NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「恐怖ノ黒電波」(55点/サスペンス)

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■■■「恐怖ノ黒電波」■■■
(55点/サスペンス)


 ディストピアと化した近未来のトルコ。

 アパートの管理会社の社員であるメフメットは、高層アパートの屋上に政府のプロパガンダ放送を受信するための共同アンテナを設置する事となる。


 しかし設置作業を行ったエンジニアが、ビルの屋上から転落死するという奇妙な事故が発生。


 また『壁から奇妙な黒い液体が漏れている』という苦情を受け調査に向かったところ、屋上のアンテナから奇妙なささやき声のような音が聞こえ、更に謎の黒い液体が染み出しているのを発見する。


 そしてそれ以降、アパートでは相次いで奇妙な現象が発生するようになっていき…

 


 政府の発する謎の洗脳電波によって人々が恐怖に晒される…という、ディストピアもののSFサスペンススリラー映画。


 「恐怖の黒〇〇」シリーズの最新作に当たる作品ですが、シリーズといっても邦題で勝手にシリーズっぽいタイトルを付けてるだけなので、当然ながら作品的な繋がりのようなものは全くありませんが、この「黒〇〇」シリーズは何気に質の高いSF系ホラーを連続でリリースしてくれるので、なかなかの優良シリーズという印象ですね。


 本作に関しても、なかなか個性的で面白い作品となっています。


 お話としては、『とあるアパートの管理人が、政府の指定で「プロパガンダ放送を受信するためのアンテナ」を屋上に建てるんだけど、それ以降にアパートで奇妙な現象が起こるようになっていき…』といった感じのストーリー。


 一応の主人公は『アパートの管理人』なんだけど、そこまで主人公然としてる感じじゃなくて、いくつかの登場人物のストーリーがパラレルで進んでいくという、ちょっと群像劇っぽい構成のお話です。


 ストーリー的には、政府の国営放送のアンテナを建てたことで『政府の陰謀』的なものが展開していき、洗脳電波の影響でアパートの各家庭で奇妙な現象が起こるようになっていく…みたいな流れなのですが、この現象が電波が元なだけに内容の方も色々とデンパ的。


 ちょっとだけビデオドロームとかを髣髴(ほうふつ)とさせるような、現実とも幻覚ともつかないような世界が展開されて、デンパ的な雰囲気映画としてはなかなか良い味を出しています。


 洗脳電波らしきものを受信すると、何故かアンテナから『謎の黒い液体』が染み出してきて、液体に触れた人間が洗脳されていく…みたいな設定も不気味で良い味を出していますが、アンテナから液体が出てくるのは『どういう仕組みなんだよ』というのと、そもそも『最初から水道に薬品を混ぜれば良くない?』って部分にツッコミを入れたくなったのは自分だけ?


 政府に逆らう人間を排除して、国民を全て無個性化させようとするといった管理社会の恐怖とかが『顔の無い住人』のオマージュとして描かれているのも、なかなか不気味で悪くない印象。


 ただ、不気味な雰囲気映画としては良く出来ているのですが、ストーリーが全体的に割とグテグテで『最終的にどこを着地点として目指したいのは釈然としない』のに加えて、約2時間と尺が長めでお話のテンポがあまり良くないせいもあって、ちょっとダレる印象があるのは難点かなぁ?


 作品として目指したい方向性は何となく分かる感じではあったのですが、もうちょっとメリハリのある内容ならもっと良かったような気がしますよ

 


 総評としましては、『そこそこ良い味を出してるディストピアSF風のサスペンス映画』って感じの作品ですね。


 未来世紀ブラジル」とか「ビデオドローム」みたいな、デンパ系のディストピアSFが好きであれば、割と楽しめる内容ではないかと思います。


 急いで見るほどかと言われると悩ましいところですが、そういうジャンルが好きで気になっているようであれば、とりあえずチェックしてみても損は無い感じの一本かもしれませんよ。

 

映画感想:「ホワッツ・イン・ザ・シェッド」(30点/モンスター)

