■■■「東京ゾンビ」■■■
(ゾンビアクション(?)/55点)
倫理観の荒廃した近未来の東京の小さな街工場で働くミツオとフジオは、仕事もそこそこに毎日「柔術」の練習に明け暮れていた。
そんなある日、ふとした事からキレた上司と乱闘となった2人は、勢いあまって上司を撲殺してしまう。
2人は死体を処分する為に、粗大ゴミや産業廃棄物や時には人間の死体まで『処分できないゴミ』が大量に投棄されて形成された、不法投棄のメッカとも言えるゴミ山である『黒富士』に上司の死体を埋めに行くが、その翌日に埋めた筈の上司が、彼らの元に『生ける屍』となった変わり果てた姿で現れる…
なんと、『黒富士』に大量に投棄された産業廃棄物や化学物質の影響で、埋まっていた死体が次々とゾンビとなって復活し始めたのだった。
事態の異変に気付いた2人は、ゾンビによって壊滅しつつある東京から北を目指して逃走をはじめるが…
花くまゆうさく原作による、同名のシュールギャグ漫画のである「東京ゾンビ」の映画化作品。
いや何と言いますか、この映画、とにかくズルいですな。
何がズルいって、浅野忠信と哀川翔という主演の2人がインパクトありすぎな事。
ただでさえキャラが濃すぎる個性派俳優の2人が、『アフロ』と『ハゲづら』を付けて飄々と会話してるってだけで、話の内容に関わらずとにかく笑えてしまいます。
いや、浅野忠信も哀川翔も演技の幅が広すぎますよ。(笑)
ゲスト出演陣の面々も、古田新太やら楳図かずおといった、もはや『個性的』を通り越して『変人』じみたキャスティングで固められており、とにもかくにも登場人物の突き抜けた個性は一見の価値ありです。
お話のほうは、とにもかくにもひたすらシュールな展開、主人公が平気で殺した人を埋めたり、善良そうな中学生が平気で強盗したり…といった倫理観を徹底的にコケにした展開は、原作のヘタウマ系の漫画の絵でやる分には笑えますが、実写でやる分にはどうだろう…と思う部分もあって、いくらコミカルに描いているとは言え、人によっては馴染めないかも?
私も最初は、『シュールすぎる展開』と『やたらとブラックなネタの連発』というノリに付いていけずに一瞬戸惑いましたが、『こういう映画なんだ』と理解したら、割とスグに慣れました。
ストーリーに関しては、序盤は特に会話劇のシーンが結構多いのと、主人公達が使う格闘技が「柔術」という事もあって、どうにも地味で冗長な感が拭えないのは辛い所。
でも、終盤まで結構ドロドロとした地味な物語が続いて、マトモなオチが付くのかと心配になるような展開の反面で、ラストの突き抜けるほど爽快なオチと軽快なエンディングテーマが印象的で、バカバカしいながらも『何となくホッとさせられるような終わり方』なのは良いですね。
特撮とかは流石にチャチながらも、チープさが程よいバカっぽさを演出するテイストになってる部分もありますし、後半は妙に「ランド・オブ・ザ・デッド」っぽい展開になってみたりとゾンビ映画としてもそこまで破綻しては無いですし、同じ『ゾンビ格闘映画』でも先日感想を書いた「ゾンビキング」なんかよりも、こっちの方が楽しいかも?
まあ、『純粋にホラー映画として楽しめるか?』と言われると答えに窮しますが…(笑)
総評としましては、『濃い目のブラックなネタ』に『超濃い目のキャラクター』と、色んな意味で非常に濃い作品ですので、ちょっと変なセンスの濃い目の邦画が好きな人ならば結構楽しめる作品だと思います。
いわゆるB級ホラー映画として観た場合は『どうかなぁ?』と思わなくも無いですが、どっちかって言うと非常に邦画的なノリの強い作品ですので、ナンセンスな感じの邦画が好きな人にはオススメ出来る一本でしょう。