■■■「コントラクト」■■■
(35点/オカルトスリラー)
若かりし頃は人気があったものの今ではすっかり落ち目の映画俳優のパブロは、仕事を求めて映画のオーディションを受けに行くが、実力はあっても拝金主義の監督やプロデューサーとの折り合いを付けれない彼は、仕事を干されて困窮にあえいでいた。
映画会社のエージェントから高級クラブのドアマンの仕事を紹介されたパブロは、その面接を受けに行くが、その仕事の内容はクラブの入り口で『イヴァン雷帝』や『ジル・ド・レ』や『ラスプーチン』といった『歴史上の怪人』の仮装してドアマンを行うだけという不満なものだったが、『日払いで一回1万ユーロ』という高給の魅力に負けて契約する事となる。
契約先でレフィカルと名乗る支配人からいたく気に入られた彼は、彼から奇妙な刀の仕込まれた『仕込杖』を渡されるが…
それ以来、まるで歴史上の怪人の魂に取り憑かれたかのように、『悪徳プロデューサー』や『監督と寝るしか脳が無い女優』などの偽善者たちを、怒りを爆発させて次々と抹殺していくのだった。
知らず知らずのうちに悪魔と契約してしまった男の末路を描く、スペイン製のTV映画だと思われるオカルト風サスペンス映画。
なんとなく、ミッキー・ロークの「エンゼル・ハート」を彷彿(ほうふつ)とさせるような設定ですが、内容的にあそこまでサスペンスらしい話ではなく、主人公が偽善者たちを殺してまわるという辺りからも、むしろヒロイックな印象を受ける作品ですね。
ただ、『主人公が無自覚なうちに殺人を犯すようになっていく』という設定の割には、別にある日を境に主人公の性格が豹変したり感情を爆発させたりする訳でもなく、実に淡々と殺人を重ねていくので、なんとなく物語の流れが掴み難いため、あまり怖さはありません。
もうちょっとその辺がキッチリと描かれていたら、だいぶ印象の違う作品になったかも?
他にも『過去に惨殺された主人公の娘』と今回の事件との関わりや、主人公の周りの人間関係も何か分かり辛いですし、全体的に説明不足な印象を受ける内容です。
『説明不足な映画』のお約束的に、オチも投げっぱなしで意味不明な結末。
つか、何か私は映画の感想を書く度に、しょっちゅう『オチが意味不明』みたいな事を書いてる気がしますが、B級ホラーとかってホントにそういうオチの映画が多いんですよ…
まったく理解出来ない訳じゃないものの『監督はオチでこういう事を言いたいんだろうけど、イマイチ確証が持てない』みたいな終わり方。
そんな訳で、『私の読解力が不足している』という訳では無いと思います…というか、そう思いたい…
ちなみに本作は、難解の度合いを10段階で表すとしたら8ぐらいで、かなり意味不明度が高いです。
(9がデヴィット・リンチ監督ぐらいで、10は共産圏(旧共産圏)の映画)
と、何か話がズレてしまいましたが…
本編の内容の難解さはさておき、カットの切り替わりのシーンのカメラ演出やら、全体的に個性的で面白い演出が使われているのは、なかなか良いと思います。
(まあ、一部で『しつこすぎる』印象も受けましたが…)
作品のテンポとかも悪くはなく、あまり細かい事を気にせずにサクっと観るならそれなりに楽しめるお話だと思うので、この内容ならばいっそサスペンス部分を切り捨てて爽快感を追求した作りにした方が良かったかも?
そういう意味でも、全体的にちょっと狙いが分からない映画でしたね。
総評としましては、サスペンスとして観ると少々疑問の残る微妙な内容ですが、エンターテイメントとして観るなら『そこそこ楽しめる作品』かと思います。
しかし本作を借りる人は、殆どがサスペンスを観るつもりで借りると思うので、『ソレは映画としてどうなんだ?』という気もしますが…
既に予告編などを観て、なんとなく『こんな映画かな?』と予想している人が居るとしたら、ほぼ95%は『その予想通りの作品』ですので、まあそれでも観て見たいという人なら観ておいても良いんじゃないかと?
まあ、ぶっちゃけ『予告で全てが語られている作品』なので、『予告だけ観とけば十分』ってウワサもあるんですけどね…