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■■■「ホワッツ・イン・ザ・シェッド」■■■
(30点/モンスター)


 両親を亡くし、暴力的な祖父に引き取られて暮らす高校生のスタンは、ある日、自宅の納屋の中に怪物のような姿の不審な男が潜んでいるのを発見。


 不気味な男を追い出すために番犬を放つも、怪物によって一瞬にして八つ裂きにされて殺され、また彼の話を聞き、様子を確認するために小屋に入った祖父までもが殺害されてしまう。


 異常な事態に動揺し、小屋の入り口に鍵をかけて怪物を閉じ込めたスタンだったが、彼の話を聞いた親友のドマーは『怪物を利用して自分たちをいじめる不良グループの面々を罠にかけて殺害しよう』という恐るべき提案を行い…

 


 とある高校生の自宅の納屋に怪物(吸血鬼)が隠れていることが発覚し、それを利用して自分をいじめた不良たちに復讐を企てようとする…という、モンスターもののサスペンスホラー映画。


 うーん何というか、一言で言ってしまうと『なんだコレ?』って感じの映画ですね。


 お話としては、『町はずれにある主人公の家の納屋に唐突に吸血鬼が出現(この吸血鬼にどんなバックボーンがあるのかは最後まで不明)して、祖父を殺された主人公がかろうじて納屋に閉じ込めるんだけど、その存在を知った友人が「いじめっ子に復讐するために利用しようぜ」みたいな事を言い出して、警察や主人公のガールフレンドも絡んできて混迷を極めた展開に突入していく…』みたいな感じのストーリー。


 一応はモンスター映画なんだけど、どちらかというと『本当に怖いのは人間の復讐への執念』みたいな感じで、人間ドラマ要素が強めの作品という印象です。


 この主人公が両親を亡くして暴力祖父に引き取られていたり、それを契機に学校で虐められていたり、ガールフレンドを不良に寝取られて微妙な関係だったり…といった風に、なんか色々と複雑な家庭の事情があるお話となっているのですが、当然ながらこの辺の心理描写とかにかなり多くの尺が割かれているのですが…


 ぶっちゃけ、その人間ドラマ部分が面白いならば良いのですが、内容がドラマとしてもあんまり面白くも無いのは困りもの。


 全体的に物凄くどうてもいいような『会話シーン』とか『夢の中のシーン』みたいな場面が妙に多くて、メインとなる部分のお話がなかなか進まないので、非常に冗長で見ていてちょっとイライラしてしまいます。


 主人公の過去のトラウマとか現在の境遇とかが丁寧に説明されてはいるのですが、矢鱈と暗い話なうえに盛り上がるような要素もないので、正直言って『キャラの掘り下げはこの半分ぐらいの尺で良かっただろ?』と思ってしまいましたよ。


 終盤のお話が動き出してからの展開はそれなりに面白いのですが、終盤で唐突に小屋に閉じ込めてただけで特にコミュニケーションも取らなかった『吸血鬼との対決シーン』を『吸血鬼と主人公の確執』とか『宿命の対決』みたいなノリでお話を描かれても、『いや、あなた今まで全く存在感なかったよね?』という微妙な気持ちになってしまったのは自分だけ?


 ちなみに引っ張った割には、ラストの対決シーンもたいして盛り上がるような要素もありませんし、全体的に何を描きたかったのか釈然としない感じのモンスター映画でしたよ…

 


 総評としましては、『どうにも盛り上がりに欠けるB級モンスター映画』って感じの作品です。


 サスペンスとしてもモンスター映画としてもパンチに欠ける内容で、正直あまりオススメ出来るような要素はないかなぁ…


 個人的には、よほど気になるとかでなければ普通にスルーしてしまっても問題の無い一本だと思いますよ。

 

映画感想:「2:22」(40点/サスペンス)

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■■■「2:22」■■■
(40点/サスペンス)


 秩序を愛し、飛行機の発着を完璧に管制するベテラン航空管制官のディランは、ある日を境に異常にリアルな夢を見るようになる。
 それは、午後2:22のニューヨークのグランドセントラル駅で、謎の爆発が起こり、その直後に殺人事件が発生するというものであった。


