■■■「ノック 終末の訪問者」■■■
(50点/サスペンス)
ゲイのカップルてあるエリックとアンドリューは、幼い娘であるウェンと共に人里離れた山中のキャビンで休暇を過ごす事となる。
しかし、そんな彼らの元にレナードと名乗る男性を含む4人の男女が訪問。
男女は手に手に奇妙な得物を持ち、彼らをキャビンの中に拘束してしまう。
4人は自分たちの目的を『終末を防ぐために来た』と説明し、『彼ら3人のうち一人を犠牲として選んで、彼ら自身の手で殺さなければ世界が滅びる』と奇妙な予言めいた内容を告げる。
最初は4人を『自殺願望のカルト集団』だと思っていたエリックたちだったが、彼らの要求を受け入れずにいると彼らの予言する通りの『破滅』が次々と人類を襲いはじめ…
『世界を終末を救うための選択を行う』と自称する奇妙な4人組みに監禁されたゲイのカップルとその娘が、彼らによって究極の選択を迫られるという、カルトホラー風味のサスペンススリラー映画。
独特のテイストの作品を撮る事で有名なM・ナイト・シャマラン監督による新作ですが、捻った設定なものの割とストレートなエンタメ作品だった前作の「OLD」に比べると、なんというか難解な設定とテーマ性を持った新作になっている印象です。
お話としては、『とある家族が年齢も性別もバラバラの奇妙な4人組に監禁されて「世界の危機を救うための犠牲者」を決めるという妙な要求をされるんだけど、4人組が妄想に取り憑かれたカルト集団なのかと思っていたら、実際に彼らの周りで異常な現象が起こり始め…』といった感じで、ちょっとカルトホラーやオカルトホラー風味のあるサスペンス映画といった展開。
テーマとしては聖書の『黙示録』を題材としており、作中でも『黙示録の四騎士』の説明があったり、『毒の水』や『火の雨』やといった黙示録っぽい描写は登場するのですが、それらの主題をとことん『うさん臭い感じ』で描くことで最後まで『真実なのか妄想集団なのか予想できない構成』に仕上げているのは、いかにもシャマランらしいテイストという印象。
また『黙示録の四騎士』を象徴する4人が、『世界を破滅から防ぐための犠牲』をキリスト教的には絶対にご法度とも言える『ゲイのカップル』に選ばせるという設定も、なかなかブラックで良い感じです。
皮肉に満ちた感じのプロットに反して、内容の方は『愛するものの未来を守るために自分の身を差し出すことが出来るか?』という割と重めの内容がテーマになっており、ラストで『実は選択を迫られてたのは主人公たちだけでは無かったのでは?』と思わせるようなオチが仕込まれているのもちょっと面白いです。
ただ、テーマ性やらブラックな設定やらは悪くないのですが、本作が映画として面白いかと言われると、ちょっと悩ましいところ。
『黙示録』を題材としている割には、作中の舞台として描かれるのはアクマで『小さな山小屋』のみで、登場人物も家族と謎の集団の7人のみという状況のシチュエーションスリラーに徹しているため、全体的にどうにも地味で盛り上がりに欠けます。
謎の4人組も『妄念に取り憑かれた一般人』的な描かれ方のため、基本的にあまり緊迫感がなくて、世界の破滅も含めて危機感が感じられないのは困りもの。
まあ、この辺はシャマラン監督なので『わざとそういう描き方をしている』のでは無いかとは思うのですが、そうであればもう少し『雰囲気作り』やら『謎解き』やらに力を入れるなりして緊迫感を持たせて欲しかったかなぁ…
オチも妙に釈然としない感じの終わり方でしたし、なんというか全体的にもうひと捻り欲しかったところではありますよ。
総評としましては、シャマラン監督らしい独特なノリだではあるものの『どうにも地味な内容のカルトホラー風味のシチュエーションスリラー映画』って感じですね。
プロットやらコンセプトやらに面白い部分は多いので、シャマラン監督の『皮肉なテイスト』が好きな人であれば、まあまあ楽しめる一本だとは思うのですが、普通にサスペンスとして観るとちょっと物足りなさを感じる内容というのも正直なところ。
前作の「OLD」が、設定が尖りつつエンターテインメントしててかなり良い感じだったので本作も期待していたのですが、『良くも悪くも地味でクセのあるシャマラン映画』に戻ってしまった感じですので、オススメ度としては、まあ『シャマラン監督のファンであれば…』といった一本でしょうか?