■■■「インプリント~ぼっけえ、きょうてえ~/三池崇史」<マスターズ・オブ・ホラー>■■■
(60点/Jホラー)
明治初期の日本、アメリカ人記者のクリスは以前に親しい間柄となって結婚を誓った女郎の『小桃』の姿を探して、遊郭の集まるうらぶれた島へと辿り着く。
しかし、呼び込みの女から『小桃などという女は居ない』と告げられた彼は、落胆しつつも既に帰りの船も無く、その夜は一軒の遊郭で一晩過ごす事とする。
一人、姿を隠すように座る不思議な雰囲気を持つ女郎を指名したクリスだったが、現れたその女郎の不気味に畸形に歪んだ顔に驚くものの、その女郎の話に小桃の話をするうちに、その女から『小桃はつい先日、首をつって自殺をしたのだ』という事実を知らされる。
更に真相を突き止めるべく女郎を問い詰めていくうちに、彼は小桃の死にまつわる驚くべき真実を知らされる事となるのだった…
世界的に有名なホラー監督が競演する「マスターズ・オブ・ホラー」シリーズより、日本人監督として唯一エントリーの三池崇史監督による、怪談風テイストの猟奇ホラー作品。
三池崇史監督というとJホラーとしては「着信アリ」の監督として有名ながら、個人的にはむしろ「殺し屋1」とか「極道恐怖大劇場 牛頭」とか「ゼブラーマン」とかの『イロモノ映画の監督』という印象が強く、そっち方面で注目してる監督だったりするのですが…
日本からの唯一のエントリーが、中田秀夫でも清水崇でもなく三池崇史監督という辺り、もし狙ってるのだとしたら「マスターズ・オブ・ホラー」シリーズの『濃さ』を感じずには居られないチョイスです。
ちなみに監督のチョイスだけでなく、本編の内容の方も非常に三池監督らしいトンガった内容で…
序盤は、遊女と主人公の『寝物語』として語られる『伝統ある日本の怪談風の展開』かと思いきや…
中盤以降は「ヘルレイザー」や「殺し屋1」もかくやと言うような凄惨な拷問シーンや残虐描写があったり、『子捨て』等の日本の因習のタブーに触れるような展開が出てきたりと、まさに『ぼっけえ、きょうてえ(物凄く恐ろしい)』とのタイトルに相応しい、生きるも地獄、死ぬも地獄とでも言うような恐るべき地獄絵図を展開してくれます。
和風の雰囲気を残しつつも、遊郭を『妖しい』というよりも、見世物小屋(フリークハウス)的な『怪しい』雰囲気で描いてみたり…といった演出も非常に良い味を出しており、和製ホラーのテイストを残しながらも、洋物の『悪趣味映画的』なケレン味あふれる雰囲気をかもし出しているのも面白い点でしょう。
色んな意味でインパクト抜群のホラーだとは思うのですが、序盤の展開がやや冗長で特に最初の30分ぐらいは結構ダルい部分が多く、インパクトのある部分に辿り着くまでに少々飽きてしまいそうになるのは惜しい所。
また、パッケージや予告編の印象からは想像できないような、まさに『目を背けたくなる程の残虐描写』が含まれており、正直言って『痛いのが苦手な人』や『心臓の弱い人』はマジに見ない方が良いかも?とか思える程の『超絶痛そうムービー』なので、普通の『怪談』風のJホラーと思って観ようと考えてる人はご注意を…
つか、この映画こそ『うっかり子供が間違えて観たら一生トラウマになるよ…』とか思うので18禁扱い(最低でもR-15)とかにしておくべきだと思うのですが…
総評としましては、いわゆる『Jホラー』というジャンルでは無く、むしろもっと下品でパワフルで『見世物小屋的な雰囲気』を持った作品です。
同監督の悪趣味なテイストが好きな人や、残虐描写も全く平気な人ならば結構楽しめる作品だと思いますが、そういうのが苦手な人には相当キツい作品だと思いますので、その辺は自分の趣味との兼ね合いと言う感じで…
『三池監督も最近はちょっと趣味のパワーを出し切れてないな…』と感じる作品が多かった中で、久々に同監督のアクセル全開の作品を観た気がしますので、そっち方面に期待してる方は是非。
ちなみに余談ながら、「マスターズ・オブ・ホラー」の他の作品は2話セットで1本なのに、この作品だけ1話で1本なので、レンタルするのに妙に割高感があるのは微妙だなぁ。
どうせなら、この巻にメイキングとかが監督インタビューとかでも一緒に入ってれば良かったのに…(って、オリジナル版に無いものを入れろって言っても無理ですか?)