 そんな最中、友人から貰ったチケットで観劇に訪れた彼は、そこでサラという美しい女性と遭遇。
 お互いの出会いに運命的なものを感じた彼らは、意気投合し恋人として付き合うようになるが、彼女と生年月日が全く同じという奇妙な偶然がある事を知る。


 更に、毎日の2:22に向けて同じような奇妙なルーチンが繰り返されるうえに、彼女の勤める美術ギャラリーで彼が『夢に見た場面』と全く同じ3DCG映像が作成されている事を知ったディランは、その時刻に何か特別な意味があるのではないかと考えるようになるが…

 


 『秩序』や『法則』に執着する青年が『2:22』という時刻に関連して起こる奇妙な現象を調べるうちに、驚くべき真実に辿りつく…というオカルト風味のサスペンススリラー映画。


 ノリとしてはオカルトとSFの中間的なノリの、いわゆる『サイエンスフィクション』というよりは『少し不思議』系のSF的な作品ですね。


 独特の不思議なテイストを持ったサスペンスなのですが、『雰囲気映画』ってほど理不尽でも無いですし、かといって『SF映画』ってほど理論に裏付けられた内容でも無いという、やや独特のノリの映画という印象です。


 お話としては、『繰り返し不思議な夢を見るようになった青年が、それを切っ掛けとしてある女性と恋人になるんだけど、夢を切っ掛けに「2:22」という時刻にまつわる奇妙な法則性を発見し、それが自分と恋人の運命を左右する驚くべき現象に由来しているものだと気付く…』みたいな感じの内容。


 少しネタバレになってしまいますが、運命の日である『自分と恋人の誕生日の2:22』に向けて、同じルーチンの日常が繰り返されてて、それは実は『数十年前のとある事件』に端を発しているみたいな設定なのですが…


 この謎の現象の説明が『納得が行くような行かないようなフワっとした設定』なんとなく雰囲気で納得したふうに流しているような作りなので、なんか観ててもやもやするんですよね。


 作品そのものの雰囲気は悪くないので、ここまで『雰囲気』で流すなら、いっそセカイ系みたいな内宇宙(哲学)的な設定でも良かった気がします。


 また、謎解きに関しては上記のように割と凝った設定であるものの、それ以外に大きな事件が起こるわけでも無く、また『2:22に起こる事件』というのが大災害とかじゃなくて『恋人同士の痴話ゲンカ』のレベルで滅茶苦茶スケールが小さいため、見ていてとにかく地味で盛り上がりに欠けるんですよね。


 特に中盤辺りはそこまで謎解きが進むわけでもなく、更にラストもそこまでたいした展開にならないのが想像できてしまうため、ちょっと冗長さを感じてしまいました。


 終盤のちょっとしたドンデン返し的な展開も特にインパクトがあるような内容でも無いですし、全体的にもっと派手にするか、雰囲気映画的な方向に突き抜けた内容であれば、そこそこ楽しめる作品になったんじゃないか…という感想を抱いてしまうような作品でしたよ。

 


 総評としましては、どうにも盛り上がりに欠ける『雰囲気映画的なテイストのSF(少し不思議)風味サスペンス映画』って感じの作品ですね。


 雰囲気映画的なノリが好きであれば、まあまあ楽しめる内容かもしれませんが、個人的にはどうにも地味すぎて物足りなさが残ってしまう映画でした。


 あまり推すような要素も無いですが、敢えて見るのを止めるほど酷い出来でもないので、趣味に合いそうならお好みで…といった感じの一本というところでしょう。

 

映画感想:「とっととくたばれ」(70点/サスペンス:オススメ)

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■■■「とっととくたばれ」■■■
(70点/サスペンス:オススメ)


 ある日、マトヴェィは恋人のオーリャから『幼い頃から自分をレイプし続けている父親を殺して欲しい』という物騒な相談を受ける。


 マトヴェイは恋人を救うために父親であるアンドレイの家を訪問、彼を殺害しようと試みるが、筋金入りのタフな刑事である彼を殺害する事が出来ずに、逆に彼の家に捕らえられてしまう。


