NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ミッドナイト・ミート・トレイン」(60点/スラッシャー)

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■■■「ミッドナイト・ミート・トレイン」■■■
(60点/スラッシャー)

 ニューヨークに住む売れないフリーカメラマンのレオンは、スクープを追い求めて深夜の街をさまよっている最中に地下鉄の構内で暴漢に絡まれている一人の女性を助ける。

 しかし、翌日のニュースで助けた女性が地下鉄で行方不明になっている事を知るった彼は、警察にその事を伝えつつも自分でスクープ写真をものにしようと地下鉄を訪れるが、そこで一人の不審な男性を目撃する。

 その男が食肉解体工場に勤めている事から事件に何らかの形で関わっているのではないかと疑いを抱くようになったレオンは、独自に事件の調査を開始するが…



 地下鉄で発生する謎の連続失踪事件にまつわる恐るべき秘密を描いた、クライヴ・バーカー原作のスラッシャーホラー映画。

 原作は、いわゆるクライヴ・バーカーの『血の本』シリーズのいっとう最初に収録されてるお話で、先日から「血の本」シリーズとして映画化されている「血の本」「ドレッド[恐怖]」と同じシリーズなのかと思いきや、特に両者に関係は無くて全く違う製作会社によって作られている作品のようです。

 こちらは何でも「あずみ」の(というよりホラーファン的には「VERSUS」の)北村龍平監督のハリウッドデビュー作品との事ですが、何故に今頃になって随分昔に発売されたクライヴ・バーカーの「血の本」シリーズが次々と映画化されていくのか…ちょっと不思議な感じですね。

 私もこの作品は原作で読んだ事があるのですが、原作では『一人のサラリーマンが深夜に虐殺の行われている地下鉄に乗り合わせて…』というだけで、映画化しようにもストーリーもへったくれも無いような話だったので、流石にお話の方は結構アレンジされていますね。

 映画の方では『事件に偶然にも関わる事になったカメラマンが事件の謎を追っていくうちに…』というような、サスペンス仕立ての展開になっています。

 肝心の映画の方は、ストーリーをアレンジしているながらも、そこそこに原作のお話を再現していると思います。

 サスペンス的な要素を持たせる事で、映画としての尺の長さにも十分に耐えれる程度のボリュームのある作品になっていますし、原作には登場しない主人公の妻とかを登場させる事で作品としての世界の広がりを持たせる事には成功しているんではないかと。

 ただ、もともとが『かなりエグいイメージのある作品』なのですが、映画版では残虐シーンをちょっと清潔に描きすぎている印象(いや、グロいのはグロいんですが…)があって、その辺はクライヴ・バーカー作品としてはちょっと違和感があったかなぁ?
 (もうちょっと、全体的に小汚くてドロドロした印象でも良かったと思う。)

 また北村龍平監督といえば『アクションシーンのカッコ良さ』に定評がかる監督な訳ですが、北村監督らしく『殺人鬼と主人公との対決シーン』が無駄に派手でカッコ良くて、迫力がありすぎで思わず笑ってしまいましたよ。
 (主人公はただのカメラマンなのに、どんだけ運動神経抜群なんだよ!!)

 他にちょっと気になった点としては、これは原作からの事なのですがラストの展開があまりに『超展開』すぎるのは難点かなぁ。

 特にラストは文章で読む分にはまだ理解できるのですが、映像で見せられると説明不足のうえに展開が意味不明すぎて、何がなにやら理解不能ではないかと…
 (原作だとラストに登場する『アレ』も出てこないし…)

 あと中盤までの展開がやや冗長で、スタイリッシュな映像を撮ろうと意識しているせいでブツ切りな印象を感じるシーンがいくらかあったのは、ちょっと気になるところだなあ。
 もともとストーリーが無いも同然な話なんだし、全体的にもうちょっと尺が短くても良かったかも?


 総評としましては、クライヴ・バーカー原作作品としてはちょっと疑問点は残るものの、単純にスラッシャーホラーとして観るなら『割と良く出来たゴア系B級ホラー映画』に仕上がっていると思います。

 原作が『スプラッタパンクの先駆け』となったような作品ですので目新しさとかは全く無いですし若干の個性の弱さを感じるものの、今のレベルで見ても十分に楽しめる作品ではあると言えるでしょう。

 北村龍平監督のハリウッドデビュー作品としてはちょっとパンチが弱い気もしますが、Jホラー監督の動向としても注目したいところではありますし、その手の作品に興味があるならばネタとしてチェックしておいても損は無い一本かもしれません。