■■■「ローズ・イン・タイドランド」■■■
(65点/現代ファンタジー)
麻薬中毒で自分勝手な母親と、元ロックスターで今はヒモのような生活を送る父親を持ち、スラム街のボロアパートで生活していた少女・ローズは、ある日、母親が急性の麻薬中毒で死亡した事から住む場所を失い、他界した父親の祖母が持っていた田舎の農場の中にある一軒家へと移り住む事となる。
移り住んだ先の、観た事も無いような田舎の風景やお婆ちゃんの家は、ローズにとっては驚きの連続。
また、異常に蜂を恐れる黒ずくめの女性デルや、その弟で事故で脳に損傷を受け精神障害を持つディケンズといった奇妙な隣人たちと知り合い、彼らと友達になれるかと期待に胸を膨らませるが…
「未来世紀ブラジル」や「ブラザーズ・グリム」といった一風変わった作風で知られる、テリー・ギリアム監督による「不思議の国のアリス」をオマージュした現代版ファンタジー。
テリー・ギリアム監督というと、割とブッ飛んだ世界観や映像表現が話題となる監督ですが、本作もなかなかに個性的なノリの作品で、リアルな中にもどこか幻想的でダークな印象を感じさせる独特の世界観をかもし出しています。
まあしかし、ファンタジーと言っても「ブラザーズ・グリム」みたいなコテコテのファンタジーでは無いですし、また「アリス」ネタと言ってもヤン・シュバンクマイエル監督の「アリス」みたいな常人に理解不能なぐらいにカッ飛んだ内容ではなく、アクマで『ファンタジー風のテイストを持った人間ドラマ』といったノリのお話ですね…
『麻薬中毒の両親』や『剥製師のお隣さん』といった、どこか残酷で不安を煽る『童話』を思わせるような世界を幻想的な映像で描き、そこにコケティッシュで純真な少女の主観を加える事で、なんとも『フェティッシュな魅力あふれる作品』に仕上がっているのは見事。
お話自体も冷静に考えると割と暗い話なんですが、それをアクマでファンタジーテイストで描く事によって、あまり暗さを感じさせずに良い意味で『後をひく』ようなノリとなっている点もなかなかに良いですね。
最近のギリアム監督は『ちょっとメジャー系に寄り過ぎかなぁ?』という感じで今ひとつパッとしない印象のでしたが、久々に変態的な趣味を感じさせる快作で、ファンからすれば面目躍如とも言える一本でしょう。
総評としましては、ちょっとダークなノリは観る人を選ぶかもしれませんが『現代版ファンタジードラマ』的なノリが好きな人なら結構ハマれる作品だと思います。
ちょっとノリは違うかもしれませんが、ティム・バートンとかD・リンチみたいな、変なノリの『フェティッシュ系映画』が好きな人なら、とりあえず観ておいて損は無いんじゃないでしょうか?