 アンドレイはマトヴェイから、どんな理由で彼が自分を殺そうとしたのか聞き出そうとするが、やがてアンドレイに隠された恐るべき秘密が明らかになっていき…

 


 恋人から依頼されて恋人の父親を殺害しようとした若者が、父親と命がけの乱闘をするうちに思いがけぬトラブルへと発展していく…といった感じの、ロシア製のブラックユーモア系のバイオレンススリラー映画。


 昨年のシッチェス映画祭に出展された作品だそうですが、いかにもシッチェス映画祭っぽいノリの個性的で面白いスリラー映画ですね。


 ノリとしては『シャレオツでバイオレンスなサスペンススリラー映画』といった感じなのですが、とにかく映像や演出のセンスが良い作品という印象。


 ポップでキッチュな感じの演出やBGMに合わせて、過剰なまに血みどろの『主人公と(彼女の)父親との命がけのドツキあい』が繰り広げられる様子が、非常にテンポ良く面白く描かれており、とにかく『楽しく見れるバイオレンス映画』という感じに仕上がっています。


 ちょうど、ひと昔前の『ノリノリだった頃のタランティーノ作品』を更にポップにしたようなノリとセンスで、軽快でテンポの良い演出に過剰なゴア表現やバイオレンス描写といった個人的にはドストライクの組み合わせて、『暴走系のバイオレンス映画』が好きな人であれば、かなりハマる事のできる内容ではないかという印象。


 ストーリーも、最初はホントに『若者と父親がドツきあってるだけ』みたいな展開なので、単純に『イキオイだけで作られたワンシチュエーション作品』なのかと思いきや、意外とシッカリとお話が練られているのも良いところ。


 『何故、彼女は父親の殺害を依頼したのか?』とか『刑事である父親に隠された秘密とは』みたいなところが徐々に明らかになっていくのですが、『謎が解明されていくにしたかって逆に先が読めなくっていく』という構成はなかなか面白いです。


 主人公を含めた主要キャラの立て方も上手く、それぞれの事情をシッカリと掘り下げて人間ドラマ的にも面白い内容になっており、それぞれの主要キャラが各々に事情や思惑を抱えてはいるのですが、全員が結構な『クソな性格』でブラックユーモアとして楽しめる内容になっているのも良い感じです。


 ほぼ『アパートの一室』を中心に繰り広げられる話なのでスケールは小さくて低予算な感じですし、ブラックな内容で割と救いの無い話なんですが、オチの落としどころも上手いですし、ホントに「とっととくたばれ」というタイトルが相応しいような楽しいストーリーで、タイトル・内容共にセンスの良さを感じさせられる作品でしたよ。

 


 総評としましては、なかなか良く出来た『ブラックユーモア系のバイオレンススリラー映画』といった感じの作品です。


 タランティーノやらロドリゲス監督のような、ブラックでノリの良いバイオレンス映画が好きな人であれば、割とハマれるタイプの映画だと思いますので、そういう作品が好きであれば普通にオススメです。


 ただ、バイオレンス描写やらゴア描写が思った以上に強めで、血とか痛そうなのがダメな人にはちょっと厳しい内容ですので、そういうのが苦手な人は要注意ですよ。


 個人的には、本作の監督であるキリル・ソコロフという名前は覚えておいて『次回作にも期待しよう』と感じるレベルの一本でしたよ。

 

映画感想:「スプートニク」(55点/サスペンス)

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■■■「スプートニク」■■■
(55点/サスペンス)


 冷戦時代のソビエト


 宇宙ステーションから帰還中の宇宙船で謎の事故が発生。
 事故の生き残りであるコンスタンティンが、事故当時の記憶を失っていた事から、神経科の医師であるタチアナが原因の調査と治療のために軍に招集される。


