NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ババドック~暗闇の魔物~」(70点/サスペンス:オススメ)

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■■■「ババドック~暗闇の魔物~」■■■
(70点/サスペンス:オススメ)

 夫を交通事故で失ったシングルマザーの看護師アメリアは、何かと暴力的に問題ばかり起こす幼い息子と痴呆老人の介護という仕事のストレスから疲れ果てながらも、なんとか毎日を過ごしていた。

 そんなある日、息子を寝かしつける際に読んであげる際に「ミスターババドック」という見た事のない絵本を読んで欲しいとせがまれる。
 本の内容は「ババドック」というブギーマンのような怪物が家にやってくるという不気味なもので、途中のページからは白紙になっているという奇妙なものだった。

 その本を読んで以来、息子が怪物の悪夢に悩まされるようになり、自信も奇妙な現象に遭遇するようになったアメリアは、不気味に感じてその本を破って捨ててしまうが…



 強いストレスをかかえたシングルマザーの母子が「ババドック」という怪物の書かれた不気味な絵本を読んでから奇妙な現象に悩まされるようになるという、サスペンスホラー映画。

 なんでもエクソシスト」のウィリアム・フリードキン監督が絶賛したホラー映画という事ですが、確かにコレは久々になかなか怖い映画でした。

 お話としては『「ババドック」という『ブギーマン』みたいな怪物の登場する絵本を読んだ親子が、本当にその怪物の影に悩まされるようになる』という感じのストーリーなのですが、怪物を題材にしつつもオカルトホラーというよりはサイコスリラーのテイストの強い作品ですね。

 『主人公たちの母子をなやませる「ババドック」なる怪物は果たして実在するのか?』というところが物語の中心として進んでいくのですが、この流れの中での主人公の精神的に追い詰められていく姿の描き方が非常に秀逸で、散見される超自然的な怪物の影よりも徐々に精神を病んでいく母親の様子がマジで怖いです。

 どこかのホラーのコラムで『「家庭」というのは逃げる(放棄する)事の出来ない恐ろしい閉鎖環境』だという喩えを読んだ事がありますが、本作はまさにこの逃げ出す事の叶わない閉鎖環境を見事に描いており視聴者の精神にグイグイと追い込みをかけて来るような作りなのが非常に上手い。

 果たして「ババドック」という怪物は本当に実在するのか、もしくは精神を追い詰められた母親が生み出した幻影なのかという部分で、何が現実で何が妄想なのか色々と想像させるような作りも良い感じ。

 特に中盤以降の展開はホントに怖くて、派手な展開とかは殆ど無いのですが精神的なプレッシャーだけでここまで恐怖をシッカリと描く作品は、サイコスリラーでもなかなかお目にかかれないレベルでしょう。

 「ババドック」の絵本もエドワード・ゴーリーの絵本みたいな不気味なテイストで良い味を出していますし、オカルト的な雰囲気作りも非常に良い感じ。

 ただ怪物の造型にそこまでインパクトが無くて、お話の怖さの割には印象に残らない感じのデザインだったので、そこだけはもうちょっと頑張って欲しかったかも?

 あとオチに関しては、色々と想像できる余地が残って『全く安心できない』という上手い落とし方だとは思うのですが、若干分かり難さの残るオチなのでもうちょっと明確な方向性があっても良かったかも?


 総評としましては、これはマジで久々に『年に1~2本のレベルの良作サイコサスペンス映画』って感じの作品だと思います。

 サイコスリラー系のオカルト映画が好きな人であれば普通にオススメできる内容ですので、そういうジャンルが好きであればチェックしておいても損は無い1本だと言えるでしょう。

 ただ、かなり精神的に追い詰められる感じの内容で、情緒が不安定な時に観るとあまり良くない影響があるかもしれませんので、観る場合は精神に余裕がある時に観る事をオススメしますよ。