NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「スペル(2020年版)」(60点/オカルト:結構オススメ)

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■■■「スペル(2020年版)」■■■
(60点/オカルト:結構オススメ)


 幼少期に虐待を受けた弁護士の黒人男性・マーキスは、ある日、父の死の知らせを受けて葬式へと参列するために妻と二人の子供と共に実家へと帰省することとなる。


 しかし自家用セスナでの移動の途中で、セスナは嵐に巻き込まれて墜落。
 目を覚ました彼は、自分が足に酷い傷を追ったうえにブードゥー魔術と使う不気味な老女とその家族によって助けられた事を知る。


 家族の身を案じる彼は、老女たちに一緒にいた筈の家族の事を聞くがその答えは要領を得ず、徐々に老女たちの行動に不信感を募らせていくが…

 


 飛行機事故にあったせいで『不気味な魔術を使う老女』に軟禁されることとなってしまった男性が、なんとかして彼女らの元から脱出しようとする…という、オカルト風味のサスペンススリラー映画。


 タイトルだけ聞くと、サム・ライミ監督の同名のオカルトホラー映画を思い出しますが、『ブードゥーの呪い』という共通点はあるものの、内容的には特に関係のない作品です。(というかタイトルが完全に一緒なので、ちょっと紛らわしい?)


 お話としては『とある男性が飛行機事故にあって意識を失い民家のベッドで目を覚ますんだけど、その家の主の老女はいかにもヤバそうなブードゥー教の魔術師で、「自分や家族も命を狙われるのではないか?」と不安を抱くようになっていき…』みたいな感じの展開。


 ストーリー的にはいわゆる『監禁ものホラー映画』という感じの内容で、特にお話の前半はサスペンス要素が強めの印象。


 『謎の儀式を繰り広げる住人達』『目的不明の老女の言動』という周囲人間の不気味な行動を目の当りにするうちに疑心暗鬼を強めていく…


 みたいな感じの展開なのですが、『果たして本当に老女は悪意を持って主人公を陥れようとしているのか、それとも主人公の妄想なのか?』といった感じの監禁ものサイコスリラー的なお約束気味のノリではあるものの、ブードゥー教の異様な雰囲気もあいまってなかなかに良い味を出しています。


 また、魔術師の老女の不気味さやら粘着質な感じのキャラとかも良い味を出していますし、住民たちの『いかにもアングラな原始宗教の信者』って感じのノリもなかなか怖くて、思った以上に良く出来ている印象。


 ここからはややネタバレになるのですが、序盤の静かなサイコサスペンス的なテイストに反して、後半は割と『予想の斜め上を行くようなパワフルな展開』なのも良い感じ。


 中盤までのスローペースで雰囲気映画的な印象に反して、非常にテンポ良くサクサクと楽しめるノリになっているのは、ギャップを楽しめるという意味でも良い意味で予想を裏切られましたよ。


 ネタバレを避けるためにあまり詳しくは書きませんが、特に終盤の『過剰なまでの残虐ファイト的な展開』は、なかなかに痛快でカタルシスもあって面白かったです。


 難を上げるとしたら、序盤がちょっと地味で盛り上がりに欠ける感があるのと、主人公の過去のトラウマ(父のDV)とかが、長く尺を取った割にはあんまり物語に活かされてなかった辺りかなぁ?(あそこまで尺を割くなら、もうちょっとお話の核心に関係するようなノリでも良かった気がしました。)


 とまれ、特に期待していなかったのですが、なんというか『一粒で二度美味しい』的なノリの作品という感じで思ったよりも楽しめた作品でしたよ。

 


 総評としましては、『なかなか良く出来た佳作レベルのオカルトサスペンス映画』って感じの作品ですね。


 強くオススメとはでは行かないものの、『監禁もののサスペンス映画』とか『原始宗教ネタのオカルト映画』とかが好きであれば割と刺さる部分のある作品だと思います。


 あまり話題になってなかった作品の割には予想以上に面白くて怖い内容でしたので、気になるようであれば普通にオススメの一本ですよ。

 

映画感想:「クレイジーズ 42日後」(55点/モンスター)

