NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「江南ゾンビ」(40点/モンスター)

■■■「江南ゾンビ」■■■
(40点/モンスター)


 かつてテコンドー韓国代表の控え選手だったほどの実力を持つヒョンソクは、今はソウルの中心街である江南地区の小さな動画制作会社で働きながら、同僚のミンジョンに密かに思いを寄せながら慎ましやかな生活を送っていた。


 そんなある日、彼らの務めるオフィスビルの近くで、謎の病気に感染したと思われる男性が目撃された事を知るが、彼らが動画制作のために男性を撮影しようと向かおうとする最中、その男性は狂乱状態になりながら彼らのオフィスビルへと乱入。


 オフィスビルの人々に次々と襲い掛かり、男に噛まれた人たちもその男と同じように凶暴化して、次々と感染を広めていく。


 ヒョンソクたちは、一瞬にしてゾンビの巣窟と化したオフィスビルからなんとかして脱出しようと試みるが…

 


 韓国の中心街である江南地区のオフィスビルでゾンビによるパンデミックが発生し、ビルに閉じ込められた主人公たちがなんとかして脱出を図ろうとする…という、韓国製のゾンビものモンスターパニック映画。


 韓国の中心街を舞台としてて更には主人公がテコンドーの達人という設定があったりする辺りから、結構派手な感じの作品なのかと思いきや…むしろ『物凄く地味で見どころのないゾンビ映画という感じの作品です。


 お話としては、『韓国の江南地区のオフィスビルの中で謎のウイルスによるパンデミックが発生し、オフィスビルに閉じ込められてしまった主人公たちがなんとかして脱出を目指す』という、ほぼそれだけのストーリー。


 『謎のウイルス』に関しては明確な説明は無いですが、いわゆる狂犬病ウイルスの突然変異』みたいな感じの描かれ方をしており、噛まれた人間が次々と凶暴化していくといった感じのタイプ。


 ドーン・オブ・ザ・デッド28日後....」的な、感染する前よりも感染した後の方が元気になるという感染者タイプの『走るゾンビ』が出てくる感じの作品ですね。


 本作のゾンビは基本的に単なる『感染者』で死体な訳ではないので、感染しても身体が腐ったりはしておらず『ちょっと出血して黒目がちになる(黒のカラコンを入れてる)』って程度で、ほぼ普通の人間と見分けがつかないレベル。


 28日後....」のゾンビみたいに、ハチャメチャな運動神経で燃えながら走ってきたりはしないので、ビジュアル的にとにかく地味です。


 ただ特撮が地味なぶんだけあってかゾンビ役のキャストの人数は結構多くて、大量のゾンビ化した人間がオフィスビル内を押し寄せてくる様子は割と迫力があって悪くはない印象。


 また本作の最大の見せ場である、元テコンドーのチャンプである主人公がゾンビ相手に大立ち回りを繰り広げるシーンなのですが、ゾンビ化した人間が何故か身体能力が大幅に強化されて『テコンドーのチャンプの主人公と渡り合うようなアクションシーンを見せてくれる』のは、なかなか見ごたえがあって良い感じ。


 とまあ、ここまで書くと割と悪くない作品のように感じるのですが、さっきから再三言っているように『テコンドーのアクションシーン以外がとにかく地味』なんですよね。


 そもそも、ゾンビのパンデミックが始まるまでが割と長くて、主人公たちの会社で働くシーンで主人公と含む『主要キャラの掘り下げ』的なものが行われるのですが、このキャラの設定が物凄くどうでも良い内容でどうにもテンポが悪い。


 『身勝手なセクハラ社長』とか『守銭奴のビルのオーナー』とか個性的なキャラを登場させる割には、全員がたいした盛り上がりもなく勝手にゾンビ化するだけで、キャラの掘り下げた設定が殆ど本編に活かされないのは困りものです。


