■■■「狼チャイルド」■■■
(60点/サスペンス)
サンパウロ郊外に住む黒人の看護士のクララは、出産を控えた裕福で不思議な雰囲気を持つアナという女性に、生まれてくる子供のベビーシッター兼住み込みのメイドとして雇われる事となる。
一緒に暮らすうちに友情を育み、やがて友情以上の関係で結ばれていく二人だったが、アナは満月が近づくたびに夢遊病のような奇妙な症状に悩まされるようになっていき、出産を間近に控えた満月の夜に唐突に彼女のお腹を引き裂いて赤ん坊が現れるという事件が発生。
彼女の身ごもっていた子供は実は狼男の子供だったのだ…
出産で彼女を失ったクララは、生まれてきた子供に生前のアナの意思を継いでジョエルと名づけ、自分の子供として育てる事となるが、ジョエルは成長していくうちにやがて狼男としての本能を抑えられなくなっていき…
友人の死産した狼男の子供を育てる事となった女性が、その運命に翻弄されていく姿を描いた、ファンタジー風味のサスペンスホラー映画。
一応、狼男(というか狼少年?)が主題となっているため、ジャンルをサスペンスホラーと定義していますが、どちらかというとダークファンタジーとジャンル分けする方がシックリくる感じの作品かも?
全体的なテイストで言うと、アンニュイな雰囲気の漂うダークファンタジーという感じで雰囲気映画的なノリのお話なのですが、実際の中身の方はなんというか色々と濃い内容の作品です。
お話としては、『風変わりな金持ち女性とベビーシッターの百合(レズビアン)カップルが思いがけない形で破局を迎える』という前半部分と、『狼男として生まれてきてしまった少年の悲哀を描く』という後半部分に分かれている感じの構成なのですが…
前半がどこか個性的な女性どうしが心を開きあっていく『百合カップル』のお話で、後半が年端もいかない(小学生低学年ぐらい)少年が狼男としての本能と運命に翻弄されていく『狼少年の悲哀』のお話ですからね、前半・後半ともに色んな意味で内容が濃すぎです!!
本作はかなり尺が長めで全体で2時間15分ぐらいあるのですが、この濃すぎる内容と2部構成的な作りのせいで、長い尺でありながら特に退屈する事もなく最後までお話を楽しめるのは良いところでしょう。
特に全体に漂うアンニュイで退廃的なムードは非常に良い感じで、雰囲気重視のダークファンタジーとしてはなかなか良く出来ています。
良く出来た作品なのですが、ただ前述のとおり尺がかなり長めなのが、やはり欠点と言えば欠点という印象ですね。
個人的には長い割にはダレずに最後まで観る事が出来たのですが、人によっては長すぎて途中でちょっと疲れてしまうかもしれません。(特に百合要素の強い前半部分。)
また雰囲気映画的なノリの強い作品のため、全体的にスローテンポでそこまで大きい事件なんかも起こらないシーンが続くため、そういうのが苦手な人やら派手な展開が無いと満足できない人は、ちょっと物足りない映画という印象を受けるかも?
ラストのオチなんかも印象的で個人的には嫌いじゃないのですが、賛否両論ありそうな雰囲気なので、色々と観る人を選ぶ映画という感じかもしれません。
総評としましては、なかなか良く出来た『矢鱈と濃い内容の雰囲気映画的ダークファンタジーホラー映画』って感じの作品です。
制作がフランス/ブラジルという事もあってか、欧州作品的なノリが強めですので、そういうノリが苦手な人にはちょっとオススメし難い印象かも?(まあ、普通のフランス映画なんかよりはずっと観やすい内容ではありますけど…)
独特の世界観や退廃的なムードがハマれば、なかなか楽しめる映画だと思いますので、そういうのが好きな人やら気になる人ならば、チェックしておいても損はない一本だと思いますよ。