NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「バトルフィールド・アビス」(60点/モンスター:結構オススメ)

イメージ 1

■■■「バトルフィールド・アビス」■■■
(60点/モンスター:結構オススメ)

 米軍の潜水艦の艦長であるエイハブは、1969年に作戦で北極海を航行中に全長150mという想像を絶する巨大なサイズの『白い鯨』に襲われて艦を撃沈さてしまう。
 その事故により仲間のクルーと片足を失った彼は、それ以来『白鯨』への復讐へと取り憑かれて執拗に怪物を追跡しつづけるようになる。

 それから数十年後の現代。
 クジラの研究を行う生物学者のミシェル博士は、ザトウクジラの生態の調査中に謎の潜水艦に遭遇。
 エイハブ艦長の率いる米国の潜水艦・ピークォド号が艦船や油田基地を襲撃する『謎の巨大クジラ』を追跡していると知らされた彼女は、彼らに協力して怪物の追跡を行う事となるが…



 メルヴィルの「白鯨」をモチーフとして現代的なアレンジを加えた、ASYLUMによるモンスターパニック映画。

 過去に何度か映画化されている有名な作品で、モンスター映画とかが好きならば知らない人は居ないであろう「白鯨(モビー・ディック)」を現代風な設定に置き換えた作品なのですが、低予算ホラーで有名なASYLUMによる製作の割には、なかなかどうしてコレが意外と良く出来ております。

 ちなみに原題は、そのものズバリ「2010:MOBY DICK」なんですが、何でこんな「バトルフィールド・アース」のパチもんみたいな分かり難い邦題を付けたんだろう?(このタイトルじゃ「白鯨」のアレンジ作品とは想像できないと思うんだけど…)

 お話としては『かつて潜水艦を沈められた艦長が復讐に燃えて白鯨と対決する』という設定になっており、エイハブ船長の乗る船が『捕鯨船』から『原子力潜水艦』へとグレードアップしたのに合わせて、モビー・ディックも『全長150mで貨物船や潜水艦をも破壊する怪物』にパワーアップしており、もはやモンスター映画というよりは怪獣映画の様相を呈した作品になっています。

 ちなみに現実の地球の歴史上ではそんなアホみたいにデカい怪物は存在しない訳ですが、一応『未発見の新種の鯨』という設定になっているようです。

 ストーリー的には、メインのお話の流れははホントに「白鯨」をそのままなぞるような展開で、艦長のエイハブや潜水艦のピークォド号の名前や設定はそのまんまですし、脇役でも副長の『スターバック』が名前も立ち位置も原作と同様の扱いで登場したり、ストーリーテラーとなる『イシュメール』がミシェールという生物学者として登場したりと、原作を知ってればニヤリと出来るような展開が仕込まれてるのはなかなか良い感じ。

 また現代的なアレンジとして、怪物の正体を突き止める為に『軍の別部隊が調査をする』というサスペンス的な展開があったり、命令を無視したエイハブを追って来た別の潜水艦がモビー・ディックと対決するシーンがあったりと、色々な見せ場を作って退屈させない作りになっているのは上手いですね。

 ただ、現代的なアレンジによって独特の暗さや宗教的なテイストは失われており、エイハブの『モビー・ディックに対する妄執』といったものや、『善と悪(あるいは自然と人間)との対決』といった雰囲気ががちょっと描ききれて居ないと感じたのは残念なところ。(まあ尺の都合もあるんでしょうが…)

 怪物のCGやら特撮やらは低予算の割には意外と良く作られており、怪物の襲撃のシーンとかも割とシッカリと作られてて良い感じですし、特にラストのモビー・ディックと肉薄して対決するシーンやエイハブがモビー・ディックと見つめ合うシーンは、非常に迫力があって燃えるものがありました。

 でもやはり予算の都合の問題もあってか、CGで表現の難しい『水しぶき』の上がるシーンなんかで非常に違和感があり、思いっきり作り物っぽさが露呈してしまうのは辛い部分ですね。

 あと、個人的に『ラスト付近の「白鯨」で最も印象的なシーン』が本作では描かれて無かったのは不満点かなぁ?
 ラストシーンもやけにアッサリしすぎなので、もうちょっと一捻り何かがあっても良かったかも?


 総評としましては、「白鯨」のアレンジとしてはちょっと風変わりな作品なものの、なかなかに良く出来たモンスターパニック映画だと思います。

 原作の「白鯨」を知らなくても、こういったジャンルが好きであれば『普通に楽しめる作品』になっていると思いますし、原作を知っていれば『どのように大胆なアレンジがされているか』とかの観点から観ると『より楽しめる作品』だと言えるでしょう。

 低予算故にB級の枠を出る作品では無いですが、とりあえず『モンスターパニック映画が好きな人であれば観ておいても損は無い一本』だと思いますよ。