 コンスタンティンの調査を始めた彼女だったが、彼の身体に起こった変化を調査していくうちに、実は彼が正体不明の地球外生物に寄生されており、彼女は実は『宇宙飛行士とエイリアンとの分離』のために呼ばれた事を知らされるが…

 


 正体不明のエイリアンに寄生された宇宙飛行士と彼を救おうとする神経科医の戦いを描いた、ロシア製のSFサスペンス映画。


 パッケージの雰囲気から「物体X」的な寄生生物もののモンスターホラー映画かと思っていたのですが、実際の中身の方はサスペンス要素が強めの陰謀論的SF系ホラー映画って感じの作品でした。


 お話としては、冷戦時代を舞台として『とある神経科医が「事故で記憶喪失になった宇宙飛行士」の治療のために軍に呼ばれるんだけど、実はその宇宙飛行士は謎のエイリアンによって寄生されており、本当は彼女が呼ばれたのは宇宙飛行士と寄生生物を肉体的・精神的に分離する事が目的だった…』みたいな感じの展開。


 序盤は、『寄生生物の正体は何なのか』とか『宇宙飛行士と寄生生物を分離する手段はあるのか?』みたいなところを中心に、いかにもSFっぽい展開でお話が進んでいくのですが、中盤以降はお話のテイストが変わって『実は軍が寄生生物を軍事利用しようとしていた』とかって、いかにも冷戦時代が舞台らしい感じの陰謀論的サスペンス映画へとお話が突入していきます。


 この序盤のSF的な謎の提示部分はなかなか良く出来ていて、『寄生生物と宿主の精神の関連性とか繋がりは何なのか?』とか、『いかにして両者を分離するか』といった部分にフォーカスして、神経科学をテーマとした硬派な感じの設定のSF作品ってテイストがあるのはなかなか面白いです。


 これに対して中盤以降は話の様相が変わって、『軍の陰謀論』みたいな話をメインとしてホラー的な要素が強めになってくる感じで、寄生生物の暴れまわるようなシーンも豊富で、序盤とは違った『派手な方向性』にお話が突入していくのは、ある意味で意外性があって悪くない印象。


 モンスターのデザインも『蛇人間(というかコブラ人間)』みたいな感じで不気味で良いですし、『相手が恐怖を感じた時に発するホルモン』を狙って人間を襲うって設定も、なかなか怖くて良い感じ。


 ただ、派手な内容になってビジュアル的な面白さが増すのは良いのですが、序盤が『SF的でスケールの大きそうな話』なのに対して、中盤以降が妙に『下世話で安っぽいコテコテな印象の話』になってしまうのは、唐突にスケールラウンしてるみたいな感じで個人的にはちょっと微妙な印象を受けてしまいましたよ。


 また、主人公たちのキャラの掘り下げがシッカリしているのは良いのですが、そのせいで全体的に尺が長めでちょっとテンポの悪さを感じてしまう部分があるのも気になるところ。


 ラストの、宇宙飛行士の過去と主人公の息子の話の関連性も釈然としませんでしたし、もうちょっと描きたいテーマやら作品の方向性をハッキリとさせた方が良かったんじゃないかなぁ?

 


 総評としましては、悪くは無いものの『いま一つスッキリしない感じのSFサスペンス映画』って感じの作品ですね。


 特撮やらの出来も良くて映画としての完成度は高いので、単純にSFホラーとして楽しみたいのであれば、普通に楽しめる一本だと思います。


 ただ個人的には、映画としては悪くは無いものの、テンポやら方向性やらで微妙に物足りなさを感じてしまう作品って感じでしたよ…

 

映画感想:「ザ・キャビン 監禁デスゲーム」(40点/サスペンス)

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■■■「ザ・キャビン 監禁デスゲーム」■■■
(40点/サスペンス)


 学生時代からの友人のフェデリコ、ロベルト、ジュリオ、ミケーレの4人は、7年前に不慮の事故で亡くなった友人であるアレッサンドロの母のヴェロニカが開いた展覧会の開催パーティへと招待される。


