NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「野良人間 獣に育てられた子どもたち」(40点/サスペンス)

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■■■「野良人間 獣に育てられた子どもたち」■■■
(40点/サスペンス)


 1987年、メキシコ南西部のオアハカ郊外の人里離れた山中の民家で火災が起こり、元修道僧であるフアンと身元不明の3人の子供の焼死体が発見されるという事件が発生する。


 そして現代。
 TV局の映像ライブラリーからこの事件の映像を発見し、フアンが『ジャングルで発見された身元不明の野生児』を引き取って育てていたと知ったスタッフたちは、当時のフアンの知人たちが残していた記録映像や証言を元に『野生児の謎』と、当時『どのような事件が彼らの周りで起こっていたのか』を突き止めるために調査を開始するが、彼らはやがて恐るべき真相へと辿りつくことになるのだった…

 


 メキシコの山間部で発見された、言葉の通じない『野生児』(動物に育てられた子供)と『彼らを引き取って育てようとした修道僧』のたどる運命を描いた、モキュメンタリー風味のサスペンススリラー映画。


 「ブレア・ウィッチ」等でお馴染みとなった、いわゆるファウンド・フッテージ(発見されたフィルム)を題材とした『なんちゃってドキュメンタリー』系の映画なのですが、今回は心霊やUMAではなく『野生児』を題材にした作品という感じです。


 確かに『野生児』を題材としたファウンド・フッテージ映画ってお目にかかった事が無いので、『よくまあ色々と新しいアイデアを思いつくなあ…』というのが正直な感想ですね。


 お話としては、かつての『家屋全焼事件』の謎を追いつつ、元修道僧の男が『いかにして野生児たちを預かるようになったのか?』また『彼らを取り巻く周辺でどのような現象が起こっていたのか?』といった事を、当時の記録映像や関係者の証言を元に紐解いていく…みたいな感じの展開。


 ノリとしては『リアル系のモキュメンタリー作品』となっており、実際に過去にあった『野生児』の事件の情報を挟んでみたり、主人公の修道僧が割と『特殊な親』の元で育てられた事が切っ掛けとなっているといった感じの設定が語られたり、メキシコの閉鎖的な田舎町の雰囲気やら時代背景やらが妙にリアルだったり…

 と言った感じにリアリティを出そうと頑張っており、『もしかしたら現実にあった事件かも?』と思わせるような感じの話に仕上がっているのは良いですね。


 ただ世界観やプロットが矢鱈とリアルな割には、素人がハンディカメラで撮ったはずの映像が妙にアングルやライティングにこだわっていて、非常に見やすい感じの映像に仕上がっているのはご愛敬。(笑)
 (まあリアリティを追求して、手ブレしまくりのむちゃくちゃ見辛い映像で撮られてもそれはそれで困るんですが…)


 また『野生児』が題材といっても、単純に『狂暴な野生児』の恐怖を描いたような内容ではなくて、『野生児』たちに対する主人公の『宗教的・社会的な価値観』や『当時の社会的背景』なんかを、上手い具合にサスペンス要素に盛り込んでいるのも悪くありません。


 ただ設定はリアルで凝っているのですが、本作がサスペンス映画として面白いかと言われると、そこは微妙なところなのが困りもの。


 そもそも『野生児を引き取って育てる』という行為そのものが、リアルに映像として描かれてもたいして面白くなく、サイコサスペンス的なノリがメインとなっているとはいいつつも、基本的には『大きな事件も起こらないままに淡々とお話が進んでいくシーン』が殆どのため、観ていてどうにも退屈です。


 『野生児の秘密』に関しても作中で解明されていない部分が多くて、なんか観ていてモヤモヤしますし、オチに関しても『だから何なんだよ?』という感じであまりスッキリしません。


 リアルテイストを追求したかったのかもしれませんが、全体的に地味すぎるせいで微妙になっている感じなので、もうちょっとドラマチックだったり派手な要素があっても良かったんじゃないかなぁ?


