■■■「ダークタワー」■■■
(65点/アクション)
事故で父親を喪った少年ジェイクは、ある日から異常にリアルな悪夢に悩まされるようになる。
それは、異世界で『黒衣の男』が『偽の顔を被った男たち』を率いて『暗黒の塔』を攻撃して破壊しようとするという奇妙なものだった。
夢で見た場所が現実世界に存在する事を知った彼は、現実世界のその場所で異世界へと通じるポータルを発見。
ポータルから転移した異界で、復讐のために『黒衣の男』と戦う『ガンスリンガー』のローランドと出会い、彼から『黒衣の男』によって『暗黒の塔』が攻撃されると世界に危機がもたらされる事を知らされる。
一方、ジェイクの持つ特殊な能力に気づいた『黒衣の男』は、彼を狙って『ガンスリンガー』の元へ刺客を送り込むが…
異世界から現実世界の破壊を目論む『黒衣の男』と『ガンスリンガー(拳銃使い)』との闘いを描いた、S・キング原作の異世界ファンタジーアクション映画。
同名のキングの小説である『ダークタワー』シリーズを映画化した作品なのですが、この『ダークタワー』シリーズというのは簡単に言うとキングの小説の世界の『マルチバースもの』みたいな位置づけの作品です。
この世界の中心には、世界の秩序を守る『暗黒の塔(ダークタワー)』と呼ばれる建物があるんだけど、その建物が攻撃を受けるとダークタワーに隣接する全ての世界で異変が起きて、ダークタワーが破壊されると世界が壊滅する…みたいな世界観で、キングの小説で起こる怪奇現象は全てがこのダークタワーが攻撃を受けたせいで発生したもの…みたいな裏設定のあるお話になっています。
そういう裏設定を受けて、作中ではキングの他の映画のオマージュやら演出やらが随所に見られるのが、キング作品のファンとしては面白いですね。
(「クリスティーン」とか「イット」とかその他もろもろ…)
まあ、そういった設定を知っているとより楽しいですが、作品の方は別にそういう要素を知らなくても普通に楽しめる、そこそこ良く出来たダークファンタジーもののアクション映画という感じ。
もともとが長編シリーズだけあって『暗黒の塔』と『ガンスリンガー』といった世界観が非常にシッカリしていて面白いですし、ライバルである『黒衣の男』との因縁や、少年の成長を描いたドラマとしてのストーリーも月並みながらも良く出来ています。
ただ、なんというか『詰め込み感』と『駆け足感』がハンパ無いのは困ったところ。
もともとが7巻(上下巻とかに分かれてるので実質15巻)にもわたる長編シリーズを無理矢理に90分にまとめているため、長編を物凄く圧縮した『ダイジェスト版』を見せられてるような気分になります。
(ちなみに自分はこの小説、長すぎて3~4巻ぐらいまでしか読んでないのですが、その辺りだとまだ世界観の説明さえマトモにされてなかった記憶が…)
テンポが速いと言えば聞こえは良いのですが、原作を知らなくても『どう考えても実際はもっと壮大な感じの話だよね?』って言うのが透けて見えてしまいので、色んな部分がアッサリしすぎてて物足りなさを感じてしまうのは残念なところ。
(特に終盤のあまりの急展開っぷりは、『もうちょっと尺を取るとか、どうにかならなかったのか?』という感じです。)
アクションシーンにしても人間ドラマにしても、もっと掘り下げる余地がありまくりなので、どうにも食い足りない気分になってしまいました。
(できれば、もっと長編の『TV映画シリーズ』みたいなのでリメイクして欲しいなぁ…「アンダー・ザ・ドーム」とかよりこっちをドラマ化すれば良いのに…)
まあ物足りないという部分を除けば、ストーリーも異世界冒険ものとして非常に分かりやすいですし、アクションシーンもそこそこ見せ場がありますし、ラストの『黒衣の男』と『ガンスリンガー』の対決なんかもカッコ良いので、原作や設定を知らないでもまあまあそれなりには楽しめる内容にはなっているのは良い感じです。
ちょっと低予算のB級感が目につく部分が多いので、もうちょっと予算をかけて規模をデカくして描いて欲しかったってのは正直なところですけどね…
あと原作を読んだ身としては、ガンスリンガーはもうちょっと線の細い神経質な感じのイメージのキャラだったので、『ちょっとイメージと違うかなぁ?』と感じてしまったのは自分だけですかね?
総評としましては、全体的に低予算っぽくて物足りなさはあるものの『そこそこ楽しめるレベルの異世界冒険ものダークファンタジー映画』という感じの作品です。
キングのファンだったり、原作の設定とかを知ってる方が楽しいとは思いますが、知らなくても冒険映画として普通に観れるレベルには仕上がっているのは良い感じでしょう。
『少年が異世界に転移して戦う』みたいなライトなファンタジーのノリが好きで、気になっているのであればチェックしてみても損は無い一本だと思いますよ。