NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「デイ・オブ・ザ・トリフィド」(60点/生物パニック:SFファンならオススメ)

イメージ 1

■■■「デイ・オブ・ザ・トリフィド」■■■
(生物パニック/60点:SFファンならオススメ)

 ある日、地球全土で彗星の影響による謎の大流星群が観測される。
 流星群自体は花火のように美しい天体現象として多くの人類に観測されるが、この流星群を目撃した人々は全て翌日に視力を失ってしまう。

 偶然にも流星群の当夜に目の手術の為に視力を失っていたビルは視力を失う事を免れるが、病室で目を醒ました彼が見たものは、一握りの視力を失わなかった人達を求めて街中をさ迷う視力を失った人達の群れと、混乱に乗じて略奪を行う略奪者達の姿だった…

 更に、燃料の収穫用に飼育されていた謎の食肉植物「トリフィド」が、飼育場より解き放たれ人々を襲い始めた事によって、人類は未曾有の危機に晒される事になる。


 英国のSF小説の巨匠であるジョン・ウィンダム原作による破滅テーマのSF小説である「トリフィドの日」(または「トリフィド時代」)の映像化作品。

 パッケージだけ見ると宇宙戦争のパクリ映画のようですが、本作も古典SF小説の傑作と言われる作品が原作となっており、実際に内容的には類似作品でも何でもありません。

 本作は1981年に英国のBBCにてドラマ化されたものなのですが、実は私、この作品の原作者であるジョン・ウインダムは、SF小説作家の中でも物凄く好きな作家の一人なので、今更ながらとは言え本作がDVD化されるのは嬉しい限り。

 ストーリーは、多少端折られているもののほぼ原作に忠実で、ジャンル的に一応『生物パニック』としてしまっていますが、どちらかというとSF的な色合いが強く『ディザスタームービー(破滅テーマ映画)』と言ってしまった方が良いような内容。

 謎の流星群によって視力を失ったうえにトリフィドの襲撃を受けた人達がパニックに陥る中、視力を失わなかった一部の人間達が、ある者はエゴからある者は正義感からある者は信仰心からある者は私利私欲を満たす為に、それぞれに独自の論理に基づき行動を起こす事で展開していく人間ドラマが非常に丁寧に描かれています。
 流石に原作が傑作SFと言われているだけの事はあって、このドラマ部分が非常に秀逸で普通にストーリーを追っているだけでも十分に面白い作品に仕上がっています。

 ただ、逆に食肉植物トリフィドが大暴れするようなパニック映画を期待していると、トリフィドの出番のあまりの少なさに、ハッキリ言って肩透かしを食らうかも?
 むしろ、視力を失った人達がゾンビのように徘徊して、視力を持った人間を捕まえようとする姿の方がトリフィドよりもよっぽど恐いですし…

 また原作に忠実なのは良いのですが、もともとの小説版は『世界観やら設定やらを物語の中で主人公の独白として説明している部分』が、本作では会話劇として行われているので、特に序盤はやたらと説明的なセリフが多くて、ちょっと鬱陶しく感じるかもしれません。

 映像も、全体的に寂れた感じがジョン・ウィンダム独特の『静かな破滅』の雰囲気を上手く表現しており、なかなか上手く撮られているとは思うのですが、いかんせん特撮に関しては1981年の技術な上にTVドラマなのでハッキリ言ってかなりショボ目。
 トリフィドもあからさまに作り物っぽいので、そっち方面は期待しない方が良いでしょう。
 出来れば最新の技術を使ってリメイクして欲しいものですな…

 実は「トリフィドの日」は、これ以前にも1963年に一度映画化されており、その際の邦題は「人類SOS!」といった物で、こっちはトリフィドを完全にモンスターとして描いた生物パニック映画だったのですが、『トリフィドが海水を浴びると溶けてしまう』とかって妙な設定が付加された割とトンデモ系の映画になっており、悪い意味で有名な作品…
 そんなトンデモ系の生物パニック映画じゃなくて、原作に忠実な「トリフィドの日」を観てみたいという人には、本作はかなりオススメな作品と言えるでしょう。

 あと、パッケージを観ると普通の一本の映画かのように書かれていますが、もともとBBCで1話・30分の6話構成で放送された物を無理矢理1本のパッケージにまとめた物なので、30分おきにオープニングとエンディングが挿入されるので、何も知らずに観てた私は相当面食らいましたよ。

 総評としましては、破滅テーマのSFやディザスタームービーが好きな人には、なかなかオススメ出来る秀作と言えるレベルの作品です。

 まあ、最近の映画と見比べるとどうしても『地味かも?』と感じてしまう部分も少なくは無いです(特に第1話はかなり地味なので覚悟しておかないと辛いかも?)が、元々の原作からしてちょっと地味なお話ですしね…
 古典SFとか昔のSFドラマに触れるつもりで観れば、まさに温故知新的な感覚で結構楽しめる作品だと思いますので、そういうノリの作品が好きならば是非。

 最後に、SFマニア的な意見を個人的に言わせて貰うとすれば、トリフィドのデザインが原作を全く無視したデザインになってるのは、ちょっといただけなかったかなぁ?
 トリフィドの名前の由来となった『3本の長い鞭のような蔦』が無くなって、単なる南国の巨大植物のような外見になり、怪物的な恐さが無くなっているのはちょっといただけません…
 その点だけでは旧作の「人類SOS!」の方が忠実だったかも?