■■■「パニック・イン・ミュージアム (モスクワ劇場占拠テロ事件)」■■■
(70点/アクション:結構オススメ)
モスクワで歴史教師を勤めるアッラ・ニコラエフナは、ある日、かつての教え子の出演する演劇を、教え子たちの招待で観劇する事となる。
しかし、その劇場をチェチェン共和国独立派テロリストが占拠するという事件が発生。
テロリストたちは祖国の独立を要求し、要求に応じない場合は『観客たちを劇場もろとも爆弾で爆破する』と政府を脅迫する。
政府が警察と軍を派遣し、テロリストをなんとかして鎮圧しようと画策するも糸口が見いだせないなか、アッラは生徒たちを守るために『言論』を武器にテロリストたちとの交渉を開始するが…
武装テロリストに占拠されたモスクワの劇場で、人質となった教師や警察特殊部隊の面々が生き延びるために戦いを繰り広げる…という、アクション要素強めのサスペンススリラー映画。
ロシア製のいわゆる『対テロリストものアクション映画』なのですが、こいつがなかなか小粒ながらも良く出来た作品でした。
お話としては『とあるロシアの劇場でテロの人質となった女教師と卒業生たちが、なんとかして難局を乗り越えようとする…』みたいなのがメインのストーリー。
一応は、弁論の得意な『かつての生徒たちの恩師となる女教師』が主人公として描かれているのですが、他にも『妻を救うために劇場に侵入した元特殊部隊員』やら『事態を鎮圧しようと動く軍と警察』や『テロリスト側の視点』とかも少し描かれている感じで、ノリとしては群像劇に近い感じの構成になっています。
本作の特徴は、主要登場人物たちのキャラが良く立っていて、全員が矢鱈とカッコ良いということ。
主人公の女教師が、武装集団に脅迫されても全くひるまずに毅然とした態度で『弁論』を武器に戦っていく姿もカッコ良いですし、普段はボンクラっぽいのに『妻を救うためにキレキレの動きで単身戦いを挑む特殊部隊員』もカッコ良いですし、テロの首謀者も『自分の思想への確固たる意志』を持っていてカッコ良いですし、それ以外に暗躍する悪役も居るのですがそっちはそっちで『一本筋が通った悪役』として描かれていてカッコ良いのだから参ってしまいます。
良くまあこんなに主要登場人物のキャラをシッカリと立てる事が出来たもんだ…と感心させられてしまいましたよ。
またキャラの背景やらを描き込むために、映画そのものの尺は140分弱と結構長めなのですが、長い尺でもシッカリと緊張感が持続して、特に中だるみする事なく鑑賞する事が出来るのも良く出来ています。
最初は関係の無さそうな人物同士の繋がりが、お話が進むに従って徐々に発覚していくのも面白いですし、終盤の展開も無駄に熱くて悪くない印象。
ただ、いかんせん主人公の武器が『弁論』という事もあって、全体的に派手なシーンが少なくて、アクション映画としてはちょっと盛り上がりに欠けるところは難点かなぁ?
アクションとしてもそれなりに見せ場はあるものの、もうちょっとハリウッド映画ばりの派手な描写が少しぐらいはあっても良かったかも…という気がしましたよ。
あと群像劇だけあって、登場人物が多くて人間関係に少し分かりにくい部分があるのも気になるところかも?
総評としましては、『なかなか良く出来たロシア製の対テロリストもののアクション映画』という感じの作品です。
普通にアクション映画とかが好きならば楽しめる内容だと思いますし、法廷サスペンスとかじゃないのに『主人公が弁論を武器に戦っていく』という展開も意外性があって面白いです。
色んな意味で個性の良く立った作品だと思いますので、そういうジャンルが好きであればチェックしておいても損は無い一本だと思いますよ。