■■■「マイナス21℃」■■■
(60点/サスペンス)
元プロアイスホッケー選手のエリック・ルマルクは、アイスホッケーをリタイアした事からドラッグに溺れて交通事故を起こしてしまい、裁判を控えてそれから現実逃避するかのように、シエラネバダの雪山へとスノーボードに訪れていた。
しかし、折からの悪天候からコースを見失ってしまった彼は、極寒の氷点下の雪山で完全に遭難してしまう。
なんとか自力でスキー場へと戻ろうと雪山をさ迷い歩く彼だったが、低体温症や凍傷、空腹や脱水症状によって、徐々に体力を失ってゆき、そんな中で走馬燈のように今までの人生を思い返していたのだった…
ドラッグに溺れて人生をリタイアしたアイスホッケー選手が雪山で遭難した事から、自分の人生を振り返りつつ脱出の手立てを探す…という人間ドラマ風味のシチュエーションスリラー映画。
お話としては『自らの身勝手さが原因で選手生活をリタイアする事となった元アイスホッケー選手が、雪山で遭難した事から自分の半生を振り返りつつなんとかして生き延びる手段を模索する』という感じの、ぶっちゃけて言ってしまえば「127時間」の雪山版のような内容の作品ですね。
ノリとしては2番煎じ感はありますが、本作も「127時間」と同じように実話をベースとしたお話だそうです。
実話がベースとはいえ、流石に主人公が雪山をさ迷い歩いているだけでは映画になりませんので、極寒の雪山以外にもオオカミの群れに襲われたり、湖に転落したりと様々なアクシデントが主人公を襲いますが、まあこの辺は割と脚色されてるんだろうなぁ…という感じではあります。
ただ、全体的にそこまで嘘くさくなく、徐々に衰弱していく主人公の様子をリアルな危機感として描いているのは良いですね。
またアクシデント以外にも、遭難中の主人公が今までの半生を振り返るという要素もあるのですが、お話的にはむしろこちらの人間ドラマの方がメインという印象。
厳しい父親にエリートホッケー選手として育てられた主人公が、どのようにして人生を踏み外していったかといった事や、道を見失った彼と母親との絆といったものが非常に丁寧に描かれており、主演のジョシュ・ハートネットの演じるキャラクターも魅力的で好感が持てて、自然と主人公を応援したい気分にさせてくれます。
人生としての道を見失った男が、実際に雪山で道を見失うというメタファーもなんとなく面白いですね。
ラストも思いがけず、ちょっと感動させられてしまいましたよ。
正直言ってサスペンスとしては、雪山で延々と遭難しているだけなので物足りない部分も多いのですが、この人間ドラマの部分がなかなか良くできており、最後まで退屈せずにお話を観れるのはなかなか良い感じです。
ただ先述の通り『主人公がダラダラと雪山を歩き回っているだけのシーン』が長く、真っ白な雪山の映像に変化が乏しいうえにあまりスペクタクルみたいなシーンも無いため、ビジュアル的に物足りない部分が多いのは、ちょっと残念なところかな?
もうちょっと大自然のパノラマとか映像に迫力があれば、もっと見応えのある作品になったかも?
個人的には、遭難した主人公の行動にバカな部分が少なく、『雪を体温で溶かして水分を摂取する』とか『捜索隊から発見されるために尾根を目指す』とか、割と適切な行動を取っていたのは好感触でしたよ。
(この手の映画で『バカな行動を取って自滅する主人公』とかを観てると、非常にイライラさせられるので…)
総評としましては、『そこそこ良くできた人間ドラマ風のシチュエーションスリラー映画』って感じの作品です。
全体的に淡々としていてやや物足りない部分もありますが、人間ドラマ的な要素が強くてその部分は良くできているので、思った以上に普通に楽しめた映画でしたよ。
ガチのスリラーや極限状況を描いたサスペンスを期待してたら、ちょっと肩透かしを食らうかもしれませんが、お話そのものはなかなか面白い内容でしたので、気になるならばチェックしておいても良い一本だと思いますよ。