■■■「MAMA」■■■
(60点/オカルト)
世界恐慌の影響で心を病んで2人の共同経営者と妻を殺害した投資家のジェフリーは、3歳と1歳の娘を連れての逃走中に雪山で事故を起こして山小屋へと避難する。
山小屋で2人の娘をも殺害しようとした彼だったが、突如として山小屋の奥から現れた『得体の知れない存在』によって殺害されてしまう。
それから5年後、ジェフリーの弟のルーカスは『得体の知れない何者か』によって育てられ野生児のようになった2人の娘を山小屋で発見。
治療によってなんとか社会性を取り戻した彼女たちは、ルーカスと恋人のそのアナベルによって引き取られて郊外の一軒家でリハビリを行う事となるが、その行為は彼女たちを育てた得体の知れない存在である『ママ』をもその場所をに呼び寄せる事となってしまい…
森の中で何者かによって育てられた少女を引き取る事になった若い夫婦が『正体不明の存在』によって脅かされるという、オカルトサスペンス映画。
今をときめくギレルモ・デル・トロ監督の製作による新作で、系列的には「永遠のこどもたち」とか「ダークフェアリー」とかの流れを汲む感じの作品ですね。
デル・トロ監督はこういった『母親の愛情を題材にしたちょっと物悲しいオカルト作品』が妙に好きな印象がありますが、そういう方向性に思い入れでもあるのかしらん?
ただ、前回の「ダークフェアリー」がいま一歩な印象だったので期待半分程度で観たのですが、今回の作品はなかなか好印象な感じ。
デル・トロ監督らしい美術センスの良さは相変わらずで、ダークで不気味な雰囲気の映像とちょっと寂しげな感じのストーリーが良くマッチしており、雰囲気映画としては非常に秀逸なので、デル・トロ監督のこの手のシリーズが好きならばそれだけでも観る価値はアリ。
序盤~中盤にかけての謎解きの構成も良く出来ており、そこまで派手な展開は無いもののグイグイと引きこまれる感じのストーリーなのは良いですね。
加えて『正体不明の存在』である『ママ』の映像表現が物凄く不気味な事もあり、ジワジワと来る怖さがあって良い感じです。
ただ逆に終盤の『ママ』の正体が明らかになってからの展開が今ひとつ盛り上がらないのは残念なところかなぁ?
まあ、この手のオカルト映画では『得体の知れない部分』が一番怖いのはお約束ではあるのですが、それにしてもちょっとアッサリしすぎなのでもうひと捻りかもうひと波乱ぐらい何かあっても良かったかも?
またラストの展開もなかなか熱くて良かったんですが、全体的に人間ドラマの描き込みがイマイチで、ヒロインと娘たちの絆みたいなものがそこまで感じられなかったので、『そういうテーマの作品なんじゃないの?』って部分でちょっとモニョっとした気分になってしまったのも惜しいです。
精神科医と叔母がお話を進めるための『舞台装置』みたいな扱いだったのも、ちょっと雑な印象を受けたので、その辺ももう少しシッカリと作って欲しかったかな?
総評としましては、絶賛する程では無いものの『普通に良く出来たオカルトサスペンス映画』だと思います。
不満も無くはないものの、オカルトものの雰囲気映画としては非常に良好な内容ですので、過剰な期待をせずに観ればそれなりに楽しめる作品ではないかと…
とりあえずデル・トロ監督の『この系列の作品』が好きで「ダークフェアリー」に物足りなさを感じたような人は、間違いなくチェックしておいて損は無い一本ですよ。