 モキュメンタリーとしての雰囲気は悪くなかっただけに、どうにも残念な部分が目に付いてしまう作品でしたよ…

 


 総評としましては、雰囲気やプロットは面白いものの『地味で盛り上がりに欠けるモキュメンタリー系のサスペンスホラー映画』って感じの作品ですね。


 リアル系の雰囲気とか背景の掘り下げやら悪くない部分も結構あったので、リアル寄りのモキュメンタリー映画が好きな人とかであればそこそこ楽しめる作品かもしれません。


 とまれ『野生児を引き取って育てるドキュメンタリー』という設定自体が珍しいジャンルだと思いますので、そういう設定に興味がある人とかであればチェックしておいても損は無い一本ではないかと思いますよ。

 

映画感想:「ジュラシック・ツアーズ」(40点/アクション)

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■■■「ジュラシック・ツアーズ」■■■
(40点/アクション)


 近未来、恐竜が生き残る自然保護区では、全世界から集まった大富豪の好事家たちによる12人のハンターが保護区に侵入して恐竜狩りを行う『ジュラシック・ハント』と呼ばれるツアーが極秘裏に開催されていた。


 政府の捜査官であるパーカーは、違法ツアーの内容を調査するために極秘裏にツアーへと潜入して、その内容を小型カメラで録画しようとするが、彼女の正体に気づいた主催者のリンドンは彼女を亡き者とするために罠を張り巡らせるのだった…

 


 違法で行われる『恐竜狩り』のツアーに参加した潜入捜査官の女性が、恐竜の襲撃や運営者の罠から生き延びるために戦う…という、恐竜パニックものアクションホラー映画。


 一応、『恐竜狩りを題材としたサバイバルアクション』っぽい内容なのですが、色んな意味で『非常にアバウトで適当に作られた映画』という印象。


 何がテキトーかというと、まあとにかく設定が全てにおいて物凄い適当。


 主人公たちは『恐竜が生息する自然保護区』で極秘裏に違法の恐竜狩りを行うツアーの参加者という感じなのですが、そもそも『何で恐竜が生き残っているのか』の説明が一切なし。


 この世界が、現在の地球とは別の『絶滅寸前の恐竜が生息するパラレルワールド的な世界』なのか、もしくは『何らかの遺伝子操作によって恐竜が蘇った世界』なのか…といった背景の説明が無いままに、いきなり『恐竜狩りツアー』が開催されるので、最初から説明不足すぎて何だかモヤモヤしてしまいます。
 (もしかしたら実は前作があって、なんかの続編という位置づけなのかしらん?)


 ツアーの参加者も『恐竜狩りを極秘に楽しみたい大富豪』みたいな設定の割には、中東や湾岸戦争の帰還兵とかが何人も居て設定がブレまくり…(『金持ちが用心棒として帰還兵を雇った』とかならともかく、普通の帰還兵に自主的に参加できるような経済力があるのか?)


 恐竜を繁殖させて密猟させてる『悪の組織』っぽいのも活動が物凄い大雑把で、参加者を監視するための監視ドローンが何故か1機しかなくて撃墜されたら監視が行えなくなったり組織のボスが恐竜が大量に徘徊する保護区に護衛を一人だけつけてノコノコと乗り込んできたりと、行動がマヌケすぎ…


 まあ、B級パニック映画にそこまでリアリティとかを求めるつもりも無いのですが、割とマジメそうなストーリーの作品でここまで設定が適当すぎると、脳内で整合性を取るのも限度があるので、もう少しマジメにやっていただきたいところです。(最初からバカ映画みたいなノリならば逆に気にならないんですが…)


 ちなみに設定以外の部分が良く出来ているかと言われると、その部分に関してもぶっちゃけ微妙。


 恐竜は『別の映画やCG素材の使いまわし』っぽい雰囲気が漂う出来で、登場する恐竜の種類も完全に「ジュラシック・パーク」の二番煎じで、面白味が感じられないのが残念なところ。
 CGも浮きまくりのせいで、襲撃シーンにもいま一つ迫力がありません。(まあでもキチンと人間との絡みがある辺りは、低予算映画としては頑張ってる方かな?)