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■■■「クレイジーズ 42日後」■■■
(55点/モンスター)


 ある朝、マンションの自室で目を覚ました若者のエイデンは、マンションの外で市民同士の奇妙な暴動のようなものが発生しているのを目撃する。


 驚いた彼がTVを点けてみると、全世界で『人間を激怒させ狂暴化させる謎のウイルス』のパンデミックが発生しており、感染者に噛まれた人間も同じように感染者となり、感染者が爆発的に増加しているという驚くべき事実を知る。


 自室に引きこもって感染者の襲撃をやり過ごしていた彼だったが、感染の開始から42日後、遂に食料も殆どが底を尽き、またパンデミックによって両親や家族も失った事を知ったことから、自分の勇気の無さと境遇に絶望し自殺をしようと試みる。


 しかし、そんな矢先に向かいのマンションに自分以外の唯一の生存者である若い女性が居る事に気づき、紙に書いた文字のやりとりで彼女と親しくなったエイデンは、なんとかして彼女を救えないかと考え行動を開始するが…

 


 人間を狂暴化させるウイルスの大流行で文明が崩壊した世界で、向かいのマンションに唯一の生存者を発見した若者が彼女と共に生き延びるために行動を開始する…という、ソンビもののモンスターホラー映画。


 タイトルに「クレイジーズ」と付いているものの、当然ながら本家の「クレイジーズ」とは何の関係も無い作品で、どちらかといえば28日後....」にはインスパイアされたような雰囲気を受ける作品という印象ですね。


 系列的にはいわゆるゾンビ映画なのですが、28日後....」と同様に『人間を極度に狂暴化させて暴走させるウイルス』という設定で、走るタイプの『活きの良いゾンビ』の登場するタイプの作品といえば、ホラー映画好きにはなんとなくイメージが湧きやすいかも?


 サバイバルもののゾンビ映画とは言いつつも、序盤は主人公がひたすら部屋に一人で引きこもって、絶望やら妄想に囚われる様子が延々と描かれるだけなので、いわゆるセカイ系』的なシチュエーションスリラータイプのゾンビ映画なのかと思いきや、中盤に『第二の生存者』が登場してからお話の流れが変わり『主人公の世界が一気に広がっていく』感があるのは、主人公の気持ちとシンクロするような解放感が感じられて面白い構成ですね。


 42日間に渡って救助も無く、家族も失って他の生存者が居るかどうかも分からないような状況では、確かに絶望して死にたくなるのも分かりますが、向かいのマンションに『若い女性が一人で生存している』と知っただけで、希望を取り戻し勇気を振り絞って頑張ろうとする主人公の姿には『男って単純だな…』と思いつつも、妙に共感できる部分があります。(笑)


 設定から分かるとおりに、ちょっとだけ『ゾンビだらけの世界でのボーイ・ミーツ・ガール』みたいな恋愛ドラマ的な要素もあるのですが、その要素もそこまでうるさくなくて爽やかな感じでまとめられているため、ゾンビ映画として観てもバランス感も悪くありません。


 また中盤以降の流れも、単純に『サバイバルホラー』的なストーリーに突入するだけかと思いきや、『第三の生存者』が登場してからの怒涛の急展開的な流れも予想外で面白いですし、ラスト付近のスピーディなテンポの良さも良く出来ている印象。


 ただ先述のとおり、序盤が『主人公がひたすら部屋に一人で引きこもってる姿』を描くだけなので、観ていて非常に退屈なのは困りもの。


 世界が広がる『中盤以降との対比』のために虚無感がシッカリと描かれているといった部分はあるのでしょうが、さすがにちょっと観ていてダレてしまいましたよ。


 また、設定に関してもパンデミックの発生から42日後』という設定の割には『感染者たち元気すぎるだろ!!』ってのは気になるところ。


 感染者たちに計画的に食料を貯蓄するような脳があるようには見えない(というか死体は食べないという設定)のに、ゾンビ化してからずっと元気に走り回っているゾンビたちが、42日も経っても異常に元気なのはちょっと変じゃないですかね?