 またゾンビとの戦闘シーンに関しても、ゾンビ映画なので『残虐描写』がビックリするぐらい無いんですよ。


 主人公はテコンドーの達人とはいえ、素手やバットでゾンビを殴るだけですので、人体損壊みたいな描写は一切なし。
 またゾンビに噛まれた人間もすぐにゾンビになってしまうので、出血描写すら殆ど無くて、とにかく『クリーンなゾンビ映画という感じなんですよ。


 もしかしたら、子供向けに『残虐描写の一切ないゾンビ映画でも作る実験作品だったのかしら?』と疑いたくなるレベルで、一般的なゾンビ映画に見られる残虐描写みたいなに期待していると、一切楽しめない作品になっているので注意が必要です。
 (もしくは『地上波TV放映向け』か何かに、マイルドな描写で作られたドラマなのかも?)


 オチもゾンビ映画にありがちな『投げっぱなしオチ』ですし、どうにも面白さに欠けて物足りなさばかりの残る作品でしたよ。
 (あまりにも『ゾンビ化した人間』が誰も死なないので、もしかしたら最後に『実は治療薬が出来てみんな助かりました』みたいなオチでもあるのかと思って観てましたが、別にそういうオチという訳でも無かったぜ…)

 


 総評としましては、とにかく盛り上がりに欠ける『色んな意味で地味なゾンビ映画という感じの作品ですね。


 ぶっちゃけ、テンポも良くないうえに見どころがあまりにも少ない内容ですので、あまりオススメはしない作品というのが正直なところ。


 同じ韓国製のゾンビ映画なら新感染 ファイナル・エクスプレスとかの名作があるので、敢えて本作をオススメする理由は思いつきませんが、『残虐描写は苦手だけどゾンビ映画は観てみたい』という希少な趣味の持ち主の方が居れば、チェックしてみても良い作品かもしれませんよ。

映画感想:「HEX 地上400m消失領域」(50点/サスペンス)

■■■「HEX 地上400m消失領域」■■■
(50点/サスペンス)


 抜群のスカイダイビングのスキルを持ちつつも、過去のトラウマから常に単独でダイビングを行うサラは、ある日、地元のスカイダイビングのクラブのリーダーであるペイソンから熱烈なアプローチと勧誘を受ける。


 迷いつつも彼のチームに参加する事となった彼女は、『ヘックス(六角形)』と呼ばれる高い難易度のフォーメーションに挑戦する事となるが、そのフォーメーションは難易度だけでなく『挑戦した参加者が次々と命を落とす』という奇妙な都市伝説のあるものだった。


 いざ本番となり、ヘックスへと挑戦する彼女たちだったが、フォーメーション降下の最中に、彼らの目の前でペイソンが『空中で唐突に姿を消す』という奇妙な事件が発生。


 必死になってペイソンの行方を捜索する彼らだったが、本人もその墜落した死体も発見することが出来ず、更にはヘックスの参加者が謎の事故死を遂げてしまい…

 


 『参加者が次々と死を遂げる』という不気味な都市伝説のあるフォーメーションに挑戦した競技者が、メンバーの謎の消失事件に遭遇する…というオカルトサスペンス映画。


 タイトルや雰囲気から、てっきり『空中での人間消失という不可能犯罪のトリックに挑むミステリー系のサスペンス映画』みたいなのを予想していたのですが、自分の予想と違ってむしろ『都市伝説を題材としたオカルト系のサスペンス映画』みたいな内容の作品でしたよ。(まあタイトルバックで、既にオカルトっぽい雰囲気はかもしだして居ましたが…)


 お話としては、『とあるスカイダイビングのチームが、「挑戦した人間が謎の死を遂げる」という奇妙な都市伝説のあるダイビングのフォーメーションに挑戦するんだけど、そのダイビングの最中にメンバーの一人が空中で消失するという奇妙な事件が発生。その謎を追ううちにさらなる犠牲者が出てしまい…』みたいな感じの展開。


 ちょっとネタバレになってしまいますが、分かりやすく言ってしまえば『スカイダイビング版のファイナルデスティネーション』みたいな話と言えば、ホラーファンの人にはピンと来やすい内容かも?


