NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ホビッツベイ」(50点/モンスター)

■■■「ホビッツベイ」■■■
(50点/モンスター)


 1978年、カリフォルニア州オークランド
 獣医師を目指すジュールズは、夫のベンと幼い娘のレイアとともにペットショップを営んでいた。


 そんなある日、数カ月前に亡くなったベンの母親の遺産を整理していた弁護士から、かつて両親が暮らしていた住居が土地がオレゴン州のホビッツベイという海辺の町に遺産として残されている事を知らされる。


 住居を確認するために家族三人でその場所を訪れた彼らは、そこで素晴らしい景観のビーチと廃墟同然となったコテージを発見。


 風光明媚な立地から、何故この場所が40年近く放置されていたのかと訝しがる彼らだったが、そんな矢先に彼らは地下の貯水タンクから新種と思われる正体不明の両生類の死骸を発見し…

 


 オレゴン州沿岸の田舎町の放置されたコテージを訪れた一家が、正体不明の巨大な両生類の襲撃を受ける…という、モンスターパニック映画。


 アメリカで昨年あたりに作られた『巨大両生類』を題材としたモンスター映画のようなのですが、いま一つ話題にならなかったのも納得というか、なんというか『地味で盛り上がりに欠ける映画』というのが正直な感想の作品です。


 お話としては、『とあるペットショップを営む夫婦が、両親が遺産として残した田舎のコテージの存在を知り遺産整理のために確認に訪れるんだけど、その場所で正体不明の巨大両生類の襲撃を受けて、両親が「なぜこの場所を放棄したのか…」の真実を知る事となる』みたいな感じの展開。


 『風光明媚な田舎の海岸にポツンと建つコテージ』といったロケーションや、『不気味な雰囲気を感じさせる地下の貯水槽』といった雰囲気づくりは割と良く出来ていますし、『何故、両親がこの場所を放棄せざるを得なかったのか』といった部分の謎解きパートと、徐々に明らかになっていく真実という流れなんかは悪くない印象。


 …なのですが、雰囲気の盛り上げ方は確かに悪くないものの、雰囲気づくり以外の部分がモンスター映画としてどうにも微妙な作品なんですよね。


 まず何が微妙って、とにかく『モンスターが画面に出てこない』という事。


 最近のモンスター映画ってCGをメインで使うせいもあってか、割とモンスターが画面に堂々と露出する作品が多いのですが、本作は『80年代のホラー映画かよ』とツッコミたくなるぐらいにモンスターが画面に映りません。


 とにかく物凄く『出し惜しみ感』が強くて、マトモに登場するのも割と終盤になってからですし、登場人物が基本的に家族の3人(あとちょい役で2人)だけなので、襲撃シーンや活躍シーンそのものが少なすぎてどうにも見せ場が少ないです。


 また出現するのも夜の森の中とか地下の洞窟みたいな場所ばかりで、基本的に姿がよく見えないので無駄にストレスが溜まります。


 怪物の水中からの襲撃シーンとかは割と緊張感があって良いのですが、それも『昔のモンスター映画の予算削減しつつ緊張感を出す手法』みたいな映像表現で、どうにも観ていてイライラしてしまいました。


 映像のクオリティとかを見る限りそこまで低予算っぽい雰囲気でも無かったので、もしかしたら『80年代のB級モンスターホラー映画』へのオマージュでも意識して作ったんでしょうか?(でも、『そこはオマージュしなくても良いところだろ』ってのが正直なところ…)


 ちなみにモンスターのデザインに関しては、『巨大両生類』が題材となっている映画では割と定番の『廃棄物13号』(パトレイバー)っぽいデザイン。


 デザインとしては悪くは無いのですが、せっかく巨大両生類を題材にしてる映画なんだから、もうちょっと既存の古代の両生類をモチーフにするとか本作ならではの個性が欲しかったかなぁ?(まあ、それだけ『廃棄物13号』のデザインが秀逸だという事なのかもしれませんが…)


 あと細かい部分ですが、色んな意味で『設定があんまり活かされていない』のも気になるところ。


 舞台が『70年代アメリカ』なのですが、特に70年代である必然性が感じられないですし、『奥さんが生物学の知識がある』みたいな設定も最後までほとんど活かされないまま…


