■■■「セミマゲドン」■■■
(35点/生物パニック)
強打者として知られた元メジャーリーガーのジョニーは、現在は落ちぶれてストリッパーの恋人のシンディのヒモとしてうだつの上がらない自堕落な日々を過ごしていた。
そんなある日、植物の成長促進剤の影響で突然変異を起こして、巨大化して人間を襲うようになった殺人ゼミの大軍がロサンゼルスに出現し、街はたちまちパニックに陥ってしまう。
巨大ゼミの大軍に襲われた彼らは、友人たちと共に街から脱出しようとするが、政府は事態を隠蔽するために軍によって街を閉鎖。
彼らは、避難中に偶然出会った昆虫学者のネルソンと力をあわせて、なんとかして事態を収束できないかと画策するが…
違法な植物の成長促進剤の影響で巨大化したセミの大軍が人間を襲う…という、生物パニックものモンスターホラー映画。
Z級の酷い超低予算特撮/ホラー映画を買い付けてくる事で、一部のファン(クソ映画ファン)の間では有名な「コンマビジョン」さんの新作映画ですが、今回もある意味で期待を裏切らない『非常にハイグレードなレベルの酷い映画』となっております。
お話としては『公園の木の保全のために怪しげな植物の成長促進剤のを散布したところ、樹液を吸った17年ゼミが突然変異を起こして殺人巨大ゼミの大軍となって人間を襲う』という感じの設定。
この殺人巨大ゼミの大発生に巻き込まれた元メジャーリーガーの主人公が、なんとかして巨大ゼミの襲撃から生き残ろうとする…みたいなストーリーの流れなのですが、まあこのストーリーがなかなかのグデグデっぷり。
中盤辺りまで主人公たちに目的意識のような物が殆どなくて、ダラダラと襲撃をやり過ごしているだけなのでお話が全く盛り上がりませんし、一応の目的意識が生まれたあとも主人公たちが全然力を合わせようとしないヘタレやらクズの集団みたいなキャラ付けなので、感情移入的なものが全くできないのは困りもの。
特撮のレベルも超低予算らしくなかなかの酷さで、巨大ゼミの襲撃シーンはどう見ても『模型を紐で釣っただけ』だったり『CGを切り貼りしただけ』という、雑なコラージュにしか見れないようなレベル。
その癖に、人体損壊シーン(首をもぎ取られるとか八つ裂きにされるとか)が多くて無駄にグロ描写が過剰だったり、無駄に派手な爆発描写や災害の描写があったりするのですが、その辺の派手な筈のシーンも合成まるだしのショボさで、なかなかに苦笑を誘ってくれます。
巨大ゼミ以外の設定もメチャクチャで、街がセミの大軍に襲われて到るところが爆発炎上してるのに、普通に市民が外出して巨大ゼミに襲われていたりと意味が分からないレベル。
『政府が報道管制を敷いて巨大ゼミの発生を隠そうとしている』みたいな設定のようですが、そこらじゅうを1m以上あるようなセミの大群が飛び回ってて街のあちこちで建物が爆発してるのに、この街の住民はTVやネットどころか『窓の外』すら観てないのかよ!?
お話の展開にしても、終盤まで突入しても『物語の着地点』が見えてこないせいで全く盛り上がらないですし、『クズの代表』みたいな性格だった主人公がラストで唐突にいい奴みたいになるのも違和感ありすぎ。
何の解決もしていない『投げっぱなし』としか言いようが無いラストの展開も酷い(主人公は結局なにがやりたかったの?)ですし、ストーリーに関してはもうツッコミどころが多すぎてどうしたら良いのか分からないレベルです。
ただ、お話のテンポそのものは良くてサクサクと観れますし、映画の内容の全てがどうでも良すぎるせいで、逆に観ていて全くストレスにならずに純粋な『お馬鹿映画』として楽しめるのは、本作の最大の長所と言えるかも?
ちなみに本作は、エンディングにオマケ映像として『特撮シーン』やら『NGシーン』の映像が入ってるのですが、模型やブルーバック合成を相手に奮闘する役者さんの姿が妙にほのぼのしてて笑えるので、実質的に本作の最大の見どころではないかと思いますよ。(笑)
総評としましては、『色々と酷い内容』としか言いようが無いような『超低予算Z級モンスターホラー映画』って感じの作品ですね。
でもまあ、色々と酷い出来なのですが『愛すべきクソ映画』って感じのノリの作品ですので、『クソ映画』というジャンルに期待しているのであれば十分に満足できる内容だと言えるでしょう。
普通に生物パニック映画やモンスター映画の良作を求めているのであればオススメしかねますが、『ツッコミ重視のネタ作品』とかを探しているのであれば十分に期待沿えるだけのポテンシャルを持った一本だと思いますよ。(笑)