 とりあえず全体的にテンポが良いのは評価できますが、テンポが良い割にはアクション描写とかも全体的に地味でどうにも盛り上がりに欠けるんですよね。


 ラストの『恐竜大集合』みたいなシーンはちょっとだけ迫力がありますで、もうちょっと見せ場になるシーンが多ければなぁ…という感じ。


 あまり『何の解決もしてなさそうなオチ』も微妙ですし、どうにも全体的にスッキリしないパニック映画でしたよ。
 (そもそも『恐竜自然保護区』の設定がハッキリしてないので、どうなれば捜査官である主人公の勝利なのかが釈然としないですしね…)

 


 総評としましては、『微妙でモヤっとした気分になる恐竜パニック映画』というのが正直なところ。


 低予算の割には頑張ってる部分もありますし、観るのが苦痛なほどツマんない内容ではないのですが、敢えて本作を推すような要素は無いかなぁ?


 恐竜パニック映画なら他にも同じようなアイデアの作品がいっぱい作られていますしネタとしても弱い作品なので、よほど気になっているとかでなければ普通にスルーしてしまっても問題のない一本だと思いますよ。

 

映画感想:「ザ・スイッチ」(65点/スラッシャー:オススメ)

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■■■「ザ・スイッチ」■■■
(65点/スラッシャー:オススメ)


 地味で真面目な性格の女子高生のミリーは、学園祭の前日の帰り道に、1970年代からこの街に潜伏していると噂される伝説の殺人鬼・ブッチャーに襲われる。


 奇妙な『古代の呪術の短剣』のようなもので刺された彼女は、なんとか軽傷で殺人鬼から逃れる事に成功するものの、翌日に目を覚ますと自分が中年男性となっており、『自分を襲った殺人鬼』と肉体が入れ替わってしまっている事に気づく。


 彼女は親友たちの助けで、『呪術の短剣』の魔力によって肉体が入れ替わってしまった事を突き止めるが、24時間以内に元の身体に戻らないと永遠に元の姿に戻れないという事が判明。


 時を同じくしてミリーの姿になった殺人鬼は、学園祭に乗じて生徒たちを虐殺する計画を進めつつあった…

 


 殺人鬼と肉体が入れ替わってしまった女子高生が、なんとかして元の身体を取り戻そうとする…という、オカルト風味のスラッシャーホラー映画。


 近年の青春スラッシャーホラー映画としては個人的に最高傑作だと思っている「ハッピー・デス・デイ」を撮ったクリストファー・ランドン監督による新作映画ですが、今回も期待に違わず非常に良く出来た作品です。


 殺人鬼と女子高生の肉体が入れ替わるという、「もしかして...」「私たち...」「入れ替わってる~!?」みたいな感じの、まるでハリウッド版「君の名は。」みたいな設定のスラッシャーホラー映画なのですが、「ハッピー・デス・デイ」も割とアニメっぽい設定の作品だったので、実際に意外とその辺から着想を得ているのかも?