 先述のとおり、モンスターが『両生類』である特徴も特に活かされていないですし、『だからなんやねん?』と言いたくなるような肩透かしの展開と設定の連続なのも地味にストレスが…


 ラストのオチも投げっ放しで盛り上がりに欠けますし、どうにも物足りなさの残る映画でしたよ。

 


 総評としましては、ちょっといま一つな部分が目についてしまう『微妙な出来のB級モンスター映画』って感じですね。


 雰囲気づくりやらストーリーテリングの良さやら悪くない部分もあるのですが、モンスター映画としてみると物足りなさを感じる部分の方が目についてしまい、『もうちょっとどうにかならんかったかなぁ…』というのが正直な感想です。


 そこまで強く推すような要素も無いものの、そこまで壊滅的にツマんない訳でもなくて、物足りないながらも『普通に見れるレベル』の作品ではあるので、予告とかで気になっているようであればチェックしてみても良い一本かもしれませんよ…

 

映画感想:「サムシング・イン・ザ・ダート」(50点/サスペンス)

■■■「サムシング・イン・ザ・ダート」■■■
(50点/サスペンス)


 ロサンゼルス近郊の古いアパートへ越してきたリーヴァイは、引っ越し早々に廊下で奇妙な『水晶の器』のようなものを拾う。


 中庭で隣人のジョンと出会った彼は、会話するうちに意気投合してリーヴァイの自室を訪れる事となるが、前の住人の忘れ物だろうと思い保管していた水晶の器が『妖しい光を放ちながら宙に浮かぶ』という奇妙な現象を目撃する。


 二人は事態に驚愕しながらも、なんとかしてこの現象を利用して一山当てる事が出来ないかと画策。


 謎の現象を調査しつつ撮影する形でドキュメンタリービデオを作成し、それを売り込もうとドキュメンタリーの制作を開始し、この現象に関連すると思われる様々な『奇妙な一致』を発見していくが…

 


 安普請のアパートの一室で『宙に浮かぶ水晶の欠片』という奇妙な現象を目撃した2人の中年男性が、一攫千金を狙ってその現象の謎を追うドキュメンタリー映画を作成する…という、SF風味のサスペンス映画。


 『自宅の側で超次元的な現象が発生して、その謎を調査する』という設定から、なんとなくクトゥルフ神話の「宇宙からの色」のようはコズミックホラー的な話かと思いきや、特にホラー的な要素は無くてSF風味のサスペンスドラマといったテイストの作品ですね。 (でも『超次元的な不可解な現象』という意味では、ちょっとだけコズミックホラー的なテイストも無くはないかも?)


 お話としては『安アパートの一室で「宙に浮く水晶の欠片」という奇妙な現象を目撃したくたびれた中年男性の2人が、人生の一発逆転を狙って現象の調査を開始し、その様子をドキュメンタリービデオとして撮影する』という、いわゆるモキュメンタリーテイストのストーリー。


 SFテイストといってもSF要素はアクマで『風味付け』程度で、メインの要素は『人生に疲れてくたびれた中年男性二人の、依存関係のような友情のような奇妙な関係性』を描いた感じの内容で、人間ドラマの要素の方が強めな印象。


 主人公のうちの一人が『元数学教師』という設定で、『宙に浮く水晶の欠片に秘められた幾何学的な特徴が原因で、何らかの重力異常を起こしているのではないか?』といった感じで謎の現象を調査していくのですが、調査が進むうちに『彼らの住む古いアパートの設計に隠された秘密』やら、『アパート建設当時のLAの都市計画に秘められた謎』やらが判明していく…という流れは謎解きテイストとして面白くて、「ムー」(オカルト雑誌)とかで良くある超常現象とか陰謀論系の話が好きであれば、なかなかに楽しめる印象。


 しかし前述のとおり、基本的には『二人の中年男性の人間ドラマ』の方がメインで、奇妙な現象の解明のための協力関係や依存関係が続いていくうちに、友情にも似た『二人の関係性』が微妙に変化していく様子が丁寧に描かれているといった感じ。


 ただ、この『オッサン二人の人間ドラマ』に割かれている尺がかなり長めで、『奇妙な現象』に対する謎解きがなかなか進まないうえに、2時間弱と映画全体の尺も長いためとにかく観ていてダレてくるのが辛いです。


 特に終盤は辺りは、あまりのダルさに早送りしようかと本気でちょっと悩むレベルでしたよ…


 また、SF要素は味付けで『人間ドラマ』がメインという構成って辺りからなんとなく予想は付くとは思うのですが、『奇妙な現象』に関する謎解きは『なんか分かったような分からないようなオチ』というありがちなパターンなので、そっち方面に期待している場合は肩透かしを食らわされるかも?


