■■■「シー・フィーバー 深海の怪物」■■■
(55点/パニック)
人付き合いが苦手な海洋生物学の学生であるシボーンは、ある日、博士号の取得の研修の為に漁船に乗り込み深海生物の調査に赴くこととなる。
彼女の乗ったニーム・キノール号というは船長が金策に困ったことから、魚群を追って航海禁止エリアへと侵入するが、航海禁止エリアの海域上で唐突に船が動かなくなるというトラブルが発生。
木製の船底の壁を正体不明の生物が食い破ろうとしているのを発見した彼らは、潜水して船底を確認したところ巨大な触手状の生物が船底に貼りついているのを目撃する。
生物を巨大なイカの一種だと判断した彼らは、ウインチを使って生物を引きはがそうとするが失敗。
更には、船員たちの間に謎の感染症が発生しはじめ…
航海禁止エリアに侵入した漁船を謎の巨大生物が襲撃し、更にはそれを切っ掛けに船員たちの間に謎の感染症が広がっていく…という、生物パニックものサスペンスホラー映画。
『閉鎖空間で謎の感染症が発生して、人々がパニックに陥っていく』という設定のとおり、一言で言ってしまえば船上版「キャビンフィーバー」みたいな感じのお話ですね。
タイトルも原題からして「SEA FEVER」ですし、ノリ的にも元ネタを意識したリスペクト作品という感じの内容です。
お話としては『とある漁船が航海禁止エリアに無断で侵入したところ、正体不明の巨大生物に遭遇し船が航行不能に…助けを求めるために、近くで発見した大型船に乗り込んでみたところ、船員の全員が怪死を遂げているのを発見。更には彼らの間にも大型船で見たのと同じような謎の感染症が発生しはじめ…』といった感じの展開。
プロットとしては、閉鎖環境での感染パニックものとしてはオーソドックスなノリではあるのですが、結構シリアスなテイストが強めの内容で、序盤からの『何かが起こりそうな不気味な雰囲気』やら『船員たちの間に広がっていく不安と恐怖』等が非常に良い感じで表現されており、恐怖を盛り上げるための演出がなかなか良く出来ています。
宣伝の売り文句として『スティーブン・キングが絶賛』みたいなことが書かれていましたが、確かにコレは『キングとかが好きそうなノリだな…』と納得させられるような印象。
『全身がただれて眼球が破裂する』という感染症の症状も気持ち悪くて、リスペクト元と思われる「キャビン・フィーバー」に通じるような嫌悪感をあおる演出も良い感じです。
あと割と細かい部分ですが、主人公たちがいたずらにパニックに陥るだけじゃなくて、科学的に冷静に対処しようとするという展開も無駄にストレスがたまらなくて良いですね。(たいして危機的状況じゃないのに『勝手にパニックに陥って死ぬ』みたいな展開だと、観ててイライラしてしまうので…)
ただ演出やら雰囲気やらは良く出来ているのですが、ホラーとして面白いかと言われると、やや微妙なところなのが困りもの。
全体的にお話の展開が遅めで、見せ場となるシーンが少ないままダラダラとお話が進んでいく印象なところがあって、ちょっと冗長さを感じてしまいます。
サブタイトルとなっている『深海の怪物』も、基本的には船底に貼りついているだけで、アクマで『感染症パニック』がメインで殆ど出番がないのも残念なところ。
もっと見せ場となるような、派手なパニックシーンやら怖い描写があっても良かったんじゃないかなぁ?
主人公のキャラに関しても『人付き合いが苦手』という設定が全く活かされていなかったり、『感染症を広めないために上陸すべきではない』と主張する割には保健所とかに応援を要請しなかったりと、微妙に違和感を感じる描写があって、キャラ付けがやや中途半端な感じ。
オチもちょっとアッサリしすぎですし、全体的に『もう一声、何かが欲しかったなぁ』と感じる部分の多い作品でしたよ…
総評としましては、そこそこ良く出来ているんだけど『やや物足りなさを感じる感染症パニックホラー映画』って感じの作品です。
雰囲気やらテイストやら悪くない要素もあるのですが、いまひとつ盛り上がりに欠ける部分も多く、ちょっともったいなさを感じてしまうような内容でした。
予告を見て気になっている場合や、こういうジャンルが好きであればとりあえずチェックしてみても悪くはない内容だとは思うので、『まあお好みで…』という感じの一本ですかね?