水深30メートルの海底へと沈められてしまう。
周囲をサメに囲まれて地上との通信も行えず、酸素の残量のタイムリミットが迫る中、基地のクルーたちはなんとかしてこの危機から脱出しようと試みるが…
温暖化の影響で出現した古代ザメの群れに襲われて海底に沈没した調査基地のクルーが、なんとかして生還を試みるという生物パニック映画。
B級パニック映画でおなじみのASYLUMのSyfyピクチャーの制作によるTV映画向けの作品で、当然ながら本家のディープブルーとは何の関係も無いお話です。
(『海中の基地からの脱出』ってシチュエーションがちょっと似てるぐらい?
ちなみに原題は「ICE SHARKS」と直球ストレート。)
映画の中身の方もいつもの低予算なSyfyクオリティって感じの内容ですが、出現する怪物として深海に生息する巨大ザメである『オンデンザメ』を題材にしてるのは、なかなか珍しい作品と言えるかも?
(ちなみに実際のオンデンザメは泳ぎが苦手で人間は襲わない(というか深海ザメなのでそもそも人間に殆ど遭遇しない)ようですが、本作のサメは『北極の閉鎖環境で独自進化したオンデンザメ』という設定で、メチャクチャ凶暴です。)
肝心の映画の中身に関しては『サメの襲撃で海底に沈んでしまった調査基地からクルーたちが生還しようとする』という内容なのですが、なんというか色々とツッコミどころが満載。
まず仮設基地ならともかく本格的な施設を土台となる柱も立てずに氷の上に建てるってところからしておかしいのですが、そこを百歩譲ったとしてもサメの体当たり程度で割れるような脆弱な氷の上にそんな重要な施設を作るなよ!!
よしんば作るにしても氷が割れる可能性があるような場所なら、何で水に浮く素材を使うとかフロートと付けとくとかしなかったんだ…って言う。
まあ設定のツッコミどころはさておき、本編に関しては『非常にお話のテンポが良い』っていうのは、まあまあ褒めるべきところですかね?
とにかく次から次へと事件やトラブルが発生して、それに対応しようと主人公たちが行動するので、観ていて最後まで退屈せずに楽しめるのは良い感じ。
サメに襲われる場所も、氷上だったり海底だったり基地の中だったりとシチュエーションも取り揃えて、変化を付けようとしているという努力は感じ取れます。
ただ残念なのは、それらの全てが恐ろしく薄味なところ。
襲撃シーンで比較的もり上がるのは序盤の氷上のシーンぐらいで、他のサメの襲撃シーンに関しては『えっ、今のであの人って死んだの?』って程度のアッサリっぷりで、肝心の襲撃シーンがどうにも盛り上がりません。
また海底に基地が沈んだという極限状況の割には、基地に浸水とかも殆どしていないのでいま一つ現実味がありませんし、最初に『酸素切れまでのタイムリミットが24時間』と設定される割に、本編中で数時間程度しか時間が経過しないのでタイムリミットが設定されている意味も殆どなし。
全体的にもうちょっと緊張感を煽る(あおる)ような演出やアクシデントがあっても良かったんじゃないかなぁ…
ラストの解決方法にしても物凄くアッサリしてて、殆ど盛り上がらなままに『えっ、コレで終わりなの?』みたいな終わり方なので、全体的にもうちょっとカタルシスが欲しかったです。
怪物のオンデンザメに関しても、ぶっちゃけあんまり存在感が無いうえに特にオンデンザメである必要も無いですし、とにかく印象が薄いんですよね。
なんというか全体的に『もうちょっと個性的な濃い要素があっても良かったんじゃない?』って感じで、なんとも物足りない作品でした。
総評としましては、物凄くアッサリ風味の『可も不可も無い低予算パニック映画』って感じの作品ですね。
そこまでツマんない訳でもないため観るのが苦痛な要素とかも無いのですが、特に本作ならではの面白い要素も無いので、観終わった後にあんまり記憶に残らない映画という感じ。
『どうしてもオンデンザメの活躍が観たい!』というなら観るのを止める事もしませんが、急がないのであれば午後ロー辺りで放映されるのに期待して待つ程度でも良いかもしれません。