 ただ設定としては、古代魔術がキーになっていたり、肉体を取り戻すのに時間制限があったりする辺り、どちらかというと「チャイルドプレイ」とかをオマージュしてる雰囲気も受ける作品ですね。


 個性的な設定の作品ですが、実際の中身の方も個性的な設定を余すことなく活用している辺りは流石という印象。


 とにかく『殺人鬼の肉体に入り込んだ女子高生』の反応やら、友達が急にオッサンになった友人とのやり取りなんかが非常に面白くて、あらゆる場面で矢鱈と笑わせてくれます。


 殺人鬼役の俳優さんの『妙に女子高生っぽい動き』やら、友人たちとのセリフ回しやらが絶妙で、シリアスなシーンでも笑いが思わずこみあげてくるのはズルいです。


 特に『憧れの男子とのロマンス』の場面では、あまりの『酷い内容(誉め言葉)』に爆笑してしましましたよ。


 だからといって、単なるドタバタ系のネタ映画かといえばそうでもなく、主人公のキャラクターや心情、家庭環境なんかもかなりシッカリと掘り下げられていたり、友人たちのキャラも割と良く立っていたりして、ドラマ的な部分も意外とキチンと作られているのは好感触。


 また、青春スラッシャーホラーとしては『学園祭の会場に殺人鬼が入り込む』という割と王道な展開で、笑いを交えながらも非常にスピーディでテンポの良いスラッシャーホラー作品になっているのは良い感じです。


 ただ全体的に非常に面白い作品なのですが、残念な部分があるとしたら『殺人鬼の暴れ回るシーン』が意外と少ない事。


 肉体の交換によって『屈強なオッサン』になった主人公に対して、殺人鬼の方は『ひ弱な女子高生の肉体』になってしまったせいでパワーダウンしてしまったという背景はあるのですが、お話のテンポの良さの濃さの割には殺害シーンが意外と少な目でちょっと物足りなさがあるんですよね。


 そのせいで、殺人鬼側のキャラがいま一つ立っていない部分が感じられ、ちょっとだけパンチの弱さを感じてしまいましたよ。


 肉体が貧弱になった部分は、「チャイルドプレイ」のチャッキーのように『肉体が貧弱になった部分は創意工夫で補って人間を殺しまくる』ぐらいのイキオイが欲しかったところです。


 あと終盤の展開は割と熱くて良かったのですが、オチに関しては続編とかにネタを引っ張れるような『もうひと捻り』があっても良かったかも?

 


 総評としましては、なかなか良く出来た『佳作クラスの青春スラッシャーホラー映画』といった感じの作品です。


 『肉体の入れ替わり』という個性的な設定が気になっている人や、『青春スラッシャーホラー映画』というジャンルが好きな人であれば、間違いなく観ておいても損は無い一本だと思いますよ。


 君の名は。」的なネタ映画としてもチェックしておいても良いと思いますので、話のネタになるような作品を求めている人にもオススメできる映画ではないでしょうか?

 

映画感想:「スレイヤー 7日目の煉獄」(45点/アクション)

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■■■「スレイヤー 7日目の煉獄」■■■
(45点/アクション)


 ヴァチカンで悪魔祓いの教育課程を優秀な成績で修了した新米神父のダニエルは、実地訓練として過去に壮絶な悪魔祓いを経験した事のある、ベテラン神父のピーターの元で指導を受けることとなる。


 ピーターは彼を悪魔祓いの現場に連れて行って、次々と生の悪魔祓いを体験させて経験を積ませるが、そんな最中、悪魔軍団の大規模な侵攻が迫りつつあるというウワサが囁かれていた。


 そんなある日、強力な悪魔が取り憑いていると目される、『一家惨殺事件を起こした少年』であるチャーリーの悪魔祓いを行う事となるが、そこで彼らはピーターの過去にまつわる驚くべき秘密を知ることとなり…

 


 新米神父とベテラン神父の2人のエクソシストが、悪魔たち恐るべき陰謀へと戦いを挑む…という、悪魔祓いもののオカルトサスペンス映画。


 「スレイヤー」とかって、いかにもアクション映画っぽいタイトルが付いていますが、派手なタイトルの割には意外と地味な内容のお話です。


 一応、新米とベテラン神父の二人組の活躍を描いた『バディもの』っぽい設定なのですが、雰囲気の割にはバディ要素もそこまで強くなくて、上記の『派手なタイトル』も含めて何かモヤっとする感じの作品という印象…