 簡単に言ってしまえば『呪われたフォーメーション』に挑戦したメンバーが、リーダーの空中消失を含めたメンバーの怪死に遭遇し、その都市伝説の秘密を追っていくうちに驚くべき真実へとたどり着く…みたいな感じの展開。


 序盤はちょっとサスペンスっぽいノリなのですが、中盤からは完全にホラー的な展開『理不尽な死』が次々と主人公たちを襲うようになっていきます。


 実際のところ「ファイナルデスティネーション」にインスパイアされた作品だと思いますので、そこまでツマんない訳ではないのですが、序盤のサスペンス的な展開に割と尺を割いてることもあって、全体的なテンポ感がちょっと遅め。
 また、メンバーたちの『謎の死』の描写も妙にアッサリしててそこまで気合が入っている内容でも無くて、どうにも盛り上がりに欠ける印象なのが残念なところ。


 『スカイダイビングにまつわる都市伝説』を題材としてる割にはスカイダイビング要素はそこまで強くも無いですし、『謎の死』を題材とした都市伝説系の作品にするのであれば、もっと犠牲者を増やすか気合の入った殺し方にして欲しかったですよ。


 お話の終盤で解明される『ヘックス』と『人間消失」に関する秘密も矢鱈と唐突ですし、オチもやや投げっぱなしな感じですし、全体的に『もうちょっと見どころがあればなぁ…』って感じの映画でしたよ。

 


 総評としましては、『いま一つ盛り上がりに欠ける地味なオカルトサスペンス映画』というのが正直なところ。


 スカイダイビングを題材にしてる割には題材がそこまで活かされている訳でもなく、「ファイナルデスティネーション」系のテイストの割には『死の運命』とかにそこまで緊張感がある訳でもなくて、全体的にどうにも中途半端なんですよね。


 壊滅的にツマんない訳ではないので、その手のテイストの作品が好きであれば観てみても良いかもしれませんが、正直なところあまりオススメするような要素も無いので、まあ『お好みで』って感じでしょうか?

 

映画感想:「フロム・ディープ・ウォーター」(60点/サスペンス:結構オススメ)

■■■「フロム・ディープ・ウォーター」■■■
(60点/サスペンス:結構オススメ)


 かつて海上でのバカンス中にサメに襲われて姉と恋人を失いつつも一人で生き残ったリズは、それがトラウマとなり事件から1年経った今も毎晩のように『サメに襲われる悪夢』に悩まされ、慢性的な睡眠不足へと陥っていた。


 カウンセリングに通って治療をづづける彼女だったが、症状は改善されず、やがて悪夢の中に登場するサメが現実世界でも姿を現すようになり、日中構わず彼女に襲いかかってくるという幻覚まで観るようになっていく。


 事件後に出会った新たな恋人のロベルタは、彼女に寄り添いつつ一緒にトラウマを乗り越えようと努力してくれるものの、姉たちを死なせてしまった罪の意識を拭うことの敵内彼女の症状は更に悪化していき、遂にはサメだけで無く、死んだはずの姉と恋人の霊までもが彼女の前に姿を現すようになっていき…

 


 サメに襲われて大切な人を失いつつも一命を取り留めた女性が、そのトラウマが原因で日常的に『サメの幻覚』を見るようになっていく…という、サメ映画風味のサイコサスペンス映画。


 サメ映画テイストのある低予算のサスペンスなのですが、意外とシッカリと作られていて予想以上に楽しめる内容の作品でしたよ。(多分、ネット配信専用タイトル?)