 オチに関しては『ちょっと意外性のある展開』で思ったよりも面白かったので、その部分に関しては悪くない感じかなぁ…


 ただ個人的には、この設定ならもうちょっと『トンデモ系の展開』でも良かった気はしますよ。

 


 総評としましては、低予算で作られた『どうにもダルい作りのオッサンの人間ドラマベースのSFサスペンス映画』って感じですね。


 SFっぽいアイデアは悪くないんだけど盛り上がりに欠ける内容ですので、アクマで二人の『主義や生き方の違うオッサン二人の関係性』を描いた人間ドラマがメインで、SF的な部分はオマージュ的なもの程度と捉えておいた方が良い作品でしょう。


 正直あまり推す要素はありませんが、人間ドラマとしてはそこまでツマんない訳でも無いので、『うらぶれた中年男性たちの友情』的なものに興味がある場合はチェックしてみても良い一本かもしれませんよ…

 

映画感想:「トンソン荘事件の記録」(55点/オカルト)

■■■「トンソン荘事件の記録」■■■
(55点/オカルト)


 1992年、釜山の旅館である「トンソン荘」で、アルバイトの男性が恋人を連れ込み、隠しカメラで部屋の様子を撮影しながら殺害するという事件が発生。


 犯人の男性は心神耗弱による無罪を主張しつつも、服役中に自殺を遂げてしまう。


 その殺人事件の一部始終が撮影されたビデオは、残虐性から当局によって封印された後に行方不明となってしまうが、そのビデオに『奇妙な映像』が映り込んでいると噂を聞いた取材班は独自に調査を開始。


 消えたビデオの行方と事件に隠された秘密を追ううちに、恐るべき真相へと近づいて行くのだった…

 


 とあるドキュメンタリー取材班が、かつて釜山の旅館で撮影された『殺人事件の現場』が撮影されたビデオに『謎の映像』が映っているという奇妙なウワサを追ううちに、自分たち自身も恐るべき事態へと巻き込まれていく…という、韓国製のフェイクドキュメンタリー風オカルトサスペンス映画。


 お話としては『かつての不可解な殺人事件にまつわる奇妙な噂を耳にした番組スタッフが、その『殺人現場の録画映像』に秘められた『謎』と『呪い』を追ううちに恐るべき真実へと近づいていき、やがて自分たち自身もその『呪い』にとらわれていく』みたいな感じのお話ですね。


 一応、『殺人現場の録画映像』が『呪いのビデオ』みたいな扱いになってはいるのですが、むしろ『呪いのビデオ』がお話の中心ではなくて『トンソン荘事件に隠された恐るべき真実の謎を追っていく』みたいな部分がメインの要素となっており、どちらかというとミステリとかサスペンス的な要素が強い作品といった印象です。


 基本的には『謎解き』がメインのストーリーといった感じで、主人公である取材班の面々が当時の不可解な事件の謎を追ううちに、次々と新たな『きな臭い事実』や『血なまぐさい事実』が発覚していき、深入りする事によって恐るべき事態へと巻き込まれていってしまう…みたいな感じの展開。


 といっても、事件の謎を追うのに地元の霊媒師による儀式やら降霊術やらを行うため、完全にサスペンス中心というではなくてオカルト要素もそこそこ強めな印象。


 ただ、『事件を調査するうちに新たな真実が次々と判明していく』という展開は悪くないのですが、謎解き要素が全体的に淡々としておりいま一つ盛り上がりに欠ける印象があるのは気になります。


 また、『過去の事件』を追うフェイクドキュメンタリーの割には登場人物が妙に多くて、人間関係が分かりづらくて全体的に妙に難解なストーリーになってしまっているのも気になるところ。


