■■■「ユー・アー・ノット・マイ・マザー」■■■
(55点/サスペンス)
ハロウィンを直前に控えたある日。
学生である少女シャーの母親のアンジェラが、ドアを開けた車を空き地に放置して姿を消すいう不可解な失踪事件が発生する。
心を病んで引きこもりがちだった母の身を案じた家族は彼女の身を案じて捜索を行うが、翌朝に何事も無かったかのように自宅に戻ってきているのが発見される。
しかしそれ以降、母親の態度はどこか別人のようになり異常な行動を繰り返すようになった事から、シャーは『母親が何者かと入れ替わってしまったのではないか』と不信感を抱くようになっていくが、そんな矢先に祖母のリタから『彼女と彼女の母親の過去に関する驚くべき秘密』を知らされ…
『母親が何か別の存在と入れ替わってしまう』という、いわゆる人体乗っ取り系の恐怖を描いたオカルトサスペンス映画。
アイルランド製のオカルトサスペンス映画なのですが、最近の欧州のホラー界隈で妙に題材として流行っている、妖精の『取り替え子(チェンジリング)』を題材とした作品ですね。
お話としては『不可解な失踪から帰ってきた母親が、どこか別人のようになり異常な態度を取るようになっていく』という感じのストーリーで、設定としては割とありがちな感じなのですが、主人公と母親の過去に色々と秘密があったりとプロットとしては割と凝っている印象。
帰ってきた『母親』の異常な行動の数々に伴って高まっていく疑念とともに、主人公たちの過去に隠された秘密が少しづつ明らかになっていく…という展開は、お話の構成としてはなかなか良く出来ています。
欧州映画らしい全体的にジットリとした不気味な演出もなかなか秀逸で、母親の取る『異様な行動』もなかなかに気持ち悪くて観ていて言いようのない不安を煽ってくれます。
また、主人公のキャラ付けなんかも割とシッカリとされており、優等生でいじめられっ子の主人公と、事件に巻き込まれる形となる不良少女の友情なんかもアッサリ風味だけどキチンと描かれていてなかなかに悪くない感じ。
とまあ割と良い雰囲気のオカルトホラー映画なのですが、残念なのはとにかく『地味な内容』で全体的に盛り上がりに欠けるというところ。
確かに要所要所に不気味で不安を煽るような演出はあるのですが、生理的な嫌悪感や恐怖を感じるようなレベルには達しておらず、どうにも中途半端。
派手さも無いため山場となるようなシーンも乏しいですし、いまひとつ緊迫感を感じるようなシーンもあまり無くて全体的に非常に淡々としているんですよね。
主人公と友人の友情のエピソードとかもちょっと薄いですし、ラストの山場とかはもうちょっと盛り上がる展開があっても良かったかなぁ?
総評としては、雰囲気とかは悪くはないものの『どうにも盛り上がりに欠けるオカルトサスペンス映画』って感じですね。
ジットリした不気味なテイストとかは良く出来ているのですが、それ以外の部分で観るべき要素に乏しくて、オススメするには弱い印象。
予告編で受けるイメージ以上でも以下でもないような作品ですので、予告とかのテイストが気に入ったようであれば『まあ、お好みで』って感じの一本というところでしょう。