■■■「クロール -凶暴領域-」■■■
(65点/生物パニック:オススメ)
(65点/生物パニック:オススメ)
ある日、巨大なハリケーンがフロリダを直撃。
大学の競泳選手のヘイリーは、避難指示の出ている実家に住む父親と連絡が取れなくなったことから、父の様子を確認するために実家に向かう事となる。
実家に携帯電話はあるものの姿が見当たらない事から屋内を探したところ、地下室に向かったらしき痕跡を発見した彼女は自らも地下室へと向かうが、その場所で重傷を負って意識を失っている父親を発見。
洪水の迫るフロリダの町で、突如として出現した巨大なアリゲーターによって地下室に閉じ込められてしまった父娘が、なんとかして危機からの脱出を目指す…という生物パニック映画。
「ハイテンション」やら「ピラニア(リメイク版)」でお馴染みのアレクサンドル・アジャ監督による新作映画ですが、いつものとおりにこの監督らしい非常に子気味良くテンポの良いパニック映画に仕上がっています。
お話としては『ハリケーンによる洪水の迫るフロリダで、巨大なワニによって地下室(というか軒下)に閉じ込められてしまった父娘が、力を合わせてなんとかして脱出しようとする』というホントにそれだけのストーリー。
ノリとしては閉鎖環境型のワンシチュエーションスリラー的な展開なのですが、『水中のどこから出現するか分からない人食いワニの恐怖』に『迫りくる洪水のタイムリミット』というシチュエーションが加わって、生物パニック映画としてもディザスタームービーとしても楽しめるという一本で二度おいしい的な作品になっているのは良い感じです。
主人公たち父親のキャラクターも非常に良く立っており、ピンチに陥っても減らず口を叩き続ける父親と父を慕って命を張って頑張る娘…という父娘の関係が、人間ドラマとしてシッカリと描かれているのは良い感じ。
また、もともとが『水泳のコーチと弟子』という関係だった事もあってか、どんな逆境に陥っても気合で乗り越える『根性があり過ぎる父娘の姿』がとにかくパワフルで頼もしくて、パニック映画でありながらネガティブさを一切感じさせない前向きさを見せてくれるのは面白いですね。
この手の映画で良くある『弱気になってウダウダして勝手にピンチに陥る』みたいなパターンが一切ないので、とにかく観ていてストレスが溜まらない構成なのは良い感じです。
(むしろ、逆に『ここまでピンチに陥ったらもっとネガティブになるだろ』ってところでも異常に前向きで、根性がありすぎる『ド根性親子』みたいな感じでちょっと笑ってしまうレベル。)
また閉鎖環境が舞台といいながらも、火事場泥棒一味やら救助隊やらといった脇キャラがワニに襲われてみたりと要所要所でシッカリと見せ場が準備されており、ダレた空気にならずに最後まで非常にテンポ良く楽しませてくれるのも良く出来ています。
全体的に良く出来たパニック映画なのですが、惜しむらくは『ワニがメインの題材の割にはワニの迫力がイマイチ』なのは残念なところ。
凶暴といっても『民家の軒下をウロウロできるサイズ』のアリゲーターなのでそこまでの巨大さや迫力がなく、襲撃シーンにしても狭苦しい場所での戦いがメインなのでワニのパワフルさがあまり感じられずに、どうにも物足りなさが残ってしまうんですよね。
特にラスト付近がちょっとアッサリしすぎだった感があったので、最後はもうちょっと派手な展開でも良かった気はしますよ。
総評としましては、小粒ながらも『なかなか良く出来た生物パニック+ディザスタームービー』という感じの作品です。
とにかくハイテンションで非常にテンポの良い内容なので、色々と細かい事を気にせずにサクッと楽しみたい方には向いているタイプのパニック映画だと思いますよ。
アレクサンドル・アジャ監督にしてはちょっとマイルドな内容ですが、生物パニック映画とかが好きであれば普通に観ておいて損はない一本だと言えるでしょう。