■■■「ザ・プロジェクト 瞬・間・移・動」■■■
(65点/サスペンス)
(65点/サスペンス)
大学で量子物理学を研究する学生のアナは、ある日、実験中に『電子が消滅する』という奇妙な現象を発見。
実験の検証の結果、ワームホールによって『物質を転送する』という実験に成功する。
彼女は世紀の大発見を確実なものとし特許を取得するため、恋人のネイトと友人のリブと共に大学からサーバを盗み出して、秘密の実験室で大規模な実験を継続。
生物実験も含めた実験の後に研究の大々的な発表を計画するが、大学にサーバの盗難がバレそうになった事から実験の実施を急がざるを得なくなり、アナが自らを被験者として人体実験を行う事となる。
実験は無事に成功するが、彼女はその実験以降に自分が『新たな記憶』を持てなくなっている事に気づき、更には彼女の実験を狙ったと思われる何者かの襲撃を受けた事を継起に、被害妄想に囚われるようになっていき…
物質転送の実験の被験者になった女性が『新たな記憶』を持てなくなるという謎の後遺症に見舞われ、その混乱によって妄想に囚われていく…という感じのSFサスペンス風スリラー映画。
いわゆる『テレポーテーション』を題材にしたSFサスペンス映画で、『新たな記憶(短期記憶)を構築できなくなった主人公の身に、いったい何が起こったのか』の謎を追っていくという感じの、謎解きミステリー的な要素が強めの内容ですね。
ちなみに一応はSFの体裁を取っているものの、理論やら科学考証なんかはかなりいい加減な感じでアクマでも『SF風味』のレベルなのですが、このSFの『風味付け』が非常に良く出来ており『なんとなく本格的なSFを観てる気分にさせてくれる』辺りは非常に良く出来ています。
(SF以前に、そもそも物質転送装置の特許を取るための実験で『人体実験』をする必要とか全く無いだろって言う…)
映像作品における、雰囲気づくりとか演出の重要さを再認識させられてしまいました。
お話としては、前述のとおり『実験以降に『新たな記憶』を構築できなくなった主人公が、謎の人物の襲撃を受けたり、恋人と友人の裏切りを疑ったりして、徐々に疑心暗鬼に陥っていく』みたいな感じの展開。
ややネタバレになってしまいますが、いわゆる『叙述トリック』を題材としたストーリーで、主人公が「メメント」の主人公のように『過去の出来事をメモしながら謎を追っていく』のですが、やはり視聴者が主人公と同じ目線に立って謎を追っていけるという感じの構成は面白いです。
お話そのものには、サスペンスとしてもSFとしても派手さは無いのですが、物語の構成が非常にシッカリとしておりミステリーらしい伏線やらミスリードの仕込み方なんかも上手くて、先の展開が非常に気になるため派手な要素がなくとも退屈しないで観れるのは、なかなか良い感じです。
ただ、細かい部分を言うとSF設定と同様にミステリーのストーリーの方も割とツッコミどころが満載で、そういうところが気になる人だと色々と気になってしまう内容かも?
でも、『シッカリと描くべき部分』と『適当に力を抜いて描く部分』の取捨選択が上手く、そういったことをあまり感じさせない雰囲気づくりが非常に良く出来ているんですよね。
ちょっと後を引く感じのオチの落としどころも良い感じですし、割と『低予算SFサスペンス』のお手本になるような作品ではないかと思いましたよ。
総評としましては、低予算ながらも『なかなか良くまとまったSF風味のサスペンス映画』って感じの作品でした。
低予算故に派手さは無いですし、そこまで強く推すほどの要素もないのですが、コンパクトに良くまとまった普通に楽しめる内容なので、特に期待せずに観ればそこそこ得をした気分になれるような作品ではないかと…
SFサスペンスとかが好きで、予告とか設定とかが気になっているようであればチェックしてみても良い一本かもしれませんよ。