NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ヘイズ HAZE」(50点/シチュエーションスリラー)

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■■■「ヘイズ HAZE」■■■
(50点/シチュエーションスリラー)

 ある日、一人の男が目を覚ますと、幅が50cmぐらいしかなく上下をコンクリートの壁に挟まれているという、まるで床下のような異様に狭い空間に閉じ込められている事に気付く。
 男は自分の腹部に刃物で受けたような傷を負っている事に気付くが、以前の記憶が全く無く、『自分が何者で何のためにこのような異様な場所へ閉じ込められているのか』は、どうしても思い出せない。

 男は、ともかくこの異様な場所から脱出しようと行動を開始するが、彼を待ち受けていたのは床に埋め込まれたナイフや有刺鉄線といった数々のトラップであった…


 独特な世界観と映像センスで世界的にも評価される塚本晋也監督による、ソリッドシチュエーションスリラー風の短編映画。

 塚本晋也というと「鉄男」等の先鋭的なホラー作品で有名な監督ですが、私は実はこの監督の作品って微妙に気になっていながらもヒルコ/妖怪ハンター沢田研二が出てた奴ね)ぐらいしか観た事が無かったりします。
 …っていうか、そのチョイスは我ながらどうなのよ?

 本作のお話は、何と言うか『和製「CUBE」』とでも言うような感覚が一番近いかな?

 男が目覚めてみると、囚われているのは『上下が打ちっ放しのコンクリートの壁に囲まれた50cmぐらいの幅しかない異様な空間』という、なんとも猟奇的なシチュエーションにはじまり…

 全編を通して、殆どが膝を曲げる事も出来ないぐらいに身動きもままならないような『異様に狭い空間』や『通路』を舞台として展開される為、その息苦しいまでの閉塞感や圧迫感が、観る者に言いようの無い不安感を掻き立てる事に成功していると思います。

 登場するトラップも陰湿な物が多く、ホントに観てるだけで息苦しくなったり胃が痛くなってくるような感じのかなりキツい映画なのですが…

 ただ緊張感という点では、主人公の立場が『最初から余りにも絶望的な状態』であるため、むしろ『どんな結末があるにせよ、これ以上悪くなる事は無いよな…』と思えて逆に安心できてしまう為に、いま一つ緊張感が薄くなってしまった気がします。

 例えば『壁が徐々に迫ってくる』等の、脱出に明確にタイムリミットを設けるような演出でもあれば、もっと緊張感が持続して良かったかも?

 オチに関しても途中でなんとなく方向性は読めてしまうものの、ラストは『ああ、成る程ね』と納得できるような終わり方なので、この手の不条理スリラーにありがちな『投げっぱなし』になっていないのは良い所だと言えるでしょう。

 映画そのものの内容は『いかにも短編映画』といった感じの小ぎれいなまとめ方をされた良作だと思うのですが、短編映画ゆえにややボリューム不足な感があるのも否めない所で、それが最大の減点要素かなぁ…
 なんか『始まった』と思ったら『もう終わり?』みたいな感じの映画だったので、同じ短編でも後15分ぐらい尺があって、もうちょっと『中盤の見せ場』となるようなシーンが欲しかったですね。

 総評としましては、全体的に『若干物足りないかな?』と感じる部分も無くは無いですが、それを差し引いても『不条理系のソリッドシチュエーションスリラー』としてはなかなかの良作だと思うので、その手の映画が好きな人なら、とりあえず観ておいても損は無い一本だと言えるでしょう。

 ただ短編映画故に、レンタルで普通の映画と同じ値段で借りるにはちょっと割高感を感じなくもないので『安くなったら借りる』というのが良いかもしれませんね。

 邦画でもキチンとこういう作品を撮れる人が居るんだ…という事で、ホラー好きとしてはなかなか次のホラー作品が楽しみな監督さんと言えますね。