 お話としては『サメに襲われて姉と恋人を失いつつも自分だけはなんとか生き延びた女性が、そのトラウマから毎夜のようにサメに襲われる悪夢に悩まされ、遂には現実世界でまでサメに襲われる幻覚を観るようになっていく』みたいな感じの内容。


 基本的に『サメ要素』は、悪夢の中で毎夜のように主人公に襲い掛かってくるという感じなので割と何度も襲撃シーンがあるのですが、『トラウマシーンのリプレイ』みたいな感じで同じ場面が使いまわしで繰り返されるため、特に序盤は物足りなさを感じる印象。


 でも、中盤辺りになって『サメ』が現実世界に侵食するようになってきてからは、まるで「ゴーストシャーク」のように、水たまりやらクローゼットやらからサメが飛び出して襲い掛かってきたりと、意外性のあるアクションで割と楽しませてくれます。


 ただ本作のサメ要素は作中のプライオリティとしては割とオマケ程度で、メインの要素はアクマで『サイコサスペンス的な部分』という印象。


 特にお話が盛り上がってくるのは、中盤の『サメに食われた姉の幽霊』が登場するようになった辺りからで、狼男アメリカン」の『友人のゾンビ』のようにゾンビ化した姉や元恋人が主人公の元に現れて、矢鱈と雄弁に語りかけてくるようになるという展開は、なかなかに意外性があって面白いです。


 また最初はハッキリとしなかった、トラウマの原因である『サメ襲撃事件』の全貌が、幽霊たちとの会話の中で徐々に明らかになっていくという構成や、その中で幽霊たちから語られる『意外な要求』という『新たな謎』が出てくるという作りもなかなか上手いです。


 主人公のキャラの掘り下げもシッカリとしており、最初はちょっと煮え切らない態度にイライラさせられるものの、終盤ではキチンと感情移入できるようなキャラになっているのも良い感じ。


 ラストのオチに関しても、ちょっと唐突感はあるものの割と上手い落としどころだと思いますし、全体的に予想以上に良くできた作品って感じでしたよ。

 


 総評としましては、低予算でB級色は強いものの『予想外の展開やギミックを上手く利用した、意外と良作のサイコサスペンス映画』ですね。


 サメ要素やら幽霊要素やら、なかなか変化球的な構成が多くて思った以上に楽しませてくれますし、ややテンポの悪さや見せ場の少なさはあるものの全体的には及第点という印象。


 ただサメ要素に期待していると割と『オマケ程度』で意外とアッサリした扱いですので、その辺は過剰な期待をしないように注意が必要かもしれませんが、設定やらが気になるようであればそこそこオススメ出来るレベルの一本だと思いますよ。

 

映画感想:「ヴァチカンのエクソシスト」(75点/オカルト:オススメ)

■■■「ヴァチカンのエクソシスト」■■■
(75点/オカルト:オススメ)


 1987年、スペイン・カスティーリャの『サン・セバスチャン修道院』で、少年が悪魔に取り憑かれたと思われる事件が発生。
 悪魔祓いの専門家であるアモルト神父は、教皇からの依頼によって対応のために現地に赴く事となる。


 悪魔に取り憑かれた少年と対峙した神父は、悪魔が神父以外に知りえない『秘密』を語ったことから、本物の悪魔憑きであると判断。


 更に『恐ろしく強力な悪魔』であると予想された事から、悪魔の力を弱めて少年を救うために『悪魔の正体』とその『目的』を探るべく調査を開始するが、やがて、この修道院がかつて異端審問が行われ、多くの罪のない人々が処刑された場所であると判明し…

 


 ヴァチカンの最強エクソシストである主人公が、かつて凄惨な事件のあった修道院に出現した強力な悪魔と戦いを繰り広げる…という、オカルトサスペンス映画。


 ラッセル・クロウが神父役として主演』した事で話題となったエクソシスト映画で、劇場公開の際に割と評判が良かったので期待しつつ観てみたのですが、確かにこれは非常に良くできた良作という印象。


 『悪魔祓い映画の新機軸』と言っても良いような新作オカルトホラー映画でしたよ。


 武闘派であるラッセル・クロウが神父役と聞いた時に、以前に別の映画で虎と戦ってたぐらいだし『悪魔も素手で殴り倒して撃退でもするんだろうか?』みたいなネタが良く言われていたのですが、実際の中身の方も『当たらずとも遠からず』と言ったような内容。


