（７０点／サスペンス：オススメ）
１年に１回、一晩だけ殺人を含むすべての犯罪が合法となるという『パージ』法案が米国で設立されてから25年後。
アメリカ政府は犯罪の抑制としてパージ法を肯定する容認派と、パージに反対する否定派に分かれて覇権を争っていた。
そんななか、大統領選を控えてパージに反対する女性議員のローン上院議員が反対派の大統領候補として台頭。
反対派がやや優勢な状況で大統領選挙が開催されるなか、そのタイミングで今年の『パージ』の夜がやってくる事となる。
警察や政府の組織が機能しないその夜、ローンはパージ肯定派の議員の刺客によって命を狙われている事を知りつつも、支持率の低下を避けるためにシェルターに避難せずに、ボディガードたちと共になんとかして一夜を乗り切ろうとするが…
１年に１回、一晩だけ殺人を含むすべての犯罪が合法となるという『パージ』の夜を題材とした、「パージ」シリーズの３作目に当たるアクション風味のサスペンススリラー映画。
全ての犯罪が合法になる一夜を描いた人気シリーズである「パージ」の最新作に当たる作品ですが、このシリーズは新作が出るごとに前作よりも面白くなっていくなかなか稀有なシリーズという印象で、今回も普通に面白い作品になっています。
お話としては今回はパージ法が施行されてから25年後の未来が舞台で、『犯罪や不満への『ガス抜き』として行われていたパージ法は既にシステム自体が崩壊寸前で、肯定派と否定派によってその是非が問われる状況で大統領選が行われるなかで『パージの夜』がやってくる』という感じなのですが…
まあ確かに『犯罪への緩和策』というのは民衆の不満への一時的なガス抜きとしては良いかもしれませんが、恒久的に有効な施策とは思えないので、なかなか妥当な流れかと思います。
前作からの世界観の変遷なんかも良く考えられており、パージの夜は不満分子のガス抜きというよりも『殺人を楽しむためだけに訪れる海外からのツーリスト』が居たり、街が『趣味で殺人を行うサイコ野郎だらけ』になっていたりと酷い有様で…
逆に『結局は政府の搾取構造から抜け出せない』と知った反社会分子が結束して地下組織を作って反乱を企てていたり…といった感じで、パージのシステムの崩壊を説得力のある形で描いているのはなかなか上手いです。
お話としては、パージの夜に命を狙われる『パージ反対派の大統領候補』とそのガードマンの逃走劇がメインとなるのですが、主人公たちが逃走するうちに反社会組織と出会って『更に巨大な陰謀に巻き込まれていく』という展開も良く出来ていますし、大統領候補暗殺を企てる特殊部隊とのドンパチがあったりとかシリーズとしても順当にスケールアップに成功しているのは良い感じ。
主人公周辺のキャラクターも非常にキャラの立て方が上手く、それぞれの人間が何故パージに反対しているのかといった動機がシッカリと描かれているために、お話に無理なく入り込めるのも良く出来ており非常にソツの無い作りという印象です。
ただ、ディストピア的な世界を描いた逃走劇がメインとなってしまっているため、「パージ」シリーズの売りとも言えるアナーキーさは前回よりも薄まってしまった印象があるのはちょっと残念なところ。
本作にも登場するサイコな犯罪者とかは、もっと過激なアナーキーっぷりを発揮してくれても良かった気はします。
あと良く出来ているとはいえ、やはりＢ級映画らしく低予算さを感じさせる部分はあちこちにあり、大作映画に比べるとアクションとかの派手さでは劣るため、ちょっと物足りなさを感じる部分があるのはいたし方ないところでしょう。
というかここまで人気が出たんだから、本作ももっと予算をかけたリメイク版とかを作っても良い気もするのですが、そういう予定は無いんですかねぇ？
（まあ大作になったらなったで、なんかコレジャナイ感の漂う作品になりそうな気もしますが…）
ちなみにこのシリーズも本作で完結か、もしくはあってもあと１本ぐらいで完結しそうな雰囲気ですが、まあ監督がネタとして描きたい事は描き切っている気がするので、『この辺で終わりになっても良い頃合いかなぁ…』という気もしますよ。
総評としましては、全体的に非常に良く出来た『アクション風味のサスペンススリラー映画』という感じの作品ですね。
前作までのシリーズが好きであれば、間違いなく本作も観ておいて損は無いレベルだと思いますので、普通にオススメの出来るシリーズ最新作といったところでしょう。
逆にシリーズを観てないと世界観が良く分からないと思うので、本作を鑑賞するには少なくとも前作は観てから続きを観るようにした方が良いと思われますよ。
シリーズ全体としても普通にオススメの作品ですので。（まあ１作目だけは微妙だけど…）
