■■■「Jの悲劇」■■■
(サスペンス/30点)
大学教授のジョーは、ある日、恋人のクエラと郊外の草原でピクニックを楽しんでいたところ、一人の少年を乗せたまま突風に煽られて制御不能となった気球が地表スレスレを飛行しているのを目撃する。
ジョーはたまたま草原に居合わせた数人の男性と共になんとか気球を下ろし少年を助けようとするが、気球は空高く舞い上がってしまい、ジョー達は途中で気球から転落し軽傷を負うが、最後まで少年を助けようとした一人の医師が高空から転落して死亡してしまう。
気球の事故によるショックと、途中で自分が落下してしまった為に医師を救えなかったのでは?と言う、死亡した医師への罪の意識から、徐々に神経衰弱を起こしていくジョーだったが、そんな彼の元に気球を一緒に救おうとした一人のジェドと名乗る男性が訪れ、『自分の本心を打ち明けろ』と迫って来る。
最初はジェドの事を相手にしていなかった彼だったが、自宅のみではなく大学の講義にまで訪れるという、あまりのジェドのストーカーまがいの行動に徐々に神経をすり減らし狂気へと駆られていくのだった…
「Jの悲劇」と言っても、エラリー・クイーンのXとかYの悲劇とは何の関係も無く、当然ながら夏樹 静子のWの悲劇とかとも全く関係のない、イギリスだかどっかのサスペンス映画。
パッケージ等の解説に『ヒッチコックの映画の再現』みたいな事が書かれていますが、確かにヒッチコック的なカメラアングルや映像表現の美しさは確かに秀逸なんですが、内容的にはヒッチコックの畳み掛けるようなスピーディなスリラーとは程遠く、どちらかというとスローテンポで精神的に追い詰められる姿を描いたサイコサスペンス的なノリのお話です。
特筆すべきは、フランス映画かと思うぐらいのウェットでテンポの遅い展開と、やたらと象徴的だったり概念的だったりする表現の連発。
とにかく、良くも悪くもテンポが遅く冗長な『芸術映画』っぽい印象を受ける映画で、おすぎ氏とかが絶賛しているだけの事はあって、そういった芸術家肌の映画が好きな人なら結構楽しめるのかもしれませんが…
個人的にテンポの良い作品の方が好きな私は、あまりのテンポの遅さが我慢できずに途中から『倍速再生ボタン』(DVDプレイヤーに搭載されている1.5倍の速度で音声を聞きながら映像を再生する機能)を押して倍速で鑑賞してしまいました。
ストーリー的には、主人公が徐々に精神的に追い詰められていく姿が描かれているのですが、特に中盤からラストはかなり救われない感じの展開が多くて、その手の映画にありがちな『収拾が付かないグテグテな終わり方になるんかないだろうか?』と危惧してたんだけど、オチが割とキレイにまとまっていたのは好感触。
個人的にはストーカー男がマジに気持ち悪くて、クライマックスのシーンはある意味で正視できませんでしたよ。(笑)
主演は新ジェームス・ボンドへの抜擢で一躍メジャーになった、ダニエル・クレイグ。
007シリーズのファンからは、『歴代で一番変な顔のジェームス・ボント』とか言われて不評ですが、まあ確かにあんまり二枚目キャラが似合う顔とは言えないですね…
総評としましては、映像表現やカメラワーク等の観るべきところも割とあるものの、テンポが悪くて芸術的すぎる部分があって、『ちょっと一般向けでは無いかなあ?』というのが正直な所です。
フランス映画とかみたいな、スローテンポで芸術家肌の監督が撮った作品が好きならば結構楽しめると思いますが、そうでなければスルーした方が良いかも?
個人的に普通のサスペンスを期待してたので、ちょっと観るのに疲れてしまいましたよ…