■■■「怪怪怪怪物!」■■■
(55点/モンスター)
いつもクラスメイトからいじめられている優等生のリン・シューウェイは、ある日、学級費を盗んだと疑いをかけられた事からトラブルを起こし、罰として不良グループと一緒に独居老人の住む集合住宅にボランティアに参加させられる事となる。
しかしボランティア活動の最中に、吸血鬼のような怪物の少女に遭遇し襲撃を受けるという事件が発生。
なんとか怪物を撃退し捕獲することに成功した彼らは、怪物を学校の地下室に拘束する。
シューウェイは、怪物をオモチャのように扱い虐待する不良たちに辟易としつつも怪物の正体を突き止めるべく調査を開始するが、やがて怪物の『姉』が妹を探すために活動を開始し…
優等生と不良グループのコンビが偶然にも『怪物』を捕まえた事から、やがて学校全体を巻き込む大トラブルへと発展していくという、モンスターホラー映画。
台湾製の学園ものホラー映画ですが、タイトルからして楽しげな作品かと思いきや、そういうノリでもなくて、なんというか色々とイラっとさせられる部分の多い、割とストレスフルな感じの作品です。
何がイラっとさせられるかって、とにかく主人公のいじめられっぷりが酷い。
主人公の周辺の教師やクラスメイトのほぼ全員がクズ人間ばかりで、後々に酷い目に逢うんだろうなというのは分かるのですが、分かっててもちょっとストレスが溜まります。
お話としては『主人公と不良たちが地下室で怪物を監禁して色々と調べていくうちに、とんでもないトラブルへと発展していく』みたいな展開なのですが、尺が2時間弱ある構成のせいもあってかお話が動き出すまでがちょっと長め。
その間、不良どものバカ騒ぎを長々と見せられるので、前述のいじめ描写と合わせて結構イライラさせられるシーンが長いです。
主題としてはモンスターパニックというより、主人公の成長を描いた物語が中心になっている感じで、主人公のキャラクターや心情が非常にシッカリと描かれているのは良い感じ。
ただ、主人公と不良のリーダー以外のキャラの掘り下げが殆ど無くて、脇役の個性が薄いせいでパニックのシーンとかがいま一つ盛り上がりに欠けるのは難点という印象。
(不良の取り巻きの2人とか最後まで見分けがつきませんでしたよ…)
また怪物のキャラは良い味を出している割には思ったよりも活躍するシーンが無くて、尺が長い割には盛り上がるシーンが少な目なのも残念なところ。
むしろ、監禁されてる怪物の妹が虐待されるシーンが物凄く長いので、観ていてかわいそうになってしまいましたよ。
こんなタイトルなんだから、怪物の大暴れする様子をもっとシッカリと描いて欲しかったなぁ…
ただ中盤までのストレスが強い分、終盤でのカタルシスはなかなかに良い感じで、ラストの落としどころなんかも良く出来ているのは好感触。
まあテーマとして『怪物よりも人間の方が怪物じみている現代社会』みたいな事を表現したかったのではないかと思うのですが、全体的にもうちょっと尺が短くてストレスの少ないエンターテインメント寄りの作りでも良かったんじゃないかと思いましたよ…
総評としましては、『イラっとさせられる部分は多いものの、まあまあ良く出来た学園ものモンスターホラー映画』って感じの作品ですね。
強く推すには弱い気がしますが、台湾製の独創的なノリの学園ものホラー映画という、ジャンルとしては珍しい作品だと思います。
個性的なホラー/ファンタジー作品の多い「シッチェス映画祭」の出展作品なので、個性的なテイストに興味があるのであれば普通にチェックしてみても良い一本だと思いますよ。