 あと、主人公も『一人暮らしの家庭で42日も食いつなげるほど食料を備蓄してたんか?』ってのも不自然(もしかしたらイギリスでは備蓄を持つのが一般的なのか?)ですし、もうちょっと事件が起こるまでの日数は短くても良かったのでは…


 またお話の構成は割と凝ってて面白いのですが、所詮は低予算映画のため映像の迫力とか派手なシーンとかは殆ど無くて、全体的に盛り上がりに欠ける印象なのは残念なところかなあ?


 もうちょっと序盤とかで派手な見せ場となるシーンでもあれば、更に盛り上がる内容になったんじゃないかとは思うので、その辺はもうひと頑張りして欲しかったですよ。


 オチとかも、冷静に考えると『何の解決もしてなくない?』的な終わり方ではあるのですが、割とキレイな締め方で良い感じでしたし思ったよりも楽しめたソンビ映画って感じの作品でした。

 


 総評としましては、派手さは無いものの意外と良く出来た『爽やかな気分になれる青春系ゾンビ映画って感じの作品です。


 捻りは無いものの、割とベタベタな『恋愛ドラマ』的なノリは悪くないですし、作品のテーマも分かりやすくて良い感じなので、ゾンビものが好きでその手のノリに拒否感が無ければそこそこオススメできる一本ではないかと…


 強く推すほどではないですが、『ちょっと変わったノリのゾンビ映画』として気になるようであればチェックしてみても損は無い作品だと思いますよ。

 

 

映画感想:「アイランド・ゼロ」(50点/モンスター)

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■■■「アイランド・ゼロ」■■■
(50点/モンスター)


 クリスマスを目前に控えたメイン州の離島であるタッカー島。
 海洋生物学者サムは『魚介類がまったく取れなくなる』という謎の現象の調査を行っていた。


 しかしそんなある日、本土との連絡船であるフェリーが訪れなくなったうえに、ネットや電話が通じなくなるという事件が発生。


 物資の調達を定期連絡船に頼っていた彼らは燃料と食糧の不足から困窮してしまい、助けを求める漁船で町まで向かおうとするが、本土に向かう予定だったボートが『血痕だけを残して無人で漂流している』という異様な状態で発見され…

 


 通信網や交通手段の麻痺から離島に隔離された人々が、正体不明の謎の海洋生物の襲撃を受ける…という、モンスターホラー映画。


 Amazonプライムビデオの配信に入っていたのでなんとなく観てみたのですが、プライムビデオでB級ホラー映画配信の常連である『itn』による製作の作品という事で、推して知るようなレベルの低予算ホラー映画という感じの内容となっています。


 お話としては、『とある人里離れたメイン州の離島で「島が完全に本土から孤立する」という謎の事件が発生するんだけど、事件を調査していくうちに海洋生物学者の妻がかつて調査していた「未確認の捕食生物」の存在が明らかになっていき…』というような感じの展開。


 序盤の導入部分に関しては非常に良い感じで、『何か異常なことが起こりつつある』という事を感じさせる雰囲気の盛り上げ方も上手いですし、メインとなる登場人物たちのキャラクターの掘り下げや人間ドラマ部分もなかなか良く出来ており、なんとなくS・キングの作品を思わせるようなテイストが感じられて、予想以上に楽しませてくれます。


 舞台となるメイン州の孤島』というロケーションも、いかにもS・キングが好みそうな感じの設定ですし、実際にキング作品を意識して作られているのかも?


 ただ導入部分は面白いのですが、それ以降の展開が低予算故に非常に残念な出来になってしまっているのは困りもの。


 何が一番残念って本作は一応はモンスター映画なのですが、お話が動き出すまでが結構長めで、モンスターがとにかくなかなか登場しない事です。


 途中でサーモグラフィーカメラにチラっと写ったり、襲われた人間の死体とかは出てきたりするのですが、肝心の怪物の出し惜しみっぷりがなかなか酷い。


 しかもようやく登場したと思ったら『ステルス能力のある表皮のせいで姿が見えない』(サーモグラフィーカメラには映る)という設定で、映画には登場しても画面には殆ど登場しないとう展開には逆に笑ってしまいましたよ。


 制作者的には、上手く工夫してモンスターのCGの予算を節約したのかもしれませんが、流石に『画面に全く登場しない』のは物足りないにも程がありますし、人間とウナギのあいの子っぽい外見のモンスターのデザインは、なかなか不気味で良い味を出してたので流石にそこはもうちょっと頑張れよと…(笑)


 また序盤の雰囲気は良い感じなのに、終盤の『ドンデン返し的な謎解き展開』が妙に安っぽくていま一つ盛り上がりに欠けるのも残念なところかなぁ?