 逆に謎解き要素以外の、地元の霊媒師による『降霊の儀式』みたいなシーンは物凄く不気味で良い雰囲気を出しており、土着信仰とかを題材としたオカルトものの『雰囲気映画』としてはなかなか良い味を出しているので、むしろサスペンス要素を控え目にしてそちらを中心に描いた方が良かったんじゃないか…という気がします。


 前述のとおり難解なうえに全体的に説明不足で、『どうなるのが正解なのか』の着地点が見えてこないまま話が進むため観ていてスッキリしないんですよね…


 ラストの『写真がいっぱいあった祠』の意味も良くわかりませんでしたし、叔父と父親と息子の関係性とかもいま一つ判然としなくて、なんか全体的にモヤっとする作りの作品でしたよ。

 


 総評としましては、『いまひとつ盛り上がりに欠ける低予算系フェイクドキュメンタリー風味のオカルトサスペンス映画』って感じですね。


 土着信仰の儀式とか雰囲気映画として悪くない部分もあるのですが、『呪いのビデオ』とか『サスペンス要素』とか詰め込みすぎているせいで、全体的にお話がとっ散らかりすぎててオススメするにはちょっと弱いかな…という印象。


 部分的には良いところもありますので、こういったフェイクドキュメンタリー系のホラーとかが好きで気になるようであれば、チェックしてみても損は無い一本かもしれませんよ。

 

映画感想:「エクソシスト 信じる者」(60点/オカルト)

■■■「エクソシスト 信じる者」■■■
(60点/オカルト)


 出産の際の事故で妻を亡くしたヴィクターは、男手ひとつで13歳になる娘のアンジェラを育てていた。


 そんなある日、アンジェラは親友のキャサリンと一緒に森に出かけるが、そのまま二人して行方不明になるという事件が発生。
 二人は三日後に遠く離れた牧場で保護されるが、行方不明となった間の記憶を無くしている事が判明する。


 更にその直後から、彼女たちは突然暴れだしたり自傷行為を行うといった異常な行動を取るようになっていくが、病院の検査では原因が知れず困惑することに…


 彼女たちが行方不明になる前に、森で『降霊術』を行った事を知ったヴィクターは、異常な現象から『娘たちが悪魔に取りつかれたのではないか』と考えて、悪魔祓いの専門家であるクリス・マクニールに助けを求めて、悪魔祓いを行おうとするが…

 


 2人の少女が悪魔に取り憑かれてしまい、教会の助けを得られないその家族たちが少女を救うためになんとかして悪魔祓いを行おうとする…という、オカルトホラー映画。


 ホラーファンにはお馴染みのブラムハウスによる新作で、世界で一番有名な悪魔祓い映画であるエクソシスト」のシリーズの正当な続編に当たる作品です。


 エクソシストって割と正統派の悪魔祓い映画として名前が知られている作品ながらも、特に続編以降は『悪』の存在そのものを題材としている、結構難解な世界観や設定のものが多かったりするのですが、本作もシリーズの例に漏れず『割と難解なお話』という印象。


 ストーリーとしては、『森の中で降霊術を行った2人の少女が悪魔に取り憑かれてしまい、教会に相談しても取り合ってもらえない両親たちが協力して娘たちの身体から悪魔を追い出そうとする』みたいな感じのお話なのですが、なかなか一筋縄では行かない感じの設定になっているのが面白いところ。


 一般的な悪魔祓い映画と違って、本作では教会は『体面ばかり気にする役立たず』で悪魔祓いを行ってくれず(実際、条件とか規則とかが結構厳しくて、簡単には悪魔祓いを引き受けてくれないらしい)、娘たちを救うために主人公たちが独学で『悪魔祓いの方法論』を学びつつ、元シスターやらオカルト学者やらが協力しあって悪魔に立ち向かっていくという設定は、なかなかに意外性があって良い感じです。


 『悪魔祓い』を体系的に読み解くに当たって、宗教学的な観点やら『神』と『悪魔』とは果たして何かみたいな観点が語られるのですが、この内容は宗教学とかが好きな自分からしたら面白いものの、全体的にちょっと難解。


 そういった部分に割と尺が割かれていることもあって、全体的にテンポが悪くてオカルト描写も控え目で、ちょっと物足りない部分があるのは困りものです。


 また『悪』とは何かを読み解こうとする割には、そこまで噛み砕いて語ってくれる訳でも無いので、結局『何なのか良くわからないけど信じる者は救われる』みたいな感じのオチになってしまっているのも、ちょっとモヤっとします。(笑)


 あと、終盤の『悪魔祓いパート』は熱くて面白いんですが、そこまでが結構長い事や、登場人物も妙に多くてちょっとキャラクターが把握しにくい事も気になる部分かも?