 主人公は戦争経験者である元兵士(パルチザンで、悪魔祓いの手法も『悪魔を豚に憑依させてショットガンで撃ち殺す』みたいな、割と武闘派な戦法を使ったりする『優秀だけど型破りなワイルド神父』みたいな設定で非常に魅力的なキャラに仕上がっており、『ファンの需要を滅茶苦茶良く分かってらっしゃる!!』という印象です。


 お話としては、『スペインの古い教会で改装工事中に少年が悪魔に取り憑かれて主人公たちが対応に派遣されるんだけど、悪魔を撃退するためにその目的を探るうちに、その場所が異端審問時代に凄惨な歴史を持つ場所だと判明していき…』みたいな感じの展開。


 ストーリーの前振りとなる部分も、『主人公(神父)や舞台となる修道院の説明』的なシーンが少しある程度で、特に無駄に尺を取るようなシーンも無くお話が進んでいき、非常にテンポ良くサクサクと観れる作りなのは良いですね。


 要所要所で挿入される悪魔祓い(悪魔との対決)のシーンも普通に迫力があってお話のアクセントとなっており、悪魔のパワフルさを感じさせる良い演出となっています。


 主人公役のラッセル・クロウが見るからにタフそうなので、『この人だったら何かあってもそうそう死なないだろ』という無駄な安心感があり、悪魔の派手な攻撃に耐えうる肉体を備えているのも良い感じ。


 また本作には主人公だけでなく、もう一人のメインキャラとして現地で出会った『新米の若手神父』が登場するのですが、この二人の関係が『ベテランの最強エクソシストと新米の若手神父のバディもの』として描かれており、『バディもの』作品としても楽しめる、一粒で二度三度と美味しい作品に仕上がってるんですよね。


 謎解きパートも、テンポが悪くなるほど難解な訳でも無く普通に楽しめる内容ですし、バディ要素も含めたラストの悪魔とのバトル展開も滅茶苦茶熱いですし、全体を通して非常に良くできた作品という印象でしたよ。


 ただオカルトホラー映画として観ると微妙な部分もあって、一応は『悪魔祓い』をメインに描いているものの、バトル的なノリに終始しているせいもあってか『怖さ』は殆ど無いという事。


 悪魔の『強力さ』は再三に渡って描かれるのですが、『恐ろしさ』という部分は殆ど描かれておらず、ホラー的な要素に期待してると肩透かしを食らってしまう恐れがあるのは気になるところかも?


 ノリ的には『次回作も作る気まんまん』みたいな終わり方でしたので、是非ともシリーズ化してラッセル・クロウVS悪魔軍団』の戦いを描く新機軸のエクソシスト映画として、続きを制作していって欲しいところですよ。

 


 総評としましては、全体的に完成度の高い『非常に良くできた新機軸のバトル系オカルトサスペンス映画』って感じですね。


 ラッセル・クロウが神父役として主演の悪魔祓いものオカルト映画』って聞いた際に、ファンが期待する要素は概ね満たされているような作品ですので、その設定で興味を持った人は間違いなく観ておいて損はない作品だと言えるでしょう。
 (逆に「エクソシスト」みたいな本格ホラーを期待してると肩透かしを食らう恐れはありますが…)


 現時点でAmazonプライム会員であれば無料で観れる作品ですので、会員の方で気になる場合は観ておく事を強くオススメしておきたい一本ですよ。

 

映画感想:「“それ”がいる森」(55点/モンスター)

■■■「“それ”がいる森」■■■
(55点/モンスター)


 田舎町でひとり農家を営む淳一は、別れた元妻の爽子と東京で暮らす小学生の息子の一也が、家庭の事情で突然彼の元を訪ねて来たのをきっかけに、しばらく田舎町で一緒に暮らすことになる。


 都会からの転校生という事でなかなか受け入れられなかった彼だが、なんとか友達も出来て放課後に近所の裏山に遊びに行っていたところ、そこで奇妙な金属の構造物のようなものを目撃。


