■■■「アンダー・ザ・シャドウ 影の魔物」■■■
(55点/オカルト)
1988年、イラン・イラク戦争さなかの幼い娘と共にテヘランで暮らすシデーは、従軍医師として前線に送られた夫の帰還を待ちながら不安のなか生活していた。
そんなある日、彼女らが住むマンションにミサイルが落下。
ミサイルは不発だったため一命を取り留めるも、ミサイル落下の直後に、娘から『あの人が来た』という奇妙な話を聞かされてから、彼女たちの周りで奇妙な現象が次々と起こるようになっていく。
次々と疎開していく住民たちや謎の不気味な現象に不安にさいなまれる彼女はだったが、そんな最中、近所の住人から風と共に現れるという悪の精霊『ジン』の話を聞かされ…
イラン・イラク戦争さなかに不発ミサイルが落下したマンションに住む母娘が、ミサイルと共に訪れた『何者か』につけ狙われるという、オカルトホラー映画。
イラン・イラク戦争時のテヘランを舞台に描いたという珍しいオカルト作品ですが、実際にイギリスと中東の国々で協力して制作された作品のようで、当時の様子が割とリアルな感じで描かれているという興味深いホラー映画です。
お話としては、『戦争で前線に行った従軍医師の夫を娘と共に待つ妻が、育児ストレスや爆撃の不安に悩まされつつ過ごすうちに、不発のミサイルと共に訪れた『謎の存在』によって恐怖にさらされていく』みたいな感じのお話です。
作中で扱われる怪物の「ジン」は、いわゆる「アラジン」に登場する「ジニー」の事なのですが、もともと邪悪な精霊として現地では恐れられている存在なので、本作としての扱いこそがむしろ正しい姿ですね。
「ジン」が登場すると言ってもノリとしてはモンスター映画という感じではなく、どちらかというとサイコスリラーとオカルトホラーのミックスといった感じの内容。
戦争や育児を含めた様々なストレスによって精神的に追い詰められていく主人公の様子が丁寧に描かれており、サイコスリラー風の精神的な怖さの要素が強めの印象。
自分を取り巻く環境や訳の分からない現象に振り回されて、徐々に精神的に追い詰められていく様子はなかなか怖いです。
ただ、作品の方向性として主人公のキャラクターを深く描いているせいもあって、お話の進行がかなり遅めで全体的にちょっと冗長な感じを受けるんですよね。
お話が動き出してから登場する「ジン」の得体の知れない感じは怖いのですが、あまり具体的に画面に姿を現すようなシーンは少ないので、オカルトとしてはやや物足りなさを感じるのも残念なところです。
ラストも解決してるようなしてないような、なんかモヤっとした不気味で後をひくようや終わり方で、『そういう意図』を狙って作られた部分も含めて、良い意味でも悪い意味でも色々とストレスを感じる映画でしたよ。
総評としましては、なんとも得体の知れない怖さのある『サイコスリラー風B級オカルトホラー映画』って感じの作品ですね。
イラン・イラク戦争の現地というシチュエーションの面白さや、なんとも言えない不気味なテイスト等、まあまあ観るべき要素のあるホラー映画ではないかと思います。
強く推すまでは行かないですが、シチュエーションを含めて他にあまり見かけないテイストの個性を持った作品だとは思うので、気になるのであればチェックしておいても損はない一本だと思いますよ。