 ラストのオチも微妙にモヤっとする部分がある感じですし、元祖の『悪魔祓い映画』である「エクソシスト」の正当な続編が、一番『オーソドックスじゃない悪魔祓い映画』みたいになってしまっているのは、ある意味で面白い現象かもしれませんね。

 


 総評としましては、なかなか良くできているものの、ちょっと捻りの利いた変化球の『悪魔祓いもの』のオカルトサスペンス映画って感じですね。


 系列的にはエクソシスト3」辺りが好きだった人であれば、本作も割と好きなテイストだと思うので、そういうのが好きな人には割とオススメできる一本ではないかと…


 やや個性が強い内容ですし、あまり正統派の『悪魔祓い映画』って感じではないので割と好みを選ぶ作品だとは思いますが、設定とか独特の世界観とかが気になるようであれば、チェックしておいても損はない作品だと思いますよ。

映画感想:「PIGGY ピギー」(65点/サスペンス:オススメ)

■■■「PIGGY ピギー」■■■
(65点/サスペンス:オススメ)


 スペインの田舎町に住むティーンエイジャーのサラは、その太った容姿をバカにされてクラスメイトたちから『子豚ちゃん(ピギー)』と呼ばれて馬鹿にされ、執拗な虐めの対象となっていた。


 両親からも境遇を理解されずに自宅でも孤立していた彼女は、ある日、一人で地元のプールに泳ぎに出かけるが、そこでクラスメイトの3人の少女と遭遇して、溺れさせかけられたうえに衣類を隠されるという虐めを受ける。


 泣きながら自宅へ帰ろうとする彼女だったが、その途中で彼女を虐めたクラスメイトの3人が怪しげな男にバンに閉じ込められて、血まみれで拉致される現場を目撃。


 恐怖と復讐心から警察への報告を逡巡する彼女だったが、やがてプールで監視員の死体が発見され…

 


 いつも『子豚ちゃん(ピギー)』と呼ばれて虐めを受けていた少女が、偶然にもいじめっ子たちが殺人鬼に拉致される現場を目撃してしまい…という、青春系サスペンススリラー映画。


 なんでもサンダンス映画祭だかで高い評価を受けたスリラー映画という事ですが、確かにそれも納得の個性的な設定とキャラクターが光る、強烈な印象を残すなかなかの良作サスペンス映画ですね。


 お話としては『クラスで虐めを受けている少女が、彼女をいじめたクラスメートたちが謎の男に拉致される現場を目撃するんだけど、後にその男が恐ろしい殺人鬼である事が判明。恐怖やいじめっ子への復讐心といった色んな感情がないまぜになって警察への通報を逡巡する彼女だったが、そんな彼女のもとに殺人鬼が再び姿を現し…』みたいな感じの展開。


 基本的にはスリラー映画なのですが、人間ドラマ的な部分の掘り下げにかなり重きが置かれている作品という印象です。


 太った容姿をバカにされる少女の『まわりから虐められる様子』やら、家族を含めたの中での『少女の孤立っぷり』やらが矢鱈とリアルに描かれていて、その部分も含めて非常に心をえぐられるような内容になっています。


 特に怖いのが、少女に対する『母親を筆頭とした大人たちの理解の無さ』っぷりで、無思慮で無遠慮な母親の態度の方が殺人鬼の10倍ぐらい怖くて、むしろ殺人鬼が主人公の数少ない少女の理解者のように描かれているのはなかなか皮肉な設定で良い感じ。


 ドラマとしても面白いのですがスリラー映画としてもなかなか良くできており、恐ろしい事実が判明しつつもなかなか真実を告げられない主人公の心の変遷やら、周囲の人間や殺人鬼を含めた機微な心理描写を中心に、最後まで先の読めない展開の連続になっているのも良く出来ています。


 ただ先述のとおり、人間ドラマ的な部分にかなり重きがおかれた内容であるが故に、お話の展開自体はちょっと遅め。
 そのおかげで終盤の展開がややバタバタしすぎな印象があるのは、ちょっと残念なところかも?