 それ以降、彼らの住む町で住民の怪死事件や失踪事件が相次いで発生するようになっていき、凶暴なクマの仕業ではないかと考えた警察は山狩りを開始するが…

 


 山中の田舎町で原因不明の怪死事件や失踪事件が相次いで発生し、その事件に巻き込まれることとなった農家の親子が驚くべき真実に触れることとなる…という、サスペンス風味のモンスターホラー映画。


 なんか、いかにも「イット」の類似作品っぽい感じのタイトルが付いていますが、実際には「イット」っぽい要素は殆ど無くて『何でこんなタイトルを付けたんだろう?』とツッコミを入れたくなるような作品です。(一応、『子供たちが森の中で正体不明の存在に遭遇する』という点では、ちょっとだけ似てなくもない?)


 ただ、国産の低予算B級ホラー映画という事で割とショボい感じの作りの作品ではあるのですが、その部分を差し引いたとしても意外と良くできている部分も多いです。


 特に良くできているのが、主人公たちと対峙する『怪物』の造形とキャラクター。


 キャラクターデザインはそこまで個性は感じられないものの、その不気味さやら生理的嫌悪感を感じさせる襲撃シーンの異様さはなかなかのもので、怪物の暴れまわる物語の後半シーンでは予想以上に楽しませてくれます。


 またCGの動画枚数を少なく済ませつつ、低予算でなんとか迫力のある映像を作ろうと腐心しているところが随所に感じられ、『なかなか優れたバランス感覚を持った監督だなあ』と思いつつ観ていたのですが、実は「リング」中田秀夫監督の作品という事で妙に納得。


 怪物の正体を探る『謎解きパート』も割とオカルトやミステリー好きな人のツボを抑えた構成ですし、要所要所では意外と良くできた部分が多いのは満足度が高いです。


 ただ要所で面白い部分はあるのですが、全体を通してみると微妙な出来だと感じる部分が多いのは残念なところ。


 特に、怪物が暴れ出してお話が動き出すまでの前半部分が微妙で、序盤は主人公と息子の家族ドラマ的な内容が描かれるのですが、この要素がどうにも掘り下げ不足。


 また、『転校生である小学生の息子が、田舎の学校で新たに友達と友情を育んでいく…』みたいな要素もあるのですが、息子が仲良くなったお友達は軒並み作中で『退場』しちゃうので、何のために頑張って尺を割いたのか意味不明な状態。


 主人公と離婚した奥さんの関係性の描き方とかも微妙で、人間ドラマ部分が軒並み蛇足な印象なのは困りものです。


 全体で100分ぐらいの尺の映画なのですが、この『蛇足』部分に半分ぐらいの尺が割かれており、全体的に冗長な感じになってしまっているんですよね。


 ただそれ以外の、続編にも繋げられそうなラストのオチの落としどころとか『怪物』のバックボーンっぽい設定なんかも意外と良く考えられていますし、全体的にもうちょっとドラマ部分がシッカリとシェイプされてテンポ良くなってればなぁ…という感じで、勿体なさを感じる作品でしたよ。

 


 総評としましては、色々と不満点はあるけど『思ったよりも楽しめた低予算モンスターホラー映画』って感じです。


 まあでも、国産ホラーとしては割と珍しい『アメリカのB級モンスターホラー』っぽいジャンルやテイストの作品ですので、そういう方向性に興味が湧いたならチェックしてみても良いかもしれません。


 とりあえずAmazonプライム会員であれば無料で観れる作品ですので、サービスに介入している方で気になるようであればどうぞ…って感じでしょうか?