 久しぶりの再会に会話を弾ませる旧友たちだったが、何故かパーティの会場で意識を失った彼らが目を覚ますと、そこは雪に覆われた極寒の山中のロッジで、防寒装備の無い彼らはその場所から出られなくなってしまう。


 更に室内の壁には『真実を』と書かれた文字と、彼ら5人が当時一緒に付けていたペンダントがメモと一緒に置かれており、メモには『アレッサンドロは本当は殺された、明日までに真実を話さないと全員を殺す』といった旨の謎のメッセージが残されていた。


 突然の事態に困惑する彼らだったが、兼ねてよりアレッサンドロの死に疑問を抱いていた彼らは疑心暗鬼に陥っていき、更には仲間の一人がソファーの下に隠された拳銃を発見したことを切っ掛けに、徐々に緊張感が高まっていくのだった…

 


 雪山のロッジに拉致された4人の旧友たちが、かつての友人の事故死に関して疑心暗鬼を抱き争いへと発展していく…というイタリア製のサスペンススリラー映画。


 タイトルに『監禁デスゲーム』とか付いていますが、そもそも主人公たちは監禁されていない(敢えて言うなら軟禁?)ですし、デスゲームも特に開催されないので、何というか『タイトルに偽りあり』な感じのサスペンス映画です。


 お話としては『かつて仲の良かった友人の5人組みのうち、一人が死を遂げた事故に関して「実は4人のうちの誰かに殺された」という謎のメッセージを元に、当時のメンバーが疑心暗鬼に陥りながら犯人捜しを行う』みたいな感じの展開。


 『現在のパート』と『過去のパート』が交互に進みつつ謎解きが進行していくといった構成なんだけど、お話としては『過去に起こった事件の真相を掘り下げていく』みたいな感じなので、謎解きミステリー的なノリが強めの作品になっています。


 ただ謎解きミステリーといっても、手がかりが徐々に提示されていくというよりは人間ドラマの要素の方が強めの印象。


 お話が進むたびに、過去の『仲良し5人組』が実は人間関係や女性関係、金銭絡み等で揉めていたり、仲間の一部がゲイカップルだったりして、裏側では微妙に険悪な関係『全員に殺害の動機があった』みたいなのが分かってくるのは面白いですね。


 過去のエピソードによって主要となるキャラの掘り下げもシッカリと行われていますし、人間ドラマとしては割と良く出来ている印象。


 ただ人間ドラマとしては良く出来ているものの、サスペンスとして面白いかと言われると微妙なところ。

 『友人の謎の事故死』を中心にお話が動いていく割には、肝心の友人の死に関する話がなかなか出てこないため、見ていてちょっとモヤっとしますし、『過去の掘り下げ』のシーンは殆どが『人間関係』の説明に終始しており、特に盛り上がるような要素も無いため見ていてどうにも退屈です。


 現在のシーンでも、小屋で一つだけ見つかった『拳銃』を巡ってのサスペンス的な要素はあるものの、『翌朝まで』のタイムリミットに特に意味がある訳でもなくて、いま一つ緊張感が薄いのは困りもの。


 ネタバレになりますが、謎解きに関しても『一番怪しそうな人』が順当に犯人ですし、ちょっとだけ『どんでん返し』的な要素もあるものの、中途半端で特に面白味も無いんですよね。


 ドラマ要素は悪くなかったので、もうちょっと謎解き要素やサスペンス要素がシッカリと作り込まれてればなぁ…というのが正直なところでしたよ。

 


 総評としましては、どうにも『緊張感や盛り上がりに欠ける低予算サスペンス映画』って感じの作品です。


 人間ドラマ的な部分は悪くないので『ドロドロとした青春ドラマ』的なノリが好きであれば…という感じですが、サスペンスとしてはちょっと弱め。


 特に『監禁デスゲーム』の部分とか『ヒリヒリした緊張感』みたいな要素に期待していると肩透かしも良いところなので、そういう部分に期待している場合は要注意の映画かもしれませんよ…

 

映画感想:「ディープ・コンタクト」(40点/モンスター)

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■■■「ディープ・コンタクト」■■■
(40点/モンスター)


