■■■「マーシー・ブラック」■■■
(55点/オカルト)
幼い少女のマリーナは、母親の病気を治すために友人のレベッカと共謀し、同級生のリリーを殴打したうえに7回も刺して指を切り落とすという凶行を実行する。
それは彼女たちが妄想で作り出した、生贄を差し出す代わりに願いを叶えるという魔女『マーシー・ブラック』を呼び出すための儀式だった。
事件の異常性から精神障害と鑑定されたマリーナは、精神病院へと入れられて15年間の治療の末に退院する事となる。
姉のアリスと甥のブライスと一緒に暮らすようになった彼女だったが、世間では彼女たちの作り出した『マーシー・ブラック』が都市伝説となり、広く信じられるようになっている事を知り、更には新しい生活をはじめた彼女の周りで異様な現象が続発。
彼女は『マーシー・ブラック』が本当に実在するのではないかと疑いを抱くようになるが、そんな矢先にアリスの恋人のウィルが何者かに殺害されるという事件が発生し…
生贄を差し出す代わりに願いを叶えるという魔女『マーシー・ブラック』の恐怖を描いた、オカルトサスペンス映画。
いわゆる都市伝説系のオカルトホラー映画となるのですが、作中でも『少女たちが妄想で作り出した存在』である『生贄を差し出す代わりに願いを叶える魔女』を題材としており、元ネタとなるような存在があるのかは良く分かりません。
お話としてはサスペンス要素が強めのオカルトホラーといった構成で、『かつて妄想に囚われて狂気的な儀式を行ったせいで精神病院に入れられていた女性が、15年を経て病院から退院したところ、彼女の周りで「妄想の存在」が実在するのではないかと思われるような現象や事件が起こるようになっていき…』という感じの展開。
『「マーシー・ブラック」は果たして実在するのか、もしくは心の病を回復していない彼女の生み出した妄想なのか?』というのを中心にお話が進んでいくのですが…
『自分たちの妄想で生み出した怪異』が、年月を経てさも実在するかのような都市伝説として語られ、その怪異にまつわる模倣犯やエピソードを生み出している…という設定は、都市伝説の形成過程や民俗学的な切り口としてなかなか面白いですね。
『過去の凄惨な事件』と『現代の時間軸』を交互に描くことで謎解きが少しずつ進んでいくという構成も、わりとありがちな展開ではありながらも悪くない印象で、中盤の『マーシー・ブラックの秘密』を解き明かしていく謎解きパートは、非常に面白くてなかなか良く出来ています。
ただストーリーは面白いのですが、怪奇現象やら怪物の出番が意外と少な目で、ホラー描写も地味なものや面白味のないものが多いため、全体的に盛り上がりに欠ける感じの印象になっているのは残念なところ。
もうちょっと、派手な見せ場とか山場になるようなシーンが多くても良かった気がしますよ。
終盤のちょっとしたドンデン返し的な展開も、少し勘の良い人であれば割と容易に先が読めてしまいそうな内容なので、ちょっと物足りないところ…
ただオチはなかなかにパンチが効いてて、個人的には結構好みの感じの終わらせ方だったのは悪くないところでしたよ。
総評としましては、『そこそこ楽しめるレベルのオカルトサスペンス映画』って感じの作品ですね。
『噂の都市伝説化』という都市伝説の形成プロセスやら面白い切り口の部分もありますし、その手の都市伝説ホラー的な題材が好きであれば割と見どころのある作品と言えるかも?
強く推すにはちょっと弱いですが、気になるようであればチェックしておいて良い程度の一本かもしれませんよ。