 

映画感想:「死霊館のシスター 呪いの秘密」(65点/オカルト:オススメ)

■■■「死霊館のシスター 呪いの秘密」■■■
(65点/オカルト:オススメ)


 1956年。
 フランスのタラスコンの教会で。悪魔らしき存在によって神父が惨殺されるという事件が発生。
 その事件を皮切りに各地の教会で、悪魔の攻撃によると思われる怪事件と犠牲者が次々と発生するようになる。


 強力な悪魔が蘇ったと考えたバチカン枢機卿は、以前に悪魔と対峙して撃退したシスターのアイリーンに事件の調査を依頼。


 同僚のシスターであるデブラと共に調査を開始したアイリーンは、かつて彼女と共に悪魔と戦った使用人のモーリスが悪魔に取り憑かれてしまったのではないかと考えて彼の足跡を追うが、やがてかつて撃退した最恐の悪魔である『シスター・ヴァラク』と再び対峙する事となっていくのだった…

 


 死霊館のシスター」で封印された最恐の尼僧悪魔である『シスター・ヴァラク』が復活し、悪魔を封印した尼僧であるアイリーンと再び対決する事になる…という、オカルトホラー映画。


 死霊館」シリーズのスピンオフである「死霊館のシスター」の続編に当たる作品ですが、最恐尼僧である『シスター・ヴァラクのみでなく、前作の主役級のメンバーが続投する形で出演するという、前作から割とガッツリと繋がった地続きの話になっています。


 ただ設定的には繋がっているのですが、ストーリー的には割と独立した感じの内容になっており、特に前作を観ていなくても十分に楽しめるレベルの作品になっているのはなかなかバランスの取れた設定の作り方という印象。


 お話としては『撃退されて地獄へと送り返された筈の「シスター・ヴァラク」が再び蘇り力を取り戻すための行動を開始。バチカンは以前にヴァラクを封印したシスター・アイリーンにその調査と撃退を依頼するが…』みたいな感じの展開。


 死霊館」シリーズの新作が『バトルもの』的なノリにシフトして好評だった事を受けてか、こちらも『悪魔との対決』をメインに据えた『バトルもの』的なノリに移行されており、雰囲気重視でややモッタリとした印象だった前作に比べて予想以上に派手でテンポの良い作品に仕上がっています。


 ストーリー的には、謎解きがメインのオカルトサスペンスといった感じのノリなのですが、前作のおさらいも兼ねた謎解きパートやらキャラの立て方も良くできていますし、要所要所のオカルト演出も良い味と雰囲気を出しており、全体的に非常にクオリティの高い作りになっている印象。


 「シスター・ヴァラクも以前の『物凄く顔の怖いシスター』といった印象から物凄くパワーアップして最強悪魔っぽい迫力と物理攻撃力(海外の悪魔はだいたい物理攻撃が得意(笑))を身に着けて復活しており、非常にカッコ良い存在として描かれているのも燃える要素となっています。


 また、主人公のバディ的な存在とした登場した不良シスターのデブラも、新キャラとしてなかなか良い味を出しています。


 ただ、謎解きパートやストーリーパートやキャラの掘り下げ等に比重が置かれているせいか、悪魔が本格的に登場するのが割と終盤になってからで、やや見せ場が少なくて物足りない部分があるのは残念なところ。
 もうちょっと派手に暴れさせて、犠牲者を増やして欲しかったです。


 また『呪いの秘密』とサブタイトルに付いていて、いかにも『シスター・ヴァラクの重要な秘密が語られる』みたいな雰囲気を漂わせているのですが、この辺に関しては何か『分かったような分からないような程度』しか語られて居ないので、そういう方面に期待しているとちょっと肩透かしを食らうかも?


 とまれ、全体的になかなか熱くて面白い内容だったので、いっそアナベル」も含めて今後の『死霊館ユニバース』の作品はこの方向性で新作を作っていって欲しいところですよ。(まあ本作の続編が作られる予定があるかは謎ですが…)

 


 総評としましては、『なかなか良くできているうえに、続編としてもシッカリと作られたオカルトサスペンス映画』って感じですね。


 個人的には、前作の「死霊館のシスター」がやや物足りなかった印象なので、本作でその不満が一気に解消された感じなのは良かったです。


 とりあえず、前作を観た人であれば間違いなくオススメできる内容ですし、中身的には前作を観ていなくてもそこまで困らないようなストーリーですので、その手のジャンルが好きな人であれば普通にチェックしておいても損はない一本ではないかと思いますよ。