 自然ガイドのアリアンは、ある日、科学調査のため廃坑となった鉱山へと科学者のチームを案内する事となる。


 その場所は、かつて33名の死者ち162名の行方不明者を出した悲惨な鉱山火災が発生し、それに伴って1000人あまり居た町の住人も姿を消して地図から消されたという曰くの残る場所だった。


 鉱山の場所を突き止めた彼らは、地元の住人の不穏な警告を無視してその廃坑へと訪れるが、その鉱山は実は火災ではな『地下から出没した謎の生物』に壊滅させられたという、恐るべき秘密を持った場所だったのだ…

 


 とある科学者のチームが地図から消えた謎の廃坑に調査に向かったところ、正体不明の地底生物の襲撃を受ける…という、モンスターパニック映画。


 なんとなくノリ的にはトレマーズ辺りをリスペクトして作られた雰囲気のある作品ですが、登場する怪物は「ディセント」の地底人みたいな連中なので、実際の中身の方は『「トレマーズ」と「ディセント」を足したあとに希釈して5ぐらいで割ったような作品』という感じの内容です。
 ちなみに、パッケージにもトレマーズ」のグラヴォイズっぽいモンスターが映っていますが、こんなモンスターは本編には一切登場しません…っていうか誰だよお前!?
 (もしかしたら、ラストの方でチラっと出てきたクイーンのつもり?)


 お話としては『火災で閉鎖されたと言われていた炭鉱街だけど、実は地底から現れた謎の生物によって壊滅していました』みたいな感じの設定なのですが、モンスターが本格的に登場するまでの序盤の雰囲気作りは非常に良い感じ。


 廃坑の町の寂れた感じやら、不自然に主人公たちを追い返そうとする不気味な住民たち…といった雰囲気作りが非常に良く、『鉱山火災と言われているが実際には何が起こったのか?』といった謎の提示の流れなんかも良く出来ており、『「トレマーズ」をクソ真面目にしてみた』みたいな感じのテイストで導入部分の印象は悪くありません。


 ただ問題なのは中盤以降で、低予算映画にありがちなパターンなのですが『とにかくモンスターがなかなか登場しない』のは困りもの。


 お話が動き出すまでの尺も結構長いですし、登場した後も殆どのシーンがチラっと画面に映ったり、闇の中でぼんやりとしたシルエットが見えるような程度といった状態。


 最初は単に勿体ぶっているだけかと思ったのですが、ラストまで徹底してモンスターの姿が画面にマトモに映らないので、これはよほど着ぐるみの出来が悪いのか、もしくは『画面にハッキリ映さない事でリアリティを追求する』という監督の拘りなのか…(あるいは、その双方か?)


 どちらにせよ、モンスター映画で全くモンスターが画面にマトモに登場しないのは、流石にちょっと物足りなさを感じざるを得ません。


 お話のテンポもあまり良くないですし、モンスターもネオモーフとゴラムの合いの子みたいなデザイン(チラっとしか見えないけど)で特に面白味が無く、襲撃方法とかも個性のようなものも殆ど感じられないため、モンスター映画としての面白味に欠けるのは困りもの。


 ただ終盤で登場する『地底人クイーン』みたいなのは、なかなかキモくて良い味を出してたので、その辺でもうちょっと個性が出せてればなぁ。


 ラストのオチも割とカッコ良くて悪くない感じだったので、もうちょっとテンポが良くて、シッカリとモンスターの『怖さ』が描かれてれば悪くない作品になったのではないかと思うのですが…

 


 総評としましては、『どうにも退屈で盛り上がりに欠けるモンスターホラー映画』って感じですね。


 オススメするほどではないですすが、雰囲気作りやら映像センスやらは悪くないですので、そういう雰囲気重視のモンスター映画が好きであれば、まあまあ楽しめなくはない作品かも?


 急いで見るような映画ではないと思いますが、気になるようであればサブスクリプション系の配信サイトとかに入ったタイミングででもチェックしてみても良い一本かもしれませんよ。