 お話としては『新米神父が「過去に強力な悪魔を相手に壮絶な悪魔祓い」を行った経験があるベテラン神父の元に訓練のために配属されるんだけど、現場を経験していくうちにベテラン神父が過去に対峙した事のある「強力な悪魔」と再び対峙する事になり…』みたいな感じのストーリー。


 プロットだけ聞くと、バディものとしては割とありがちな感じでそこそこ面白そうなのですが、なんというかキャラの立て方が微妙でいま一つ盛り上がらないんですよ…


 ベテラン神父と新米神父の二人の関係にあんまり『バディ』感が無くて、加えてガイ・ピアースの演じるベテラン神父が良いキャラ設定の割には活躍シーンが殆ど無くて、どうにも影が薄いのがどうにも気になります。


 逆に主人公の新米神父は、キャラがあまり立っていない割には出番が多くて、この辺がお話の盛り上がりの無さに繋がっている印象。


 ただ、そこそこ予算をかけて作られているっぽくて、悪魔祓いのシーンなんかは割と派手ですし、中盤の警察署(?)での悪魔の襲撃のシーンなんかはそこそこ盛り上がって良い感じ。


 作品のテンポも悪くないのですが、何か全体的に緊張感が薄くて、中盤が盛り上がる割には終盤の最後の戦いにかけて盛りさがっていく感じの構成なのも微妙ですし、ラストのどんでん返し的な展開も本作の面白さに繋がっているかと言われると悩ましいところ…


 サブタイトルの『7日目の煉獄』も意味が分からない(煉獄要素とかどこにあったの?)ですし、ストーリーやキャラクターを含めて何だか退屈な部分が目に付く作品でしたよ。

 


 総評としましては、『どうにも盛り上がりに欠けるアクション系のオカルトサスペンス映画』って感じの作品です。


 割とシッカリと作られているので観ていて苦痛なほどでは無いのですが、正直なところ全体的に退屈な映画という感じでしたよ。


 気になるようであれな敢えて観るのを止める事はないですが、特にオススメするような内容でもないので、まあ『お好みで…』って感じでしょうか?

 

映画感想:「ドリーム・セックスバトル」(50点/サスペンス)

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■■■「ドリーム・セックスバトル」■■■
(50点/サスペンス)


 モデルとしてハリウッドで働く引きこもり気味の女性ジルは、友人で同居人のジェニファーと一緒にパーティに出かけても男性から相手にされずに、次々と奔放に男性たちと関係を持つ友人を横目に悶々とした日々を過ごしていた。


 仕事も上手くいかず家族の関係も良くない彼女は、そのストレスのせいで過食症になっていくが、自分の想い寄せる男性をジニファーに寝取られたことを切っ掛けに、徐々に狂気へと駆られていくのだった…

 


 ハリウッドで働く気弱な女性が、同居人の奔放なセックスや仕事のストレスから狂気に陥っていく…という感じのサイコスリラー映画。


 「ドリーム・セックスバトル」って、エロゲーとかエロビデオかよ?』みたいなタイトルが付いていますが、当然ながら本編の内容の方はセックスで闘うような作品ではありません。


 一応、中盤あたりで精神を病んだ主人公が見る夢のなかで『ルームメイトがモデルの審査会場でセックスバトルする』みたいなシーンがあって、確かにインパクトのあるメタファー的なシーンではあるのですが流石にタイトルにするほど重要なファクターじゃないだろ…っていう。(笑)


 ちなみに原題は「EXCESS FLESH」で、そのまま訳すなら『贅肉』とか『過剰(過激)な肉欲』みたいな感じのタイトルですかね?