 あと、ややネタばれになってしまうのですが、ラストの展開に関しては個人的にはもうちょっと『尖ったオチ』でも良かったんじゃないかな…という気がしたのは自分だけでしょうか?(まあ、単なる好みの問題って話ではあるんですが、ぶっちゃけいじめっ子たちはもっと酷い目にあって欲しかった…)

 


 総評としましては、『なかなかに良くできた青春系のサスペンススリラー映画』って感じの作品ですね。


 ティーンエイジャーの虐め問題を主題としつつ、ブラックな設定を含めて結構強烈に切り込んでいるような内容ですので、そういう題材に興味があるようであればチェックしておいても損はない一本だと思いますよ。


 特にサンダンス映画祭』とかでよく話題になる『クセが強めのサスペンス映画』とかの系統が好きな人にはオススメの作品ですので、そういう方面の映画に興味がある人であれば迷わずどうぞって感じではないでしょうか…

 

映画感想:「ゾンビタイガー 狂虎襲来」(55点/モンスター)

■■■「ゾンビタイガー 狂虎襲来」■■■
(55点/モンスター)


 明朝37年(1400年代の初頭)の中国では、宦官たちの権力争いにより王朝の政治中枢は腐敗しきっていた。


 皇帝直属の秘密警察・錦衣衛を辞めたチャン・リウチョンは、冷酷非道な組織のやり方に反発し、とある一族の少女を助けるために仲間を殺して組織から離反。
 首都を離れたリウチョンは、少女と共に狩人である弟のリウピンの滞在する涼城の街の狩場を訪れる事となる。


 しかし、その街では街の支配者によって不老不死の丸薬である『金丹』が研究されていたが、『金丹』の素材として魔術師の手によって作り出された『ゾンビタイガー』が研究所から逃亡。
 ソンビウイルスを持った虎が狩場に大量発生し、折り悪くリウピンらの訪問に合わせて街を襲撃。


 ソンビタイガーの群れの襲撃を受けた街が壊滅状態に陥ってしまうなか、リウピンらは生き延びた街の人々を救うためにゾンビタイガーの群れへと戦いを挑むこととなるが…

 


 中世の中国で、魔術師の怪しげな研究によって生み出された『ゾンビタイガー』の群れが街を襲撃し、元秘密警察のエリートである主人公が虎の群れへと戦いを挑む事となる…という、モンスターパニック映画。


 中国製の『ゾンビ虎』を題材としたパニック映画ですが、中世が舞台ですしノリとしては中国で人気のいわゆる『武侠もの』に近いテイストの作品といった感じですね。


 尺も70分程度と短めな作品だけあって全体的に非常にテンポが良いのが特徴で、開幕からいきなりアクションシーン連発ですし、序盤から『ゾンビタイガー』も大群で暴れまくり。


 特に、メインとなる『ゾンビタイガー』の登場シーンは非常に多くて、本編のほぼ7割ぐらいのシーンはゾンビタイガーと戦っているんじゃないかってイキオイで、登場する数も総勢で100匹ぐらいという大盤振舞い。


 おかげでアクションシーンやパニックシーンも豊富で、観ていて退屈しない作りなのは良い感じ。


 ただアクションシーンがメインの構成故に、キャラやストーリーの描き込みが意外と大雑把なのは残念なところ。


 主人公のキャラもそこまで掘り下げられてないですし、主人公の相方となるヒロインっぽいキャラも影が薄いですし、ソンビタイガーを作り出した魔術師やら主人公の弟やら何もしないうちに勝手に死んでるしで、全体的にストーリーが薄め。


 主人公は秘密警察のエリートみたいな設定の割にはそこまで強くなくて(むしろゾンビタイガーが強すぎ?)、いま一つ活躍シーンが観られないのも残念なところですので、もっと武侠もののように超人的な運動神経でバトルを繰り広げて欲しかった…


 あと、メインのモンスターであるソンビタイガーの誕生エビソードも妙にアッサリしてますし、ゾンビタイガーも『矢鱈と打たれ強い』という以外はあまり個性が感じられなかったので、この辺はもうちょっと丁寧に描かれても良かった気はしますよ。

 