 

 妙に安っぽい『意外な展開』を仕込むぐらいなら、人間ドラマの雰囲気が良かったので、素直にその部分を掘り下げた方が良かったんじゃないかと思うのは自分だけですかね?

 


 総評としましては、世界観やら雰囲気やらは悪くないものの『いま一つ盛り上がりと迫力に欠けるモンスターホラー映画』って感じの作品ですね。


 雰囲気映画としては悪くなさそうなテイストなので、S・キングの小説とかが好きであれば、そこそこハマれる要素のある作品かもしれません。(中盤以降で息切れしちゃったようなノリではありますけど…)


 とまれ、Amazonプライムに入ってれば無料で観れる作品ですので、プライムの利用者で気になるようであればチェックしてみても良いかもしれませんよ。

 

映画感想:「アンチ・ライフ」(50点/モンスター)

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■■■「アンチ・ライフ」■■■
(50点/モンスター)


 西暦2242年。
 環境破壊と疫病の流行によって地球は滅亡の危機に瀕していた。


 人類は地球を捨て、5000万人の富裕層を宇宙船によって太陽系外の植民惑星である『ニューアース』へと移民させることを計画。


 軍の提督の娘であるヘイリーの恋人のノアは、宇宙船の作業員としてなんとか植民船へと乗り込むことに成功し、『ニューアース』へと向かう人々がコールドスリープで眠る間の船の保守を行うこととなる。


 しかし航海開始から数十日後、クルーの数名が血まみれの状態で変死を遂げるという事件が発生。


 現場が人間の仕業とは思えない惨状だった事から、ノアは上司のクレイらと共に事件の原因を知ると思われる行方不明のクルーを捜索するが、そのクルーは正体不明の『寄生生物』に取り憑かれており…

 


 外宇宙の植民地へ向かう宇宙船の中に取り憑いた人間を怪物化させる正体不明の『寄生生物』が侵入し、クルーたちが命をかけた戦いを繰り広げる事となる…という、モンスターパニック映画。


 一応、ブルース・ウィリスが準主役として共演してる作品ではありますが、有名俳優が出演している割には、なんというかB級…というよりもD級ぐらいレベルの低予算モンスター映画って感じの作品です。


 ちないにお話としては、『宇宙植民地に向かう宇宙船の中にエイリアンと思われる「謎の寄生生物」が侵入。寄生生物は次々とクルーに取り憑き人間を怪物へと変貌させつつ感染を拡大していくが…』みたいな感じの展開。


 寄生生物はシーバース」に登場したようなワーム型の生物で、『人間の口から侵入して寄生した人間をコントロールする』みたいな設定なのですが…


 「物体X」的な『誰が寄生されているかを探る』みたいなサスペンス的な要素は一切なくて、『寄生された人間がタフな不死身の怪物になる』という感じなので、ノリ的にはまるっきり『ゾンビ映画』と変わらない印象ですね。


 とにかく『寄生生物のせいで狂暴化して襲い掛かってくる乗員たち』を生き残ったクルーたちが迎え撃つみたいな感じで、特にSFらしい要素とか寄生生物ものらしい要素は殆ど無いのは残念なところ。


 ただ低予算映画といいつつも、一応はSFのスタイルを取っているだけあって一般的なソンビ映画とかよりはお金がかかっている感じで、宇宙船の船内のセットとかもそれなりに作り込まれていますし、アクションとか銃撃戦とかがそこそこ派手なのは好感触。


 しかしストーリー的な面白味は殆どなくて、寄生生物要素とかSF要素とかはあまり活かされておらず、ほとんどのシーンが延々と同じような『ゾンビ軍団を銃器で迎え撃つ』だけのアクションシーンの繰り返しのせいで、途中でちょっと飽きてしまいます。


 一応は謎解き要素はあるものの『寄生生物』の正体も結局は良く分からないままですし、サスペンス的な要素も薄くて場当たり的な展開が多いため、全体的に緊張感が薄くていま一つ盛り上がりに欠けるのは困りもの。


 ただ、終盤で登場する「遊星からの物体X」のブレアモンスターみたいな『合体エイリアン』は割とインパクトがあったので、そいつはもっと活躍させて欲しかったところかなぁ?