 お話としては、『ハリウッドで働くとある女性が、毎日のように男を連れ込むルームメイトの行動やら、ぽっちゃり気味の体型へのコンプレックスやら仕事のストレスやらのせいで徐々に精神を病んでいき、ある事件を切っ掛けに遂に狂気へと駆られていく』みたいな感じの展開。


 序盤から、割とシッカリと主人公のキャラクターが掘り下げられていて、『ルームメイトとの関係性』やら『仕事』やら『家庭環境』やらのストレスで徐々に精神を病んでいく姿が非常に丁寧に描かれており、サイコサスペンス映画としてはなかなか悪くない印象。


 また性欲やストレスのメタファーとして『矢鱈と汚らしい感じの食事シーン』がひんぱんに描かれるのも、なかなか印象的です。


 主人公の精神状態やらが丁寧に掘り下げられて描かれていることから、てっきり『破滅型の主人公が自滅していく話』を描くのかと思いきや、中盤からは一気に主人公がサイコパスっぽくなって、唐突にサイコホラーっぽい展開の突入していくのは意外性があって面白いですね。


 キャラの掘り下げがシッカリしていることもあって、中盤以降の『主人公の妄想か現実か分からないような描写』も説得力があって迫力がありますし、適度な電波っぷりもなかなか悪くない印象。


 ただ、残念なことにお話が動き出しての中盤以降の展開が、全体的に冗長でややテンポが悪い感じなのは困りもの。


 確かに過度のストレスと、友人への嫉妬と独占欲とコンプレックスがないまぜになって狂気へと走っていく様子は良く出来ているのですが、狂気の描写が延々と描かれるだけでお話がなかなか進展しないため、テンポが悪く感じてちょっとダレてしまうんですよね。


 また、主人公の狂気からの行動の最終的な『着地点』がハッキリしないせいで、観ていてどうにもモヤモヤしてしまうのも難点かなぁ…


 主人公のサイコ描写や心理描写は非常に良く出来ているので、もう少しお話にメリハリがあれば更に良い感じになったかも?


 あと、ラストのオチが何が言いたいのか釈然としなかったのですが、あのラストはどう解釈すればいいんだろう?(というか、主人公が作ってた『薬』って結局なんだったの…幻覚剤か何か?)


 ちなみに、ホラーとしての残虐描写とかはたいした事はないのですが、物を食べる描写や食べ物の描写が物凄く汚くて(ゲロとか吐くシーンが矢鱈と出てくる)、クチャラーとかが苦手な人には普通のホラー映画よりも辛いかもしれないので、要注意かもしれません。

 


 総評としましては、タイトルが色物っぽい割には『意外ととシッカリと作られたサイコスリラー系のサスペンスホラー映画』って感じの作品です。


 主人公がストレスから狂気に駆られていく様子なんかは非常にシッカリと描かれていますので、そういった精神が追い詰められていく系のサイコスリラーとかが好きであれば、まあまあ楽しめる作品かも?


 敢えて推す程の映画かと言われると微妙なところですが、Amazonプライム会員なら無料で観れる作品ですので、気になるようであればチェックしてみても良いかもしれませんよ。

映画感想:「蛇王 キング・オブ・スネーク」(40点/モンスター)

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■■■「蛇王 キング・オブ・スネーク」■■■
(40点/モンスター)


 各地で内戦が続く近代の軍閥時代の中国。
 女性軍医の静蘭は、馬少陽の率いる軍閥と共に夜行列車で移動を行っていた。


 しかし、彼女の故郷である永安村付近を通りかかった際に、どこからともなく現れた毒蛇の大群と信じられないほどの巨大な『双頭の大蛇』が列車を襲撃。


 万事休すのところを、偶然列車に同乗していた蛇捕り師の木生の活躍によって襲撃を逃れることに成功するが、負傷者の治療のために永安村へと向かったところ、村も既に蛇の群れの襲撃によって壊滅状態。


 彼らは、軍閥と村人による乱開発の影響で、自然が破壊された事により怒った蛇たちが、人間に対して復讐を開始した事を知るが…

 


