■■■「グリーン・ナイト」■■■
(55点/ファンタジー)
アーサー王の甥であるサー・ガウェインは、武勇で名を上げる事も無くいまだに正式な騎士になれぬままに怠惰な日にを過ごしていた。
そんなある年のクリスマスの日。
彼がアーサー王の城で宴に円卓の騎士が集う参加していたところ、そこに全身が材木で覆われたような異形の騎士『緑の騎士(グリーン・ナイト)』が出現。
『彼と戦って首を斬り落としたものは、その代償に1年後に「緑の礼拝堂」を訪れ、自分の首を差し出さねばならない』という奇妙なゲームを持ちかけられる。
ゲームに応じる事となったガウェインは、見事に緑の騎士の首を斬り落とすが、緑の騎士は自分の首を自分で拾い上げて一年後の再会の約束をガウェインに言い渡して、その場から立ち去ってしまう。
そして一年後、ガウェインは緑の騎士との約束を果たすべく、「緑の礼拝堂」を目指して旅に出る事となるが…
アーサー王の甥であるサー・ガウェインの『緑の騎士』にまつわる冒険譚を描いた、叙情詩的なダークファンタジー映画。
いわゆる『アーサー王伝説』の外伝的な作品である、サー・ガウェインの冒険を描いたお話ですね。
「ミッドサマー」等で一躍有名になった「A24」によって製作されたファンタジー映画で、同スタジオで作られた他の作品と同様に非常に雰囲気映画的なテイストの強いお話になっています。
とはいっても、もともとが中世の冒険譚を描いた叙情詩的なファンタジー作品ですので、雰囲気重視の作りはお話として悪くない印象ですし、もともとのベースとなるお話も英雄譚というよりは『ちょっと不思議な冒険譚』って感じのストーリーなので、作品のテイストとしてはなかなかよくマッチしている印象。
主人公の旅する、どこか不思議な雰囲気のある『アーサー王時代のイングランドの景色』やら、奇妙なクセのある登場人物やらが情感豊かに描かれており、ダークファンタジー作品としてはなかなか良い味を出しています。
ただテイストやら雰囲気やらは非常に良いのですが、雰囲気重視の作品ゆえに全体的に非常に地味な内容なのは困りもの。
派手なアクションシーンやら戦闘シーンなんかも存在しないうえに全体の尺もゆったり長めの作りのため、観ていて途中でちょっと眠くなってしまいましたよ…
ストーリーに関しても、ベースとなる物語に比べてちょっと難解なテイストに変更されている感じで、『アーサー王伝説』に連なる英雄譚みたいなのを期待していると、ちょっと肩透かしを喰らわされてしまうかも?
というか『緑の騎士』の秘密に関して、作中で割とそれっぽい伏線が貼られてた割に、結局なにものなのか良く分からないまま終わってしまった気がしたのは自分だけですかね?
そんな感じなので、アクマで『雰囲気映画』としてテイストを楽しむのがメインであれば良いのかもしれませんが、そうでなければ普通にファンタジー映画として楽しむにはやや重い作品という印象です。
特に終盤の展開がやや難解で、原作となる『アーサー王伝説のエピソードとの関わり』とかが良く分からなくて、観ていてちょっと混乱してしまいましたよ…
映画は映画でアーサー王やサー・ガウェインの話とは別の『完全なオリジナルストーリー』の摩訶不思議なセカイ系作品と解釈すれば良いのかしらん?
(あと、『そういや、アーサー王伝説って前半の華やかな部分は有名だけど、後半は結構ドロドロした感じの話だったなぁ…』というのを、なんとなく思い出させられてしまいましたよ。)
総評としましては、『雰囲気映画としては割と良く出来た独特のテイストを持ったダークファンタジー作品』って感じですね。
「A24」の得意とする独特すぎるテイストやら雰囲気が好きな人であれば、本作も割と気に入って楽しむ事ができる一本ではないかと思います。
逆に『剣と魔法の正統派ファンタジー』みたいなノリに期待している場合はそういう要素は殆どありませんので、注意が必要な一本かもしれませんよ。