 まあ、プロットそのものはそこそこ悪くない印象だったので、『もうちょっと設定を活かす話作りになってればなぁ…』という感じの作品ではありましたよ。

 


 総評としましては、特徴が薄くて『いまひとつ盛り上がりに欠けるモンスターパニック映画』って感じの作品ですね。


 というか、寄生モンスターを題材にしてる割には『宇宙船を舞台にしたゾンビ映画』にしか見えない内容だったので、設定を活かすもう一工夫が欲しかったです。


 ぶっちゃけ、ブルース・ウィリスのファンで余程気になっているとかで無ければ、特に急いで観るほどの作品ではないので、気になっている場合は気が向いたタイミングででもどうぞ…って感じの一本でした。

 (ちなみにブルース・ウィリスの作中での扱いは割と良かったです。)

 

 

映画感想:「ザ・ハント」(65点/サスペンス:結構オススメ)

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■■■「ザ・ハント」■■■
(65点/サスペンス:結構オススメ)


 突然に拉致されて、どことも知れぬ森の奥で目を覚ました12人の男女。


 状況が把握できないままに目の前に武器が満載された巨大な木箱を発見し混乱する彼らだったが、そんな彼らを何者かが銃撃。


 とっさに箱の中の武器で反撃するも、森のいたるところに仕掛けられた罠や謎の襲撃者という状況から、彼らは自分たちがネットでウワサとなっている、『金持ちによる人間狩りゲーム』である『マナーゲート』の狩りの獲物として選ばれた事に気づく。


 ターゲットの一人であり元帰還兵の”スノーボール”は、生き延びるためになんとかして状況を打破するべく襲撃者への反撃を開始するが…

 


 唐突に拉致されて『人間狩り』ゲームに参加する事となった人々と富豪のハンターとの戦いを描いた、サスペンススリラー映画。


 いわゆる『人間狩り』を題材としたサバイバルアクション風味のサスペンス映画なのですが、個性的な良作を作ることでおなじみの『ブラムハウス』による新作だけあって、今回もなかなか捻りの効いた面白い作品となっています。


 序盤の導入部分は、割とオーソドックスな印象の『人間狩り』作品っぽい展開なのですが、中盤辺りからは『どこまでが仕込まれた虚構で、どこからが主人公たちの妄想なのか?』といった感じの一筋縄では行かない展開に突入していき、先の読めない感じの話になっていくのはなかなか面白いですね。


 アクションシーンも思ったよりも豊富で完成度も高く、頭が切れるうえに容赦のない主人公もカッコ良くて、アクション映画としての完成度が高いのも良い感じ。


 終盤の展開も、『獲物を狩る大富豪』側から見ても『獲物となる一般市民』側から見ても皮肉が効いた感じのブラックな構成になっているのも面白いですし、ラストのオチもなかなかパンチが効いていて『流石はブラムハウス』という感じの作品という印象。


 ただ捻った設定になっているせいか、序盤のスピーディな展開に比べると、中盤辺りがちょっとグダグダ気味で中だるみする部分があるのは気になるところ。


 また、主人公とライバルとなるラスボス的な人物の2人はキャラが立ってて良い感じなのですが、その他のキャラの影が薄くていま一つ印象に残らないのは残念なところかなぁ…(獲物側もハンター側も、もっと濃いキャラが居ても良かったと思う。)


 あと、人によって解釈が異なりそうなオチの展開は、割と好みの別れる部分かも?