 巨大な双頭の大蛇の『蛇王』と毒蛇の群れが村を襲い、村を救うために軍医と蛇捕りの青年が立ち上がる…という、中国製の大蛇ものモンスターホラー映画。


 1900年初頭の内乱時代の中国を舞台としたモンスター映画ですが、ノリとしてはやや伝奇ものっぽい雰囲気の漂う作品ですね。


 お話としては『毒蛇の群れと双頭の大蛇によって村が襲われた事によって、半壊した村で毒蛇に噛まれた人々を救うために、解毒剤である「蛇腥花」を手に入れるため、村で忌み嫌われていた「蛇捕り」の青年が立ち上がる』みたいな感じの展開で、一応モンスターホラーとは分類していますが、どちらかというとジュブナイル冒険もの』に近い内容といった感じ。


 本作の特徴としては、とにかく『展開が早くてテンポが速いこと』かな?


 開幕10分で特にコレといった説明もないままに、いきなり毒蛇の群れや双頭の大蛇が主人公たちを襲撃してきて、大蛇も出し惜しみが無いうえに『怪獣』みたいなレベルの巨大さで、ビジュアル的には見どころが多いです。


 また最初の大蛇の襲撃のあと、主人公たちが解毒剤である希少な花を探すための探索の旅に出発する(「アナコンダ」のオマージュ?)のですが、旅先でも事あるごとに様々な危険生物やら困難が主人公たちを次々と襲うという展開の連発で、とにかく『視聴者を飽きさせないようにしよう』という感じの作りはなかなかに良い感じ。


 というか大蛇や毒蛇だけじゃなくて、毒グモや吸血コウモリまで特に理由もなく群れを成して人間に襲い掛かってきて人間を食料にするとか…中国大陸怖すぎだろ!!


 ただテンポ良くいろんな要素が詰め込まれているからといって、本作が映画として面白いかと言われると微妙なところ…


 とにかく主人公とヒロイン以外のキャラクターが、ひたすらウザいんですよ。


 この手の映画で、主人公たちを持ち上げるために脇役が『無能キャラ』として描かれるのは良くある事で、本作でも軍閥のメンバーとかは無能集団みたいに扱われているのですが、無能なうえに性格の悪い役立たずどもばかりでちょっと不快になるレベル。


 中国映画って、割とこういった『ウザいキャラ』がコメディ要員として描かれる事が多いのですが、本作はウザいキャラが『主人公以外のほぼ全員』なうえに、キャラ付けが前時代的すぎて観ていて辛くなってしまいましたよ…


 またアクションシーンやら怪物の襲撃シーンとかも多い割には、いま一つ見せ方に工夫が無くてどうにも盛り上がりに欠けるんですよね。

 色んな生き物に次々と人間を襲わせるなら、もっと暴走して派手で無茶苦茶なノリ(そんな生き物が人間を襲うか?みたいなの)にしても良かった気がします。


 ラストの怪物の退治の方法も妙にアッサリしてますし、『全体的な構成』とかは悪くないものの、要所要所の出来やキャラクターが微妙なせいでトータルでイマイチになってしまっている…という、なんとも残念な感じの作品でした。

 


 総評としましては、意外と気合が入って作られてる割には『いま一つ盛り上がりに欠けるモンスターホラー映画』というのが正直な感想です。


 中国製のモンスターホラー映画という事で、ジャンル的に気になるのであれば観るのを止める事はないですが、個人的にはそこまでオススメはしないかなぁ?


