■■■「宇宙戦争」■■■
(65点/SFパニック)
ニュージャージーのとある街で働く港湾作業員のレイは、ある休日に、離婚した妻と子供たちに面会し、1日だけ子供たちを自分の下で預かる事となる。<br>
しかし、子供たちを自宅へと案内した矢先に、とてつもなく激しい落雷が近所のストリートを直撃。
何事かと現場を訪れて観ると、落雷跡の地下から突如として3本脚の巨大な歩行戦車が出現し、怪光線を発射しつつ街を破壊し始めたのだった。
彼らはなんとか街を脱出し、妻の安否を確かめる為に一路ボストンを目指すが…
H・G・ウェルズ原作の古典SFとしてあまりにも有名な、SFパニック小説のスピルバーグによる映画化作品。
流石にスピルバーグらしく全体的に非常に映像センスが良く、火星人の歩行戦車である『トライポッド』の不気味な造型や襲撃のシーンの迫力は相当な物ですし、お得意の追跡劇的な展開は健在で、全体にテンポ良く楽しめる作品です。
「ジュラシックパーク」が公開された時に、ヴェロキラプトルの襲撃シーンを見て『これはSFじゃなくてショッカーホラーだ』なんて揶揄された事もありましたが、「宇宙戦争」も中盤以降の展開はそのノリが顕著で、まさにホラーそのもの。
レッドウィードが大量に繁茂してるシーンや、トライポッドが人間を攫って行くシーンなんかは相当怖いです。
ただ、街の破壊シーンは盛大なんですが、トライポッドのビームを浴びた人間は、一瞬にして塵になって消滅してしまうため、あまり凄惨さが感じられない『キレイな戦争』になってしまっているのは惜しい所。
まあ、コレはリメイクのベースとなる前作でも同様の表現でしたが…
ストーリーに関しては、あまりにも有名な作品ですので今更言わずもがなといった感じでしたが、いかんせん100年以上前に書かれたお話ですので、どうにも古臭い印象を受ける部分が多いのも事実。
また、宇宙人の侵略という世界規模の大事件をアクマで一個人の視点から捉えているため、映像の派手さに対して、どうにもスケール的にこじんまりとした内容に感じられてしまうのが、ちょっと辛いところでしょう。
件のオチに関しては原作がベースとなっている為、あまり細かいツッコミは入れませんが、やはり宇宙人襲撃と破壊の際の破壊の派手さに対して、ラストのオチで得られるカタルシスの少なさがこの作品の地味さを際立たせてしまっている所があるような気がします。
また、一応『家族愛』がテーマとなっているっぽいのですが、序盤でのトム・クルーズの演じる主人公のヘタレな父親っぷりが、どうにも鼻に付いてしまうシーンが多く、終盤で良い父親っぷりを見せるのかと思いきや、たいした見せ場も無いまま淡々と終わってしまい、結局何が描きたかったのか良く分からなかったです。
娘役のダコタ・ファニングとか出ずっぱりの割に、殆ど印象に残らない感じなので、もうちょっと見せ場があっても良かったかなぁ?
総評としましては、大げさな宣伝の割にはどうにも全体的に地味な印象を受ける作品だなぁ…というのが正直な所。
映像は凄いんだけど、ストーリーがそれに追いついてないというか…観終わった後に派手な破壊のシーン以外は何も印象に残らないのですよね。
劇場の大画面と大音響で観るには良い作品かもしれませんが、自宅のTVで観ると…『えっ、そんなもんなの?』って感じで肩透かしを食らうかもしれませんので、見る際には可能ならホームシアターぐらいの、なるべく良い視聴環境で観るべきかも?
今ひとつ娯楽作品という印象からは遠い内容ですが、ホラー時代のスピルバーグ映画(「激突」とか「ジョーズ」とか)が好きならば、それなりに楽しめる作品でしょう。
そうでなければ、ちょっと微妙な映画かも?
しかし、これを観ると「ID:4」が「宇宙戦争」を思いっきり意識して作られた作品だと言うのが良く分かりますねぇ。
あと細かいツッコミなんですが、最初にトライポッドが姿を現すときに、電磁パルスの影響で周辺の電気製品が全て破壊されて、車も全く動かなくなってしまうというシーンが描かれるのですが…
登場する群集の中に、何故かその場面をハンディカムで撮影してる人がいるんですよね。
思わず、『何でソレは壊れてないねん?』と素でツッコミそうになったのは俺だけですか?