(40点/サスペンス)
旅行先のリゾートホテルで、電話で唐突に会社をクビになった事を告げられたジムは、家族らに失業を悟られないように予定通りにディズニーランドへと家族旅行へ出かける事となる。
しかし楽しい家族旅行の筈が、彼は強いストレスからあり得ない様な不気味な幻覚へと悩まされるようになっていき、不自然な彼の態度に妻のエミリーも不穏なものを感じ取るが…
会社をクビになった男が家族と一緒に訪れたテーマパークで不気味な幻覚に悩まされるという、サスペンススリラー映画。
何でも新人監督が低予算で作成したカルトムービー風の実験的作品のようですが、何と言うか良い意味でも悪い意味でも『訳が分からない映画』ってのが適切な表現になる作品だと思います。
お話としてはサイコサスペンスっぽい内容なのですが、映像を全編白黒で描いてみたりとどちらかというと『雰囲気映画』の系統に近い感じの作品かなぁ…
『失業した父親が家族に悟られないようにテーマパークを廻るうちに、奇妙な幻覚に悩まされるようになっていく』みたいな感じの展開なのですが、主人公が精神的に追い詰められていく過程を描いた作品なのかと思いきやそういう訳でも無くて、全体的に変なノリとテイストが根底に漂う電波系作品といった感じ…
そもそも主人公は確かに幻覚を見ているのですが、だからといって精神的に追い詰められているという雰囲気ではなくて、行きずりの変な女と浮気したり、フランスから来た観光客っぽい女の子を追い掛け回したりと、行動がフリーダムすぎて失業とか関係なく『大丈夫なのか、この人』というような印象。
そういった主人公のあまり同情の余地の無いようなフリーダムな行動に加えて、シュールな幻覚とか妄想みたいな映像と展開を延々と見せられるので、感情移入できるどころかむしろちょっと不快になって来るレベル。
ただ幻覚云々を抜きにしても、楽しい筈の某『夢の国』のアトラクションが白黒映像として演出して撮影するだけでこんなに不気味な雰囲気になるというのは、なかなか新鮮な感覚ではあります。
そんな感じなので中盤までは、ちょっと冗長なのと主人公に全く同情できないという要素を除けば雰囲気映画としては好感触な印象なのですが…
ただ、そのままサスペンスで終わるのかと思いきや、中盤から思いっきり訳の分からない電波展開に突入してしまったのは、ちょっと面食らいました。
いやこの後半のお話が、展開的には主人公の妄想と現実の境い目が分からなくなっている感じなんでしょうが、アトラクションの地下に秘密基地があったり、主人公の浮気相手が魔女だったりと、マジに何がなにやらサッパリ訳が分かりません。
そういう突飛な展開が、普通の展開の合間にナチュラルに挿入されてくるので、もう面白いとか面白く無いとか言うよりも『なんじゃコリャ?』としか言いようが無いような印象。
そんなノリなので雰囲気映画として見ようにもストーリーが訳が分からなさすぎなうえに、電波ストーリーになっても主人公は相変わらず同情の余地の無いフリーダムっぷりなお陰で、どうにもお話に入り込めませんでしたよ。
まあ、こういう『電波っぽいノリ』が好きな人なら好きな感じのお話ではあるんでしょうけど、自分はいま一つノリに付いて行けずに終始置いてけぼりな作品って感じでしたよ…
総評としましては、冒頭で言った言葉の繰り返しになりますが『良い意味でも悪い意味でも訳が分からない作品』というのが正直なところです。
そういう電波系の訳の分からないノリが好きな人であれば非常に楽しめるんじゃないかと思うのですが、ノリに乗り切れないと自分のように訳の分からないまま終わってしまう可能性のある映画です。
妄想を繋ぎ合せたような独特の映画とかに興味があって、どんな映画なのか気になっているのであればチェックしてみるのもやぶさかでは無いと思いますが、楽しめるか楽しめないかは本人の趣味次第としか言いようが無いような一本ですね。