 

映画感想:「ミンナのウタ」(60点/オカルト:結構オススメ)

■■■「ミンナのウタ」■■■
(60点/オカルト:結構オススメ)


 人気のアイドルグループである「GENERATIONS」のメンバーである小森隼は、自分の出演するラジオ番組の収録の前にADと共に倉庫で過去の手紙を整理していたところ、30年前に届いたまま放置されていた「ミンナノウタ」と書かれた一本のカセットテープを発見する。


 その日の放送の際に、「カセットテープ、届きました?」というノイズ混じりの奇妙なリスナーからのメッセージを受け取った彼は、その翌日に急に行方不明となってしまう。


 ライブを直後に控えていた事から、マネージャーの凛は元刑事で探偵の権田に調査を依頼。
 調査を進めるうちに、失踪直前の隼が『女性の鼻歌のような、妙なメロディが頭から離れない』という奇妙な悩みをメンバーに打ち明けていたことが判明する。

 


 人気男性アイドルグループのメンバーが、倉庫で発見した奇妙なカセットテープを契機として『呪いの歌』にまつわる恐るべき事件へと巻き込まれていく…という、オカルトサスペンス映画。


 呪怨」シリーズの清水崇監督の作品で、実在するアイドルグループの「GENERATIONS」のメンバー(まあアイドルといってもEXILEの系譜なので割とワイルドですが)が本人役で出演するという事で『芸能人主演の話題性重視の片手間で作られた宣伝用ホラーかな?』と思いきや…
 なかなかどうして予想外に良くできた良作のオカルトホラー映画でしたよ。


 清水崇監督は、最近の「〇〇村」のシリーズがややマンネリ気味でいま一つな印象が強かったので、久々の会心の一作という印象。


 お話としては、ぶっちゃけて言うといわゆる『呪いのビデオのカセットテープ版』といった感じの設定ではあるのですが、ビデオと違って本人が意識せずに口ずさむ『ハミング』や『鼻歌』を介して伝染病のように仲間たちに広まっていくという設定や、BGMに混ざってうっすら『呪いの歌』を流す事で、良い感じに不気味さや緊張感を盛り上げる演出に使っているのは上手いなと感じました。


 また、この設定のおかげで『「GENERATIONS」のメンバーを中心に事件が展開して全員が巻き込まれていく』という設定に全く無理が無い構成となっており、非常に良くできたシナリオだなと感心。


 オカルトサスペンスらしい謎解き部分も良くできており、徐々に判明していく予想外の衝撃の展開はなかなかに面白いです。


 そして、それ以上に良くできているのが『呪いの歌』を作った『謎の少女』のキャラクターで、ややネタバレになってしまいますが、最初は単に『いじめられた少女が復讐のために作った呪いなのかな』と思わせておいて、徐々にその背後に隠された『邪悪さ』のようなものが滲み(にじみ)出してくるような構成は非常に秀逸。


 『ビジュアル的な怖さ』も流石は清水崇監督という感じで要所要所にインパクトのある見せ場を作ってくれるのは悪くない印象です。


 ただ現役アイドルグループが主役という事もあってか、グロすぎるシーンはご法度になっているのか、全体的に衝撃的なシーンが少な目でホラー描写にやや盛り上がりに欠ける印象があるのは残念なところ。


 またラストの投げっぱなし気味の『後を引く展開』は、人によっては好みの分かれるところかもしれません…
 (個人的には、なかなか良くできた落としどころだと思いましたが…)

 


 総評としましては、予想以上に『なかなかに良くできた新作のJホラー系サスペンスホラー映画』って感じですね。


 やや派手さに欠ける部分はありますがキャラや設定も良く立っており、新基軸とか新シリーズとして続けていけるだけのポテンシャルを持った作品という感じです。


 いま一つ話題になっていないですが、Jホラーが好きな人であれば十分に楽しめる内容で、もっと話題になっても良い新作だと思うので、その手のジャンルが好きで気になる人はチェックしておいても損はない一本ではないでしょうか?