 総評としましては、『そこそこ楽しめるレベルの中国を舞台とした武侠もの風味のパニック系アクション映画』って感じですね。


 アクションシーンも多くテンポも良くて全体的に悪くはないのですが、どうにも薄味な部分が多くて物足りなさを感じる作品という印象でした。


 強く推すには弱いですがサクッと楽しめる内容ではあるので、この手のノリが好きであればとりあえず観ておいても損は無い感じの一本だと思いますよ。

 

映画感想:「ジョーズ MEGAモンスターズ」(40点/生物パニック)

■■■「ジョーズ MEGAモンスターズ」■■■
(40点/生物パニック)


 ある日、ダイバーのウェイは、元恋人のアン・チーらと共に男女6人のグループで、友人のクルーザーで洋上のバカンスに出かける事となる。


 しかし彼らの操船ミスにより、クルーザーが暗礁に衝突して転覆するという事故が発生。


 海上に投げ出されてしまった彼らは、船が沈没しきる前になんとかして近くの無人島まで泳いで向かおうとするが、負傷した彼らの血の匂いに引き寄せられて、巨大な人食いザメが集まってきてしまい…

 


 洋上にバカンスに出た若者6人が、クルーザーの転覆事故によって海に投げ出されて巨大なサメに狙われる事となる…という、サメものの生物パニックホラー映画。


 大量生産されている中国製の生物パニック映画のうちの一本なのですが、タイトルに『MEGAモンスター』とか付いてていかにもメガロドンとかが登場しそうな雰囲気ですが、本編には普通の巨大人食いザメが登場するだけで特にメガロドンとかは登場しません。


 公式のプレスリリースにも、いかにもメガロドンが登場しそうな雰囲気の事が書いてあるうえに、タイトルやパッケージも「MEG」を意識しまくりな感じなのですが、ここまで『だます(というか優良誤認させる)気まんまんなタイトル』は最近では逆に珍しいかも?(笑)


 お話としては、『洋上にクルーザーでバカンスにでた若者たちが、事故によって海に投げ出されてしまい、なんとかして近くの島まで避難しようとするんだけど、近海に棲む巨大な人食いザメによって一人また一人と犠牲になっていく』という、ホントにそれだけの展開。


 特に捻りのようなものもない、直球ストレートに『人食いザメの襲撃』を描いただけの内容なのですが、全体の尺も70分程度と短いですしキャラの掘り下げや背景の説明なんかも割と最低限な程度しかなくて、とにかくサクサクとお話が進むのはストレスが溜まらなくて良いですね。


 ただサクサク進むのは良いのですが、全体的に映画の内容がとにかく淡泊でどうにも盛り上がりに欠ける印象。


 本作の目玉となる『人食いザメ』はCGと実写映像の合わせ技で描かれているのですが、映像の使いまわしが多いうえにCGの合成もそこまで高いレベルでもなく、襲撃シーンも『なんとなくカメラアングルの切り替えで襲われてる風に誤魔化している』みたいな感じ。


 一応は定期的にサメが登場して『仲間が一人づづ犠牲になっていく』みたいな流れなのですが、前述のとおりキャラの掘り下げも浅いのでメンバーが食われてもあまり感情移入も起こりませんし、サメの襲撃シーンも映像的にあまり面白味が無いものなので、観ていてもどうにも盛り上がりに欠けます。


 CGとか特撮のレベルやお話の展開のどれもが、かろうじて『及第点レベル』ではあるのですが、それ以上のものが何も無いためとにかく淡々と『テンプレート的なサメ映画』を見せられている印象です。


 ラストも割とアッサリしてて面白味に欠けますし、なんかもうちょっと主人公やサメのキャラに魅力的な要素や盛り上がる部分があればなぁ…という感じの映画でしたよ。

 


 総評としましては、『どうにも盛り上がりに欠ける人食いザメもの低予算B級パニック映画』って感じですね。


 特に酷い要素がある訳ではないのですが、なんというか『可も不可も無さ過ぎて不可』みたいな感じの映画で、良い意味でも悪い意味でも個性の感じられない作品という印象。


 正直なところ特にオススメするような要素もないので、よほど『サメ映画は逃すことなく全てチェックするんだ!』みたいな使命感に燃えているのでも無ければ、普通にスルーしてしまっても問題のない一本だと思いますよ。