■■■「寄生体X」■■■
(35点/モンスター)
近未来、新発見された彗星が地球のすぐ側を通過する事となり、パリ市内では世紀の天文ショーを記念して再接近の夜に各所でパーティが開かれようとしていたが、PCのオペレーターのクリスは、10年前に彗星の接近した夜に父親が母親を殺す現場を目撃した事から、それがトラウマとなり彗星の接近を喜べないでいた。
しかし隣人のクレアの誘いでパーティに参加する事になった彼だが、バーで彼女を探すうちに『奇妙に肉体が変異し凶暴化した人間』を目撃した彼は、恐怖のあまりその場から逃げ出してしまう。
怪物から逃れ、なんとか安全な場所へと逃げようとする彼だったが、既にパリの市内は『謎の寄生生物に体を乗っ取られて凶暴化した人間』によって溢れかえっていたのだった…
彗星の接近によって出現した『謎の寄生生物』のせいで怪物と化した人間によって壊滅したパリ市街から主人公たちが脱出を図るという、サバイバルホラー風味のモンスター映画。
タイトルから想像できるとおり、いわゆる「遊星からの物体X」風味の肉体乗っ取り型触手系モンスターの登場するホラー映画ですね。
恐らく監督がJ・カーペンター監督のファンで「遊星からの物体X」のオマージュ風味の映画を低予算で撮りたくて作った作品というのは分かりますし、その心意気は買いたいのですが…
(主人公の部屋に「ニューヨーク1997」のポスターとかが、あからさまに目立つように貼ってあるし…)
肝心の映画の出来の方は『うーん、これはちょっと…』って感じの作品ですね。
やりたい事は方向性は分かるのですが、「物体X」ネタをやるには流石に『ここまで低予算だと厳しいよね…』としか言いようが無いです。
何が辛いって寄生タイプの『変異モンスター』をウリにしてる映画の割には、変異モンスターが殆ど出てこない事。
予告編で観た時には怪物のデザインとかが結構良さげな印象を受けたのですが、実は『CGで表現された触手モンスター』が出てくるのは予告で使われてた数カットのみで、他のシーンは単に『血まみれになって凶暴化した人が襲い掛かってくるだけ』のシーンで尺を稼いでおり、普通のゾンビ映画と変わらない内容になってしまっています。
エンディングで表示されるイメージイラストみたいなのを観た感じだと、ホントはゾンビじゃなくて『体の一部のみ変異した怪人』みたいのを表現したかったみたいなのですが、やっぱソレすらも予算が厳しかったんですかねぇ…
(それとも、ああいう絵の原作コミックが存在するんだろうか?)
まあ、モンスターの襲撃シーンがショボくてもお話の方が面白ければなんとかなるのですが、ぶっちゃけお話の方もイマイチなのが困りもの。
序盤のモンスターが登場するまでの展開も、主人公がパーティに行くまでのシーンとかパーティ会場でウダウダしてるシーンが無駄に長くて、どうにもダラダラしすぎでテンポが悪い。
主人公のキャラを掘り下げて描きたかったのかもしれませんが、掘り下げられた設定がお話の後半に活かされている訳でも無くて、主人公の行動も場当たり的で主張が感じられないので、今ひとつどういう物語を描きたかったのかが分かりません。
また主人公だけが『寄生されてるのに何で意識を保ってられるのか』も不明ですし(精神安定剤のせい?)、脇道のストーリーが多い割には根幹のストーリーと呼べるようなものが不明瞭なうえに細かい部分も説明不足で良く分からないので、なんだか観ていてモヤっとします。
ただ良い部分が全く無い訳ではなくて、ごく一部のシーンで登場する寄生モンスターのデザインなんかは結構良い感じですし、何かをイメージさせるような印象的なラストシーンも結構好きかも?
なんとなく目指したかった方向性とかは分かるので、『もうちょっと予算があってシッカリと作ってくれてればなぁ』と思わなくも無い感じの作品ではありました。
総評としましては、狙ってる方向は分からなくは無いんだけど『なんとも残念な出来のモンスター映画』って言うのが正直なところ。
見所が全く無い訳ではないですが、流石にほんの一部の見所の為に本作を薦めるのは厳しい感じ…
寄生タイプの変異モンスター系の映画が大好きで『どうしてもチェックしたい』というのであれば観ておいてもやぶさかでは無いとは思いますが、ぶっちゃけ予告編で全ての見所を出し切ってしまってるようなタイプの映画なので、予告だけ観て満足してしまうのが一番コストパフォーマンスが良いかもしれませんね…