 


 総評としましては、なかなか良く出来た『良作サバイバルアクション風味のサスペンススリラー映画』という感じの作品ですね。


 金持ちによる『人間狩り』という設定に興味があって、ブラムハウスお馴染みの『皮肉や捻りの効いたサスペンス』が好きな人であれば、普通にオススメできる一本だと言えるでしょう。


 個性的なプロットやらストーリーに加えて、なかなか捻りが効いていてパンチもある作品なので、気になるようであればチェックしておいても損は無いと思いますよ。

 

 

映画感想:「ブラッド・パンチ タイムループの呪い」(60点/サスペンス)

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■■■「ブラッド・パンチ タイムループの呪い」■■■
(60点/サスペンス)


 ドラッグ依存症の治療のためリハビリ施設に入る事となった化学専攻の大学生のミルトンはリハビリ施設で知り合った女性・スカイラーにそそのかされて風邪薬から覚せい剤を精製するための手伝いをする事となる。


 スカイラーの恋人であるラッセルの手引きで施設から脱走したミルトンは、彼らと共に郊外の狩猟小屋に身を隠して覚せい剤の精製を開始。


 精製が終わったタイミングでラッセルは裏切り、ミルトンを殺害しようとするも、なんとか返り討ちにした彼はスカイラーと共にラッセルの死体を庭に埋めてしまう。


 しかし翌日に目を覚ますとラッセルは蘇っており、『前日の朝』に時間が巻き戻っているという異常な事態が発生している事に事に気づき、彼らはラッセルに殺されないために、再びラッセルを殺すが、何度殺しても『翌日の朝には前日に時間が巻き戻ってしまう』という、謎の『時間のループ』に囚われてしまい…

 


 麻薬の密造を目論む3人の男女が謎の『時間のループ』に囚われてしまい、ループから抜け出すために何度も血みどろの殺し合いを繰り返す…という、ブラックな設定のタイムループものサスペンススリラー映画。


 Amazonのプライムビデオに無料で来ていたのでなんとなく鑑賞してみたのですが、思った以上に良く出来た『タイムループもの』のサスペンス映画でした。


 いわゆる『タイムループもの』では『主人公や周りの人間が何度も殺される』みたいな設定で、その悲劇を防ぐためにループを抜けようとするみたいなパターンが多いですが、本作は『同じ時間を繰り返して何度も何度も相手を殺し続ける』というなかなか捻りの効いたパンチのある設定の作品となっています。


 お話としては『無法者たちと麻薬の密造に加わる事になった青年が、麻薬が完成して殺されそうになった際に襲撃者を殺してしまったところ、謎の「タイムループ」に囚われて延々と同じ日を繰り返す事となってしまう』みたいな感じの設定。


 主人公は『同じ日の同じ時間』に殺されそうになるので、それを避けるために先回りして相手を殺すんだけど、何度殺しても時間が巻き戻って同じ日を繰り返してしまうため、しまいにはごく自然な日常のルーチンワークのように『延々と同じ相手を殺し続けるようになってしまう』という展開は、なかなかにブラックで笑わせてくれます。


 また単純な『時間のループを抜け出す方法を探る』だけのタイムループものかと思いきや、中盤辺りから『悪党どうしの腹の探り合い』みたいな要素も絡んできて、お話が二転三転して先が読めない展開に突入していくのも、他のタイムループものには無い感じの凝った作りになっていて面白いですね。


 あと、本作では何故か『殺された人間の死体はタイムループした翌日にも残っている』という謎の法則があって、『殺した相手の死体が日を重ねる毎にどんどん増えていく』という絵面は、なかなかにシュールでちょっと笑ってしまいました。


 ただ、設定やらストーリーやらは個性的で面白いのですが、全体的にちょっとお話のテンポが悪い部分が目に付くのは気になるところ。


 最初の『タイムループ』が発生して事件が動き出すまでも無駄に長いですし、それ以降も『タイムループ以外の要素』のお陰で、ちょっと脇道に反れるような展開が多くて、どうにも冗長な印象を受けてしまいます。


 オチも割と捻りが効いててサスペンスとしても面白かったのですが、メインの主人公たちの3人があまりキャラクターに魅力が感じられないため、どうにも感情移入できずに観ていてスッキリしない感じになってしまっているのも残念なところかなぁ?