 特撮とかCGとか気合の入っている部分も多くて出来そのものは悪くないのですが、どうにも自分のセンスには合わない感じの作品でしたよ。

 

映画感想:「スプリー」(65点/サスペンス:オススメ)

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■■■「スプリー」■■■
(65点/サスペンス:オススメ)


 母親と二人暮らしの若者であるカート・カンクルは、ソーシャルメディアで有名になる事を夢見て数年間に渡って動画投稿を続けていたが、全く人気の無い泡沫配信者として日々を過ごしていた。


 そんなある日、彼は世間の注目を集めるために「レッスン」という動画配信の企画を考案。
 それは、彼のライドシェア(相乗り式の個人タクシー)の乗客を毒入りのミネラルウォーターで殺害し、その様子をリアルに配信するという過激なものだった…


 しかし、実際に計画どおりに乗客の殺害を配信するも、視聴者からは『フェイクだ』と信じて貰えず、あいかわらずアクセス数は低迷。


 殺し方が地味なのが原因だと考えた彼は、視聴者にウケるために3人のパリピたちを派手な方法で殺害するが、それでも相変わらず注目を集める事が出来ずに、彼の活動は更に過激に狂気に駆られたものと化していくのだった…

 


 ライドシェア(乗合タクシー)の仕事をする動画配信者の主人公が世間の注目を集めるっために乗客を殺害するもバズらせる事が出来ずに、次々と更に過激な行動を取るようになっていく…という、サスペンススリラー映画。


 殺人鬼の車に搭載された『車載カメラの映像』や『手持ちのスマホの映像』で構成された、フェイクドキュメンタリー風味のサイコスリラー作品なのですが、これがなかなかに良く出来たサスペンス映画となっております。


 お話としては、『動画配信者の主人公が「リアルな殺人動画」を配信するんだけど、内容が地味すぎるうえにフェイク映像を疑われて全く人気が出ない事から、徐々に狂気に駆られて過激な事件を起こすようになっていく』みたいな展開。


 プロットだけ聞くと最近の映画としては割とありふれた感じの内容であまり面白味が無さそうなのですが、『軽率な主人公の行動』やら『殺人動画を観たネット上の反応』等が妙にリアリティがあって良く出来ているんですよね。


 実際に動画配信とかを見た事がある人だと分かると思うのですが、『ネットの動画画面の向こうの出来事』って、TVの中継とか以上に現実感が無くてリアルな出来事と感じられない印象を受けがちなので、もし現実に同じような事件があったとしても『自分もフェイクだと思ってスルーしてしまいそうな印象』なのが逆に面白いです。


 加えて、殺人動画を配信する際に全く面白味がなくて『観ていてツマんない動画』を配信する主人公のセンスの無さも妙にリアルですし、主人公に対して辛辣で素っ気ない対応をするインフルエンサー(有名動画配信者)の態度もいかにもという感じ。


 主人公、インフルエンサー、視聴者の全てが妙に軽薄で、『薄っぺらい繋がりの現代のSNS社会の姿』を比喩して描いている感じなのは、風刺が効いていて良い感じ。


 ただただ『有名になりたい』という承認欲求を満たすためだけにどんどん過激になっていく主人公の行動と、その行動の結果によって連鎖反応的に周囲が巻き込まれてカオスな状況に発展していくという終盤の展開も先が読めなくて、なかなか良く練られています。


 ラストのオチの落としどころもなかなかブラックな内容で皮肉が良く効いていますし、ブラックユーモア系のサスペンスとしては全体的に非常に良く出来た作品という印象。


 ただリアリティがあって面白いのですが、リアル故に全体的に緊張感が薄めなところや、逆に『動画配信やネットに馴染みのない人』にはあまりリアリティが感じられずに、やや面白さが伝わらないかもしれないのは、ちょっと気になるところかなぁ?

 


 総評としましては、なかなか良く出来た『殺人動画配信系のサスペンススリラー映画』といった感じ。


 『殺人動画配信もの』の作品って割と沢山作られている印象ですが、お話の凝り方も風刺の効かせ方も共にかなり良く出来た作品だと思うので、そういうジャンルが好きな人ならオススメ出来る一本かと…


 特殊なシチュエーションは抜きにしてもサイコサスペンスとしても普通に面白い内容ですので、気になるならばチェックしておいて損は無いと思いますよ。