NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「PIGGY ピギー」(65点/サスペンス:オススメ)

■■■「PIGGY ピギー」■■■
(65点/サスペンス:オススメ)


 スペインの田舎町に住むティーンエイジャーのサラは、その太った容姿をバカにされてクラスメイトたちから『子豚ちゃん(ピギー)』と呼ばれて馬鹿にされ、執拗な虐めの対象となっていた。


 両親からも境遇を理解されずに自宅でも孤立していた彼女は、ある日、一人で地元のプールに泳ぎに出かけるが、そこでクラスメイトの3人の少女と遭遇して、溺れさせかけられたうえに衣類を隠されるという虐めを受ける。


 泣きながら自宅へ帰ろうとする彼女だったが、その途中で彼女を虐めたクラスメイトの3人が怪しげな男にバンに閉じ込められて、血まみれで拉致される現場を目撃。


 恐怖と復讐心から警察への報告を逡巡する彼女だったが、やがてプールで監視員の死体が発見され…

 


 いつも『子豚ちゃん(ピギー)』と呼ばれて虐めを受けていた少女が、偶然にもいじめっ子たちが殺人鬼に拉致される現場を目撃してしまい…という、青春系サスペンススリラー映画。


 なんでもサンダンス映画祭だかで高い評価を受けたスリラー映画という事ですが、確かにそれも納得の個性的な設定とキャラクターが光る、強烈な印象を残すなかなかの良作サスペンス映画ですね。


 お話としては『クラスで虐めを受けている少女が、彼女をいじめたクラスメートたちが謎の男に拉致される現場を目撃するんだけど、後にその男が恐ろしい殺人鬼である事が判明。恐怖やいじめっ子への復讐心といった色んな感情がないまぜになって警察への通報を逡巡する彼女だったが、そんな彼女のもとに殺人鬼が再び姿を現し…』みたいな感じの展開。


 基本的にはスリラー映画なのですが、人間ドラマ的な部分の掘り下げにかなり重きが置かれている作品という印象です。


 太った容姿をバカにされる少女の『まわりから虐められる様子』やら、家族を含めたの中での『少女の孤立っぷり』やらが矢鱈とリアルに描かれていて、その部分も含めて非常に心をえぐられるような内容になっています。


 特に怖いのが、少女に対する『母親を筆頭とした大人たちの理解の無さ』っぷりで、無思慮で無遠慮な母親の態度の方が殺人鬼の10倍ぐらい怖くて、むしろ殺人鬼が主人公の数少ない少女の理解者のように描かれているのはなかなか皮肉な設定で良い感じ。


 ドラマとしても面白いのですがスリラー映画としてもなかなか良くできており、恐ろしい事実が判明しつつもなかなか真実を告げられない主人公の心の変遷やら、周囲の人間や殺人鬼を含めた機微な心理描写を中心に、最後まで先の読めない展開の連続になっているのも良く出来ています。


 ただ先述のとおり、人間ドラマ的な部分にかなり重きがおかれた内容であるが故に、お話の展開自体はちょっと遅め。
 そのおかげで終盤の展開がややバタバタしすぎな印象があるのは、ちょっと残念なところかも?


 あと、ややネタばれになってしまうのですが、ラストの展開に関しては個人的にはもうちょっと『尖ったオチ』でも良かったんじゃないかな…という気がしたのは自分だけでしょうか?(まあ、単なる好みの問題って話ではあるんですが、ぶっちゃけいじめっ子たちはもっと酷い目にあって欲しかった…)

 


 総評としましては、『なかなかに良くできた青春系のサスペンススリラー映画』って感じの作品ですね。


 ティーンエイジャーの虐め問題を主題としつつ、ブラックな設定を含めて結構強烈に切り込んでいるような内容ですので、そういう題材に興味があるようであればチェックしておいても損はない一本だと思いますよ。


 特にサンダンス映画祭』とかでよく話題になる『クセが強めのサスペンス映画』とかの系統が好きな人にはオススメの作品ですので、そういう方面の映画に興味がある人であれば迷わずどうぞって感じではないでしょうか…