 あと本作は主人公が『殺す側』なので、『タイムループによる緊張感』がいま一つ弱いのも気になるところでしたよ。

 


 総評としましては、『なかなか楽しめるレベルのタイムループものサスペンススリラー映画』って感じの作品ですね。

 

 タイトルの通りに、意外とパンチの効いたブラックな内容の個性的な作品ですので、この手のジャンルが好きであればチェックしてみても良いかもしれません。


 とまれ、Amazonプライムに入っていればタダで観れる映画ですので、プライムのユーザーで気になるようであれば観ておいても損は無いんじゃないでしょうか?

 

映画感想:「七つの大罪クラブ 生贄になった少女たち」(50点/サスペンス)

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■■■「七つの大罪クラブ 生贄になった少女たち」■■■
(50点/サスペンス)


 郊外の厳格なカトリック系の女子高に通うグレースは、彼女を含めた7人の少女たちで学校のスクールカーストの頂点として君臨しており、その奔放な行いから周辺から『七つの大罪』になぞらえた『シンズ(罪)』というニックネームで呼ばれていた。


 そんなある日、大人たちに『シンズ』の活動を密告したメンバーが居る事が判明。
 メンバーのうち一番の優等生のオーブリーが怪しいと考えた彼女たちは、オーブリーが大事にしている『秘密の日記』を盗み見たところ、『シンズ』や学校の生徒たちの悪事や悪口が事細かに記されている事を発見する。


 彼女たちはオーブリーを密告の犯人と考え、湖畔の小屋へと拉致して集団リンチを行うが、隙を見てオーブリーは森の中へと逃走しそのまま行方不明になってしまう。


 そして警察によるオーブリーの捜索が始まった直後に、メンバーの一人のケイティが『口にバラを押し込まれた死体』として発見されるという事件が発生し…

 


 カトリック高校のスクールカースト頂点に君臨する7人の少女たちが、思いがけず連続殺人事件へと巻き込まれていく…という、サスペンススリラー映画。


 一応は『謎解きスリラー』の形態を取っていますが、実際の中身の方は『学園もの』的なテイストが強め『学園生活/スリラー』が半々ぐらいの割合で混ざったような感じの作品ですね。


 『学園生活/スリラー』が半々という説明のとおり、学園ドラマ的な内容の部分が割と強めとなっており、少女たちの奔放な学園生活とそこに現れた『歪み』的な出来事を描いた序盤の部分は、日常的な生活が非日常へと変化していくという学園サスペンスらしい雰囲気も良く出てて割と悪くは無い印象。


 ただ学園テイストの雰囲気映画としては良いのですが、全体的にサスペンスとしてはパンチが弱い感じなんですよね。


 本編のうち学園ドラマ要素の部分がかなり長めで、事件が動き出すのはかなり後半に入ってから。
 それなのに『連続殺人』なんかを題材にしているので、序盤は日常的で冗長すぎますし終盤は事件の進行が駆け足すぎて、どうにもバランスが悪い印象


 サスペンス要素を楽しむ間もなく、次々に事件が起こった後は勝手に謎解きに突入していく感じなので、サスペンスとしてはちょっと盛り上がりに欠けます。


 また人間ドラマにしても、主役である七人の少女たちのキャラがシッカリと掘り下げられているのは良い感じのですが、お話的には特に深い内容も無くてドラマとして見るとそこまで面白い訳でも無いのは困りもの。


 ラストの謎解きに関しても、『納得のいく展開』ではあるのですがあまり捻りも無くて、特に面白味もないのでパンチに欠けるんですよね…
 扱う題材からして、もうちょっと毒が強い内容でも良かったんじゃないかなぁ?

 


 総評としましては、『全てが及第点の学園生活/スリラー映画』みたいな感じの作品ですね。


 総じて悪くない出来なのですが、悪くはないもののいま一つ面白味に欠ける作品というのが正直なところですよ。


 気になるのであれば観るのを止める事は無いですが、敢えてオススメするほどの要素も無いので『まあお好みで…』といった感じの一本だと思います。