■■■「ヘルレイザー ヘル・ワールド」■■■
(スプラッタホラー/30点)
「ヘルレイザー」の世界を舞台として、過激な暴力描写をウリとした人気のネットゲームである「ヘルワールド」。
チェルシーらの若者6人は、このゲームの世界にどっぷりとハマってプレイしていたが、その仲間の内の一人であるアダムが現実とゲームを混同してしまい頭からガソリンをかぶって焼身自殺した事から、彼らは罪の意識に捕らわれゲームから疎遠になってしまう。
しかし2年後、過激な事で知られる「ヘルワールド」のオフラインのシークレットパーティが開かれる事を知った彼らは、ネットから招待状を手に入れパーティへと参加しようとする。
アダムの恋人だったチェルシーは最初は参加を嫌がるが、仲間達に誘われるうちに断りきれずに参加する事となり…
「ヘルレイザー」シリーズの正統な続編に当たる新作…って、日本ではつい先日に新作が発売されて感想を書いたばかりなのに『またかよ!?』って感じですが、なんか配給会社がヘルレイザーづいてるのでしょうか?
監督は前作の「ヘルレイザー ワールド・オブ・ペイン」と同じ人らしいのですが、ストーリーの繋がりでもあるのかと思いきや、特にこれといった繋がりも無いようです。
一応、正統な続編となっていますが、ハッキリ言って今回のは番外編的な要素が強く続編という感じでは無く…というか、パズルボックスやピンヘッドも『無理矢理登場させてる』といった雰囲気なので、「ヘルレイザー」シリーズである必然性が全く感じられないのは困り物です。
前作はそれでも、全体的なゴシック風の雰囲気が良く見所もあったのですが…
前作での余りに地味なストーリー展開にメーカーからクレームでも付いたのか、今回はゴア要素がかなり強めで、首を切り落としたり、胴体を切断したりという描写を連発する内容となっており、なんか物凄く普通のスラッシャーホラーになってしまった印象で「ヘルレイザー」というイメージではありません。
(「ヘルレイザー」というと、やっぱ生革剥ぎとか八つ裂きとか…そっちのイメージだしねぇ…)
それでも、前作では現実と妄想との区別が付かない「ヘルレイザー」的な悪夢世界を上手く描いていたのですが、本作はスラッシャー風描写とこの『悪夢演出』が見事に噛みあっておらず、残虐シーンをいくら連発で見せられても『どうせ妄想なんでしょ?』とか思うと緊張感も何もあったもんじゃありません。
しかも、前作は主人公が一人でその主観を元に話が進んでいたので、現実か幻想か区別が付かない世界ってのが効果的だったのですが、本作ではメインの登場人物が5人も居るので、5人のキャラクターで同時にそんな演出をやられても訳が分からなくなるだけで恐くもなんともないです。
っていうか、まったくテイストの違う2作品を同じ演出手法で撮ろうというのは、幾らなんでも無理がありすぎです。
一応、オチでビックリ風の展開になってるんですが、ストーリーのオチも『だから何なんだよ?』って言うようなツマんない終わり方ですし…
本作はハッキリ言って「ヘルレイザー」らしさが微塵も感じられない完全な失敗作と言ってしまっても過言では無いかと…。
つか『究極の快楽』が言及されない「ヘルレイザー」は既に「ヘルレイザー」でも何でも無いですよ…
唯一、ランス・ヘンリクセンの存在感のある怪演が光ってましたが、それだけで映画を観るには余りにも弱い内容です。
総評としましては、ハッキリ言って本作はシリーズのファンだとちょっと耐えられないようなお粗末な完成度ですし、逆にシリーズ知らない人が観たら『非常に分かり難いお話』というだけで面白くも何とも無いと思いますので、ちょっとオススメしかねるような内容の映画です。
最新作がこんな出来では、果たして次が製作されるのか?ファンとしては不安になってしまう事しきりですよ…
ただ、映画全体の絵作りや雰囲気作りは悪くないので、この監督には出来れば今後はオリジナルのゴシックホラーとかを撮って欲しいですな。
変に無理をしてシリーズ物に当てはめるよりも、そっちの方が絶対に面白い作品を撮れそうな気がしますので…